近藤信也 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

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健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん氏 × 歯科医師・日本重力医学財団理事長 近藤信也先生

噛み合わせで肩こり・腰痛が治る
肩こりや腰痛など姿勢病を治す 安価で簡単な画期的治療法

西川:肩こりや腰痛に悩む人は多いですが、近藤先生は、長年の研究によって、その原因は姿勢の歪みだと突き止め、噛み合わせを改善することで治す、安価で簡単な画期的治療法を確立されたと注目を集めておられますね。

近藤:地球上で二本足で歩行するのはヒトだけです。現代人はさまざまなストレスや不摂生、運動不足などによって姿勢が歪みがちです。肩こりや腰痛、四十肩・五十肩、偏頭痛、手足の痺れ、膝の痛みといった“姿勢病”を引き起こす人が少なくありません。これを防ぐには姿勢を歪ませないことです。

西川:現代の生活様式では、姿勢が悪くなり、猫背やストレートネックになりやすいですね。肩こりや腰痛がひどくなるとマッサージや整体、カイロプラクティックなどに行きますが、その時は気持ち良くても、すぐにまた痛くなってしまいます。

近藤:施術で体の歪みを正せても、間違った頭の位置は正せません。頭の位置を正さないで二本足で立って歩くと、重力とバランスをとるために骨盤・足裏がすぐに元の位置に移動するので、悪い姿勢に戻ってしまうからです。

西川:骨格構造の歪みは、肩こりや腰痛などのみならず、虫歯・歯周病の原因にもなると、近藤先生はご著書『歯医者のウソ』で解説されていますね。

近藤:ストレスで体が歪むと、骨盤・足裏が垂線からズレ、重力とバランスを取るため頭の位置もズレます。頭の位置はアゴの筋肉群が頭を前に引っぱり、首の後ろの筋肉群が頭を後ろに引っ張って調整しています。体が歪み、頭の位置がズレると、左右のアゴの筋肉が不均衡となり、噛み合わせがズレます。その結果、歯の溝が正しく噛み合わなくなり、特定の歯に強い力がかかって、それが虫歯や歯周病の原因にもなるのです。

西川:たいてい、虫歯や歯周病は痛くて耐えられなくなってから歯医者に駆け込んで治してもらうだけで、原因など考えていませんね。

近藤:歯科医師が歯学部で教わるのは虫歯と歯周病の治し方であって、その原因や理由については「歯ブラシや歯磨きの方法が悪いから」というだけです。でも、歯を磨かない人でも虫歯がない人はいるし、しっかり歯磨きをしていても歯周病になる人もいます。何事も元から断たないと本当の意味では治りません。

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ボディラインを美しく整え 顔のリフトアップにも効果

西川:そこで近藤先生は、長年研究を重ねられ、重力の力により姿勢を正すことで、肩こりや腰痛などの“姿勢病”、虫歯や歯周病を根本から治す「重力医学」の理論を確立されたわけですね。自ら考案された革新的なマウスピース「Dr.Mouth」と、それを着けてゆっくり歩く「ジャイロウォーク」による治療法のメカニズムとは、どのようなものですか?

近藤:発想の原点は、幼児が成人より頭の比率が大きく重い上に、全身の筋肉も脆弱なのに、どうやって姿勢を保って二本足で歩くようになるのかに着目したことです。大人の永久歯と異なり、子どもの乳歯は噛み合う面が擦り減って平らになっています。その理由は、昼間でも歯ぎしりすることでアゴを左右に動かし、頭を正しい位置に修正し続け、そのまま歩くことで正しい姿勢を学ぶということです。姿勢の歪んだ大人にこのメカニズムを応用しようと考えました。

西川:子どもがアゴを左右に動かすことによって、二本足で歩くための姿勢を学習しているとは思いもよりませんでした。

近藤:しかし、大人になってさまざまな要因で骨格構造に歪みが生じると、頭の位置が変化し、永久歯列の噛み合わせがズレてしまいます。長年の悪習慣で体が覚えてしまった間違った姿勢をリセットしなければ、根本的な要因は解決できません。そのために、噛んだままアゴを水平方向に動かせるマウスピース「Dr.Mouth」をすることで、子どもの乳歯列の状態を人工的に作り出すのです。そして、アゴを左右に動かしながら、ゆっくり歩く「ジャイロウォーク」を朝晩5分ずつ行うことで、本来の均整の取れた姿勢、あるべき頭の形に戻していくのです。

西川:安価に簡単に、姿勢病や虫歯・歯周病の原因を断ち、ボディラインを美しく整え、顔のリフトアップにも効果があるとは朗報です!興味深いお話を、ありがとうございました。

姿勢を見ればすぐにわかる 患部と痛みの原因

西川:腰痛や頭痛で診察に来た方のどこが悪いのか、どのように対処すれば良いのかはすぐにわかるのですか?

近藤:はい。見ればすぐに原因が分かります。腰痛ではあるものの噛み合わせが良くて歯に問題がない人の場合は、腰をまっすぐ立たせる筋肉が衰えていることが多いです。その場合はジャイロウォークをすることで、筋肉のバランスを整えることで改善できます。そうではない場合は、医原病のことが多いですね。たとえば、下の奥歯が2本くらい虫歯になってそのまま放置してしまった場合、上の奥歯がしっかり噛めるようにと最大2mmくらい伸びてきます。それから歯医者で奥歯をもともとの形に戻した場合、健康なときとは噛み合わせたときの高さがズレてしまうんです。人間の顎は蝶番のように動くのではなくて、顎が一度外れてから動くという特殊な動き方をするのですが、その時に奥歯が先に当たるようになるということですね。そうなると、噛み合わせのバランスを取ろうと顎が上を向くようになり、身体に歪みが生じていきます。それを正常に戻すためには、下の歯の高さをもとの噛み合わせの高さに戻さなくてはいけません。最大で3mmくらい削ったこともあります。

西川:歯で3mmというと相当大きな治療ですよね。そんなにズレてしまうのは、多くの歯科医が虫歯の治療だけを行って噛み合わせの重要性を見落としているからなんでしょうか。

近藤:そうでしょうね。人間にはもともと正常に動くための仕組みが備わっていますから、歯が全部生えそろっている人はちゃんとした噛み合わせも自然に身につくようになっています。それを、人為的に変えてしまう。とくに審美歯科などで全部の歯の高さをそろえるといった無理ないじり方をすると、神経にも関わってくるような身体に大きな影響が出てしまうんです。

西川:お話しを聞いていると、改めて歯は大切なんだと感じます。雑誌「プレジデント」でも、後悔していることの第一位に「若いうちから歯を大切にしておけば良かった」ということでした。実際、歯が悪くなってうまく食事ができなくなると、身体への影響がすごく大きいんですね。人間に限らず、動物園のサル山でも、歯が悪くなったボス猿やクイーンはすぐに身体が弱ってしまい、ほかのサルに負けて追いやられてしまいます。

近藤:ただ、ひとつ言っておきたいのですが「噛み合わせを直せば身体の不調がすべて治る」というわけではありません。身体の歪みが原因で虫歯や歯周病になるという仕組みを踏まえて、その治し方を考えなければいけない。

西川:僕の知人に、インプラントによって頭痛がするようになったという人がいるのですが、そういった場合も噛み合わせは関係しているのですか?

近藤:はい。本来、歯と骨の間には歯根膜という柔らかい膜があって、多少の衝撃であればそこで吸収されるようになっています。ですが、インプラントでは歯と骨を直接癒着させることになるので、歯根膜が持っていた“あそび”の部分がなくなってしまうんです。そうすると、噛みあわせたときに少しでもズレがあると痛みになって現れてしまいます。そのような場合は、ミクロン単位で歯を削って、もともとの高さに調整することで対処できます。

西川:インプラントが悪いわけではないんですね。

近藤:そうですね。もとの噛み合わせをしっかり再現することと、歯根膜の代わりになる“あそび”の部分を用意することなど、これからの技術の進歩は必要だと思いますが、それ自体が悪いものではありません。

西川:非常にデリケートな器官であると同時に、歯と歯茎だけでなく人体のメカニズムについても知らなくてはしっかりした治療はできないんですね。

近藤:はい。たとえば、頭蓋骨は複数の骨が関節を持ってつながってできています。ご飯を食べるときに左側の歯で噛むとしたら、右側の歯は浮いているのが正しい顎の動き方なんです。そのとき、顎の関節が動かない、あるいは動かそうとしたときに痛むのが顎関節症です。顎が動かせなければ「側頭鱗」という骨を動かして食事をするようになります。そうなると偏頭痛の原因になったりもするんですね。側頭鱗も動かなければ、首の筋肉を動かすようになる。首が凝れば背中、腰と全身に影響が及びます。

西川:早めに診療を受けないと、大変なことになるんですね。

近藤:はい。ただ、たとえば徹夜の後で歯が浮いたような感じがあれば、その時点で身体の凝りをほぐしたり、泳いだり、ゆっくり歩いたりすることが大切です。早いタイミングで歪みをまっすぐにできれば、歯医者に行かなければいけないような痛みにはつながりません。

西川:なるほど。身体が発しているサインを見逃さないようにすることも大切なんですね。ありがとうございました。

近藤信也先生 トピックス -目からウロコの書『歯医者のウソ』-

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実は、虫歯や歯周病は骨格構造病に分類され、体全体への影響を考えて治療しなければ、頭痛や肩痛、手足のしびれを引き起こす危険性が潜んでいる。噛み合わせの調整や幼児期のよちよち歩きを再現する「ジャイロウォーク」の実践で、体調の維持管理・老化防止・美容に寄与する重力医学がよくわかる目からウロコの書!
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