知っ得!健康対談

草間香 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

森下真紀 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

草間かほるクリニック医院 草間香氏×健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん氏

2~3人に1人が抱える身近な病気お尻の悩みを一人でガマンしないで!


西川:お尻の悩みはからだのトラブルの中でも他人に相談しづらいデリケートな問題ですね。

草間:基本的には痔は死に直結しませんが、放置して悪化すると大変につらい生活習慣病の一つです。人間は食べることと出すことは死ぬまで続きます。「痛くないから大丈夫」などと勝手に判断するのは危険です。

西川:痔の患者はどのくらいいるのですか?

草間:ヒトがサルから進化して二足歩行になった時から宿命づけられた誰でもなる可能性のある病気です。程度の差はあるものの、日本人の2 ~ 3人に1人が痔だと考えられます。

西川:そんなに多いのですか⁉ 痔といえば男性がなるイメージが強いですが、女性の患者も少なくない?

草間:患者の数は男女でほとんど差がありません。ただし、女性の場合、医師が男性だと恥ずかしくて受診できずにガマンしたり、痔の悩みを彼氏やご主人にも内緒にしている人が大勢いらっしゃいます。血液の循環が悪いことや排便異常が原因になりやすいので、妊娠や出産の機会を持つ女性は、男性より痔になりやすいといえます。

西川:痔には3種類あるのですね。

草間:大きく分けて、いぼ痔、切れ痔、痔瘻(じろう)の3種類です。いぼ痔は肛門に腫れができることで、男女ともに最も多い痔。切れ痔は、排便のときに肛

門付近が切れたり、裂けたりするもので、女性に多いタイプです。痔瘻は、肛門付近にウミがたまったり、肛門の内外がトンネル状につながったりするものです。

西川:痔を放置するとどうなるのですか?

草間:つらい痛みやはれで、ますます排便が困難になるなど、日常生活に支障が出ます。いぼ痔が大きくなると、排便の後に自分で押し込めないと戻らなくなったり、クシャミや大笑いでお尻からポロッと出てきてしまいます。痔瘻はまれにガン化することがあるので要注意です。

西川:治療しても再発することがありますか?

草間:手術で痔が治っても、生活習慣を元に戻してしまったり、肛門に負担をかける生活をしていると、何年後かにまた症状が出てしまうこともあります。

一日3食バランスのよい食事が大切

西川:やはり、日々の生活習慣が大切なのですね。どのようなことに気を付ければいいのでしょう?

草間:まずは快便!!便意を感じたらガマンぜずにトイレに入って軽くいきんだらスルッと出て、むいたバナナのような形で、水の中に落ちても崩れない硬さの便が理想です。

西川:毎日出ないと便秘ですか?

草間:排便のリズムは個人差があります。毎日でも2.3日に1回でもスッキリ排便があればその人にとって快便です。排便回数よりもトイレに行くのを我慢せず、規則正しい排便のリズムをつくることが大事ですね。

西川:快便のためには食事と運動ですね。

草間:はい。まずは食生活を見直し、一日3食バランスよく摂りましょう。白米を食べることで便の量になり良い便を出しやすくなります。せめて1日のうち

2食は白米を食べてほしいですね。それから水分です。毎日1.5 ~2リットルの水分を摂りましょう。美容のためにも、快便のためにも水分はとっても大事。

西川:どんな運動がよいのでしょうか?

草間:運動として歩くなら毎日8000歩以上、または歩く時間がない方は20分以上の早歩きするだけでも運動になります。今はスマホが万歩計のようにカウントしてくれますので活用しましょう。

西川:他に気をつけた方が良いことはありますか?

草間:痔の原因にもなり得る「うっ血」をしないよう、体を冷やさないようにしましょう。お風呂はシャワーだけでなく、なるべくゆっくり湯船に入って血行を良くし

てから寝るようにしてください。

西川:デスクワークの人は痔になりやすいとか?

草間:同じ姿勢をとり続けていると、血行が悪くなり肛門がうっ血しやすくなります。デスクワークの方は、ちょっと書類を取りに行ったり、その場で立ったり、少しモジモジするだけでもよいので、定期的に姿勢を変えるといいですね。

西川:痔は早期発見、早期治療が一番だと聞きます。

草間:痔は良性の病気ですが、ただ放っておくと、出血や痛み、不快感がひどくなり、日常生活に支障が出て来てしまう事があります。また、痔以外の他の病気が隠れている可能性もありますので、一人でガマンせず、早めに肛門科受診をお勧めします。

西川:数少ない女性の肛門専門医である草間先生なら、女性はもちろん男性も安心してうかがえますね。ありがとうございました。

草間香氏プロフィール

森下真紀氏 プロフィール

草間かほるクリニック医院長。金沢医科大学卒業、東邦大学医学部付属大森病院第一外科にて研修後、外科専門医取得。
日本大腸肛門病学会専門医取得。内痔核治療法研究会会員、日本消化器内視鏡学会会員、日本医師会認定産業医。テレビや雑誌などでも活躍中の大腸肛門専門医。

現在、金沢医科大学特定教授就任し、月2回大学病院の女性肛門病専門外来を担当している。


高齢者の痔の原因と予防

図1:肛門疾患にしめる「痔」の割合

痔の人はどれくらいいるのか?

 痔は、その種類によって年齢や割合が異なりますが、痔の疾患が占める割合は肛門疾患全体で見て、痔核約60%、裂肛約15%、痔瘻約10%とされています(図1)。

図1:肛門疾患にしめる「痔」の割合
「肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)診療ガイドライン2014」より作図

厚生労働省が行った「平成26年患者調査」からは、調査を行った日に受診している推計患者数が分かりますが、これによると、平成26年の調査を行った日(10月1日)での痔核の推計患者数は13,500人、裂肛および痔瘻の推計患者数は2,900人でした。※
※厚生労働省患者調査(平成26年)より

痔の症状

痔の症状は、痔の種類によって異なります。高齢者に多い痔核の主な症状は、以下の通りです。

出血
排便時や運動時、歩行時に見られることが多く、色は鮮明な赤色であることが多いです。特に、直腸付近での出血の場合は、便に血が混じっていたり、出血の色がやや暗い赤色となることもあります。出血量は、ほとばしる程度から、肛門を紙でぬぐったときに付着する程度などさまざまであり、排便後まで出血が続くということは少ないです。

疼痛
持続的な鈍痛の場合と、発症から数日間のみの比較的強い疼痛の場合があります。また、痛みとまでいかなくても、違和感が続く場合があります。

痔核の脱出
排便時に生じる場合が最も多いですが、運動時、歩行時、重いものを持った時や、しゃがんだ時に生じることもあります。

掻痒感
時々みられる症状であり、その理由としては、粘液漏出による刺激や、過度な洗浄が原因となることがあります。

痔核の病期

痔核には「内痔核」と「外痔核」がありますが、内痔核はその症状の進行度により、4つの病期に分けられます(表1)。
表1:痔核の病期を表すGologher分類1)

グレード(進行度)症状
グレードⅠ排便の時、痔核は肛門の内側で盛り上がるが、脱出はしない程度
グレードⅡ排便の時、痔核は肛門の外側まで脱出してくるが、排便が終わると自然に元に戻る
グレードⅢ排便の時、痔核が脱出してしまうが、指で戻すことができる
グレードⅣ痔核は常に肛門の外に出ており、指で戻すことができない

 痔核は、進行度によって症状が異なります。もっとも初期であるグレードⅠでは、排便時に出血が見られるものの、痛みはあまり無いようです。
 痔核が少し大きくなってくるグレードⅡは、肛門から痔核が脱出するものの、排便後は自然に肛門内に戻ります。この頃は痛みがあり、出血もみられます。
 さらに進行してグレードⅢになると、指で押し戻さないと戻らないくらい、痔核が脱出した状態になります。
 もっとも進行したグレードⅣでは、痔核が常に肛門の外へ脱出した状態になり、指で押しても元に戻らないほど固くなります。この頃になると、痔核が固くなってしまうため、痛みや出血がなくなりますが、粘液が常に少しずつ滲み出して出ている状態になるので、下着が汚れるようになります。

痔になる原因

 高齢者に多い痔核の原因は、便秘や下痢が挙げられます。便秘が続き、排便の時にいきみすぎてしまうことで、肛門に負担がかかります。すると、粘膜下の部分がうっ血して大きくなり、出血するようになります。また、老化現象によって粘膜下の部分を支えている組織がちぎれたり、支える力が弱くなってくると、クッションの役割をしている粘膜下の部分が肛門から飛び出してきてしまいます。これが痔核となるのです。
 また、下痢が続く場合も、便が勢いよく肛門から出ることが続くため、その勢いにのって、痔核が飛び出した状態になります。

痔の治療方法

 高齢者に多い痔核の治療は、保存治療と外科的な治療に分けられます。

保存療法
 保存療法ではまず、日常生活の指導と薬物療法がおこなわれます。日常生活の指導では具体的に、以下のことを禁止します。

  • 長時間の座位
  • 寒冷下での作業
  • 排便時のいきみ

食事面では、アルコール摂取の注意、水分摂取の励行、食物繊維の積極的な摂取を行うよう指導されます。

また、長時間便座に座っていることも痔核を振興させてしまうため、座浴や入浴により、肛門付近を温めることも推奨されます。
 薬物療法では、座薬か軟膏、飲み薬が処方されます。薬物は出血や痛み、脱出や腫脹などの症状を和らげるために使用しますが、お薬のみで慢性的な痔核を完治させることは、難しいとされています。

外科的な治療
痔核を完治させるために選択されるのは、外科的な治療です。
外科的な治療では以下の方法などがあります。

  • 痔の部分を切除する
  • 輪ゴムなどで痔核を縛り、血流を止めて痔を壊死させて切除する
  • 薬剤で痔を固めて切除する

 局所麻酔のみでできる治療が多いものの、外科的治療には出血や感染などの合併症を伴うこともあり、高齢者の場合、外科的な治療をすること自体が身体的な負担となってしまうため、治療法は慎重に選択することになります。

痔への対策

 痔への対策としてもっとも必要となるのが、便秘や下痢を防ぐということです。特に高齢者は、さまざまな理由から排便コントロールが不良となることが多いため、日常生活を見直して適切な排便コントロールを行っていきましょう。

 また、長時間の同一姿勢も痔の原因となります。少しづつでも積極的に体を動かすようにし、長時間座り続ける生活をしないように意識していくと良いでしょう。

 さらに、トイレに行くのは便意を感じてからにします。便意を感じる前からトイレへ行っていきんでしまうと、いきみに対して強い力が必要になりますし、長時間いきんでいる状態になり、肛門への負担がかかってしまいます。便意を感じてから排便をするようにしましょう。

(公益財団法人長寿科学振興財団 「健康長寿ネット」より転載)

森下真紀 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

森下真紀 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

日本歯科総合研究所代表取締役社長 森下真紀氏×健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん氏

口臭による「スメハラ」に無頓着な日本人

西川:先生は口腔(歯と歯周組織)の健康こそが体全体の健康のもとだと発信に努めておられますが、口臭による「スメハラ」にも警鐘を鳴らしておられますね。

森下:臭い(スメル)で周囲に不快感を与えるのがスメルハラスメント、略してスメハラです。私たちは欧米人より比較的、体臭がキツくない反面、自分が発する臭いについての意識が希薄です。そのため、日本人の口の臭さは実は世界的に悪評が高いのです。

西川:日本には古くから香道のように香りを大切にする文化がある一方、口臭のケアに無頓着かもしれませんね。

森下:「舌苔(ぜったい)」という、舌に付着した白いコケ状のものが雑菌のたまり場なんです。鏡で見て、この舌苔があれば確実に口臭がします

西川:ぜったいイヤですね!そもそも口臭の原因は何なのですか?

森下:胃腸が悪いせいだと思われがちですが、実は口臭の原因の90%は口の中にあります。歯周病菌により発生する揮発性の硫黄化合物が悪臭のもととなり、卵や魚が腐った臭いがするのです。ですから、常日頃からの歯周病予防が口臭の最大の予防策です。

西川:口臭が気になる時のアドバイスがあれば教えてください。

森下:唾液が減ると臭い物質が気化しやすくなるので、唾液をしっかり出すことが重要です。唾液には歯周病菌を退治する効果もあります。口臭が気になったら、早食いせず噛む回数を増やして唾液を出しましょう。ガムを噛むのもいいですし、耳下腺・顎下腺・舌下腺の3大唾液腺をマッサージすると唾液が出やすくなります。

口臭の元・歯周病菌が認知症や糖尿病の原因に?

西川:歯周病菌は口臭どころか、認知症の原因になるともいわれますね。

森下:歯周病菌が脳に侵入するとアルツハイマー型の認知症を引き起こす可能性があるといわれています。また、歯周病は糖尿病の高リスク要因でもあります。口臭の元となる菌が重篤な病の引き金ともなり得るのです。

西川:日本では体全体の健康と口腔の健康は別だと認識されがちです。内科には健康診断や定期健診で毎年通っても、歯科は歯が痛くてたまらない時に行くだけですからね。

森下:歯科医療先進国であるスウェーデンでは20歳までの歯科治療費は無料で、子どもの頃から口腔ケアが当たり前です。一方、アメリカは医療費のほぼすべてが自費負担ですから、虫歯や歯周病になって高額な医療費がかかるのを恐れ、自ら口腔ケアを心がけます。

西川:プレジデント誌による定年退職後の人の「健康に関してやっておけば良かった後悔」の1位は歯のケアです。日本にはありがたい保健制度があるわけですから歯科に口腔の定期健診に行くべきですね。

口の中の健康に気をつけて一生涯、自分の歯で噛もう!

森下:口の中には、その人のマナー、身だしなみ、生活のすべてが如実に表れています。日頃から口腔の健康に気をつけている人は長生きできる確率も高まります。

西川:多くの病原菌は口から入ってきますからね。

森下:うがいや口腔のケアは、インフルエンザをはじめ、多くの感染症の予防のためにも必須です。

西川:口から食べた物で体はできているわけで、医食同源の言葉通り、口は医療と食のみなもと。健康・長寿・美容のために口の中の環境を軽視してはなりませんね。

森下:噛むことは、脳内の血流を増やし、脳の運動野や感覚野、前頭前野、小脳を活性化します。また、記憶をつかさどる海馬を刺激し、記憶力を高めるとも考えられています。

西川:大分・高崎山のボス猿やマドンナ猿も歯が悪くなると毛並みや動きが精彩を失い、その座を奪われると聞きますが、人間も同じですね。歯は体や脳の機能だけでなく、心の健康にも影響があるのですね?

森下:噛むことはストレスを緩和し幸福感を高めるセロトニンの分泌を増やし、うつの改善にも効果があるといわれていますね。

西川:健康な歯で笑えることが、まさに笑う門には福来ることにつながるのですね。

森下:一人でも多くの人が口腔の健康に気をつけて、一生涯、自分の歯でしっかり噛んでいただくことが私の願いです。

西川:年齢の齢は歯に令和の令と書きますからね。いつまでも令しく(うるわしく)齢を重ねるには、歯と口の中の健康が大切なのだとよくわかりました。貴重なお話をありがとうございました。

森下真紀氏 プロフィール

森下真紀氏 プロフィール

歯科医師・歯学博士・株式会社日本歯科総合研究所代表取締役社長。
国立東京医科歯科大学歯学部歯学科首席卒業。
在学時、英国キングスカレッジ歯学部留学。
その後、東京医科歯科大学歯学部附属病院研修医を経て、同学大学院入学、博士号取得。
日本学術振興会特別研究員。
「日本を世界一の歯科先進国へ」をミッションに歯科業界の発展に尽力している。
今秋に口腔ケアの啓発本(Topic 参照)を上梓予定。


大谷泰夫 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

大谷泰夫 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

神奈川県立保健福祉大学理事長 大谷泰夫氏 × 健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん氏

健康と病気の間のグラデーション

西川:大谷先生は黒岩祐治知事と二人三脚で、人生100年時代の新たな健康観として「未病」を提唱され、ヘルスケアの分野にイノベーションを起こしておられます。神奈川県は全国をリードする「未病先進地」として注目を集めていますが、そもそも「未病」とはどのような考え方なのでしょう?

大谷:平均寿命が延びて、今や1世紀を生きる人も少なくありません。心身の状態を、健康か病気かの2つに単純に分けて考える人生ではなくなってきました。健康と病気が共存する状態、やや調子が悪くても現役生活を送る状態が、実は人生で相当長い時間を占めています。そんな健康と病気の間のグラデーションの状態を「未病」の段階ととらえ、より良くしていこうという健康観です。

西川:なるほど。たしかに、年齢を問わず、誰しも心身にどこか問題をかかえて生きている場合が多いでしょう。健康診断を受けたら、昨日まで健康だと思っていた人が、突然、その日から「患者」と呼ばれる。薬を飲んだり手術したり治療が始まると、病人扱いされ、生活が一変。若くして「患者」になると人生の半分以上が病人生活というのはおかしいですね。

大谷:「未病」の考え方は、治すという呪縛からの解放でもあるのです。人はある日突然、病気を発症するのではありません。長年の生活習慣などが積み重なって、症状が少しずつ顕在化してきます。つまり、健康と病気は、一定の期間、体の中で共にあり、連続しているととらえる方が自然です。ですから、心身の衰えや病気とただ「戦う」というのではなく、場合によっては「共生」していくべきなのです。

西川:健康か病気かという二者択一のとらえ方ではなく、付き合いながら改善していくということですね。

大谷:その通り。血圧135の人が3年後も135だと、数値的には良くなっていないと診断されますが、年齢とともに上がることを考えれば、むしろ改善しているともいえます。私たちは赤ちゃんのときからさまざまな病気にかかり、回復したらまた「未病」の世界に戻ることを繰り返しているのです。

西川:日本人の2人に1人はがんになる時代ですが、手術後に回復し、日々気を付けながら生活している人も、「患者」ではなく「未病」の人なのですね。

大谷:まさに「未病」の状態です。従来の治すことが目的の医学がすべてではありませんが、「未病」は医者いらずということでもありません。治療した病気が回復しても診療や薬を拒否するのではなく、医療のコントロールの下で改善していけばいいのです。

「健康リテラシー」を高めよう!

西川:「未病」の健康観を持って人生100年を健やかに生きるうえで大切なことは何でしょうか?

大谷:「未病」を支えるのは自分自身です。そのために一番大切なのは「健康リテラシー」を高めることです。つまり、体に何が良いのかを知り、それを毎日の生活に結びつけていく力です。

西川:「健康リテラシー」を高めるためにはどうすればいいですか?

大谷 私が理事長を務める日本健康生活推進協会が主催している「健検」(日本健康マスター検定)を目指すのもいいでしょう。病気を改善して健康寿命を伸ばすにはもちろん、さまざまな健康食品やサービスの中から自分に適したものを選択する目を養うのにも有益です。

大谷:「未病」の健康観を持ち、「健康リテラシー」を高めつつ、日々心身のセルフケアを心掛けることが、令和の時代を生きる私たちに最も大切なことに違いありません。

大谷 それは自分自身にとってのみならず、家族にとっても子どもたちが健康に長生きしてくれることは最も大事なことです。また、企業や組織にとっても社員が健康で元気で労働生産性を上げてくれたほうがいいに決まっていますね。

西川:「未病」に関する取り組みは、教育機関や企業でも着実に進んでいますね。

大谷:神奈川県では子どものころから「未病」教育を行うようになりました。中学・高校生のための「未病」テキストを作成し、配布を始めています。また、県内の企業、神奈川県、研究機関の産官学が連携して、「未病産業研究会」を設立し、さまざまな商品やサービスを生み出しつつあります。

西川:少子高齢化で日本の伝統的な企業のマーケットは縮小していますが、今後、日本のみならず、欧米や中国、韓国、台湾、香港など東アジアの国々も急速に少子高齢化が進みます。そういった意味では、「未病産業」は無限の可能性を秘めているといえますね。

大谷:これからの「未病産業」の研究拠点として、神奈川県立保健福祉大学では、東京大学の鄭雄一教授を研究科長にお迎えし、この4月から新たな大学院修士課程「ヘルスイノベーション研究科」を設置しました。起業家精神を持ち、科学的根拠に基づいたアプローチによって社会変革に意を尽くすことができる人材の養成を目指しています。

西川:「未病」とは、私たち一人一人の意識と行動にかかっており、企業も教育も人に始まり人に終わるのだとわかりました。令和は神奈川県が「未病」のフロントランナーとして、日本全国はもとより世界中を元気にする時代になりそうですね!ありがとうございました。

大谷泰夫氏 プロフィール

大谷泰夫氏 プロフィール

神奈川県立保健福祉大学理事長。東京大学法学部卒業。厚生省入省。医政局長、厚生労働審議官、内閣官房参与を経て現職。
日本保育協会理事長、日本健康生活推進協会理事長を務める。
医療分野における研究開発の推進・実用化に尽力し、また企業との連携による健康産業の発展にも寄与している。

早田 輝子 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

早田 輝子 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

女性ライフクリニック新宿院長 早田 輝子先生 × 健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん氏

女性の体調不良 心疾患が原因かもしれません

西川:先生は幅広い見地から診療していただけると評判ですが、最初に女性が気を付けたい心疾患について教えてください。

早田:「胸が締め付けられるように痛む」という人は狭心症を疑ってみるべきでしょう。狭心症には労作性(ろうさせい)と攣縮性(れんしゅくせい)の2種類があります。労作性狭心症は階段を上ったり、重いものを持ったりといった労作をしたときに胸が痛むもので、心臓を栄養する冠動脈の狭窄で起こります。一方、冠動脈がけいれんをして起こる攣縮性狭心症は、就寝中や明け方など安静時に起こります。

西川:攣縮性狭心症の症状とはどのようなものですか?

早田:胸の締め付けられるような痛みが典型的ですが、その他、肩や背中への放散痛、あごやのどの痛み、倦怠感などの症状を訴える方もいます。心筋梗塞とは異なり、症状は病院受診するまでに治まっていることが多く、その場合は来院時心電図検査で異常がみられないことが殆どです。不定愁訴(漠然とした身体の不調)とされてしまう場合も少なくありません。

西川:年齢やストレスで少し具合が悪いだけだと思い込み、狭心症を見逃すのは危険ですね。どのような人がなりやすいのでしょう?

早田:労作性狭心症は、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病を有している人がなりやすいです。攣縮性狭心症は、ストレスのほか、不眠、過労、過度の飲酒などが発作の誘因となります。また、エストロゲン(女性ホルモン)には血管の保護作用があるので、それが急激に減少する更年期以降のほうが女性は狭心症になりやすくなります。「つらい」「おかしい」と感じたら、気軽にまず循環器の専門医に相談してください。

心身の健康には日常的なケアと多角的アプローチが大切

西川:女性が健康と美容のために心がけるべきことは何でしょうか?

早田:食事、運動、自分自身のケアの3つでしょう。食事で気を付けたいのは加工品です。工場で大量生産され手軽に買えるものは、たいてい、糖質と脂質が多く、添加物がたくさん入っています。若いときから将来の健康と美容のために、そして、お子さんの健康のためにも避けたいですね。

西川:食べたもので体が作られるわけですから、医食同源という通り、本来、医療と食は同じですね。日々の食事で気を付けるべき点は?また、女性が好きなスイーツをどうしても食べたいときは何を選べばいいですか?

早田:和食中心の食生活がおすすめです。また、甘いものを食べたいときは、和菓子や原材料がシンプルで質の良いものを少しだけ楽しむのがいいでしょう。脂質が少ない、わらび餅、プリン、ヨーグルトなど。カステラはトランス脂肪酸が使用されていないものが多いです。間食には、ナッツ、小魚、ドライフルーツ、甘酒豆乳といったタンパク質やビタミン、ミネラルが摂れるものを選択するとよいと思います。

西川:運動は何をすればよいのでしょう?

早田:適度な運動は健康の源。血液を循環させることが大事ですから、日常生活の中でなるべく歩く習慣を付けるといいですね。それに、スクワットも効果的です。また、ストレッチして関節の可動域を広げることも大切です。

西川:女性の社会進出に伴って、仕事も家庭も忙しい人が増えています。自分自身をケアすることも忘れないでいただきたいですね。

早田:女性は特に母親になると子育て中心になって、自分自身のケアが後回しになりがちです。心身が満たされれば、周囲にあたたかく接することができますし、自分も気持ちよく過ごせます。我慢し過ぎないこと、自分の時間を持って自分自身をいたわることを、忙しい女性は意識した方がいいでしょう。心身が疲れてしまったときは、自分をきちんといたわっているか見つめ直してみてください。

西川:先生は、東洋医学、アロマテラピー、サプリメントにも精通しておられますね。

早田:西洋医学に加え、漢方を用いることで相乗効果が得られる場合が少なくありません。アロマテラピーは過剰な交感神経反応を整え、リラックス効果があります。香りには個々の効能がありますが、好きな香りを楽しむのが一番です。また、サプリメントはあくまで食事の栄養補助ですが、女性が不足しがちな鉄分やカルシウム、亜鉛などを摂取するには有効です。

氾濫する健康情報に惑わされない知識を持つ

西川:現在は健康に関する情報があふれかえっていて、逆に何が正しいのかよく分からない時代です。年やストレスのせいだと甘く考えず、信頼できる医師にすぐに相談することはもちろん、みずから学ぶことも大切ですね。

早田:ネットやマスコミの情報に惑わされて不確実な民間療法で失敗したり、痛みを我慢できなくなるまで放置したりして手遅れになるケースもよくあります。反対に心配し過ぎてドクターショッピングすることも問題です。一人一人が健康づくりと医療に関する基礎的な知識を持つことも大事です。

西川:早田先生のように患者の立場に立って多角的に診療していただける医師は本当に心強いです。わかりやすくお話いただき、ありがとうございました。

早田 輝子先生 プロフィール

早田 輝子先生 プロフィール

医学博士。昭和大学医学部卒業。
女性ライフクリニックの対馬ルリ子理事長の理念に則り、西洋医学、漢方、食事、運動、アロマセラピー、サプリメントなど幅広い見地からテイラーメイドの診療を行っている。
日本循環器学会認定循環器専門医、日本内科学会認定内科医認定医、日本医師会認定健康スポーツ医。
プライベートでは、10年以上ヨガを続け、11歳と8歳の二児の母。

村上知文 × 松沢成文 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

村上知文 × 松沢成文 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

下北沢トモクリニック院長 村上知文先生 × 参議院議員・前神奈川県知事 松沢成文先生 × 健康寿命をのばそう運動
主宰 西川りゅうじん氏

今日からいっしょに《卒煙》!
全国初の受動喫煙防止条例を作った神奈川県が日本をリードしていこう♪日本のアンチエイジングの先駆者

西川:2018年7月、受動喫煙の対策強化を盛り込んだ健康増進法改正案が可決され、東京五輪が開催される2020年度より実施される運びとなりました。全国に先駆け、松沢先生が神奈川県知事として受動喫煙防止条例を制定されたことが大きなターニングポイントとなりました。松沢先生と村上先生は受動喫煙防止の立役者です。何がきっかけとなったのですか?

松沢:受動喫煙防止に取り組み始めたのは、知事1期目の欧米視察で各国のたばこ対策に触発されたことです。2003年にWHO(世界保健機構)でたばこ規制の条約が全会一致で採択されたことを受け、各国ですみやかに法律を整備し、ホテルもレストランも既にほぼ禁煙でした。

西川:同じ条約を批准しているのに、日本は禁煙対策で恥ずかしい世界最低水準の評価ですからね。

松沢:国が対策を進められないのなら神奈川県からやってみようと、2期目の選挙公約の一番上に「公共的施設における禁煙条例の制定」を掲げました。そして、選挙に当選し、公約実現のために規制を進める義務と権利をいただき、条例づくりに着手しました。

村上:松沢先生が推進してこられたたばこ対策は、本来、われわれ医師がやらねばならないことです。医師法の最初に「公衆衛生の向上及び増進に寄与し、国民の健康な生活を確保する」とあります。患者を診るだけが医師の仕事ではありません。国民の健康を害することがあれば、対策を講じなければなりません。そんな医師がやるべきことを松沢先生が進めておられるのですから、応援しなくてはならないと感じました。

松沢:村上先生には、私が知事のときから、会長としてリーダーシップを執って医療関係者を集め、たばこ対策に取り組む勉強会を結成していただいています。

村上:会では、松沢先生からうかがうたばこ対策の進捗状況を踏まえて、取り組み事例を学び合い、意見交換と助言を行ってきました。

西川:まさに二人三脚で対策を進めてこられたわけですね。全国初の条例制定は至難の技だったに違いありません。

松沢:2期目の当選後すぐに条例づくりに取り掛かりました。しかし、独善的に進めると反発を招きかねません。そこで、タウンミーティングや業種別の懇談会を開き、有識者や医師、また規制を受ける側の飲食業界や娯楽産業などの経営者からも意見を聞いて民主的に進めました。条例制定に漕ぎ着けられたのは、村上先生をはじめ医師の先生方はもとより、神奈川県民が後押ししてくださったお陰です。

喫煙は死に至る病気の予防可能な最大の原因

西川:村上先生はどのような想いで啓蒙活動に携わってこられたのでしょうか?

村上:活動の根本には、たばこのために苦しんでいる患者や肺がんなどのがんで亡くなる人達を放っておくわけにはいかないという想いがあります。たばこは中毒性があるので、なかなかやめられず、禁煙治療でやめられるのは6割ほどだといわれます。根本的な解決には、たばこを容易に吸える環境を無くさなければなりませんし、すべての人にたばこに関する正しい知識を持ってもらう必要があります。

西川:日本は先進国の中ではもちろん、途上国と比べても比較的、たばこが容易に買える環境にありますね。

村上:禁煙治療中でもコンビニや自動販売機で簡単に買えてしまうので、また吸ってしまう人が少なくありません。海外のたばこのパッケージには、グロテスクな末期がんの人の顔やレントゲン写真が載っていて、有害さが一目でわかります。一方、日本のたばこのパッケージはお洒落で手に取りやすいのが問題です。

松沢:街中にたばこの自動販売機があるのは日本くらいです。WHOのたばこ規制枠組条約では自動販売機を認めていません。ドイツにはTaspoのような本人認証ができる販売機がありますが、アメリカではたばことお酒は対面販売でしか売りません。

西川:日本は禁煙途上国どころか後進国ですね。村上先生が伝えたい正しい知識とはどのようなことでしょう?

村上:喫煙者のほとんどは、たばこに何が入っているのか知らずに吸っています。たばこには、ゴキブリ駆除剤やネズミ駆除剤、殺虫剤の成分、毒薬のヒ素、シンナーの主成分など有害物質が200種類以上も含まれています。成分の一覧表を見れば、誰しも「たばこをやめたい」と思います。

西川:日本人の死因の2人に1人はがんで、その最大のトリガーの一つがたばこであることは明らかでしょう。

村上:WHOが「喫煙は病気の原因の中で予防可能な最大の原因」と位置付けている通り、肺がんはもちろん、喉頭、胃、膀胱、肝臓などのがん、また、心筋梗塞、脳卒中といった恐ろしい病気の発症への関与がわかっています。

たばこが働き盛りの喫煙者の労働効率を下げる

西川:日本より前からたばこ対策に取り組んできた国々では実際に効果は出ていますか?

松沢:例えば、イギリスでは10年以上、たばこを規制した結果、心筋梗塞や脳卒中で救急車で運ばれる人が減っています。欧米では、たばこ対策に取り組めば、国民の病気が減ることで長期的に医療費が減少し、国家財政に寄与すると考えます。3大生活習慣病のがん、心筋梗塞、脳卒中にたばこの関与は明白ですから、日本でも喫煙者と受動喫煙を減らせば医療費が減少するメリットがあるはずです。

西川:人口減少が本格化する中、社会保障費が減ればいいですね。アジアではどうでしょう?

松沢:韓国でも約10年前まで、たばこ会社は国が所有していましたが、完全に民営化し、たばこ規制法ができました。そのため、今や飲食店でも絶対に吸えません。欧米だけでなく、アジア各国でも世界的な健康志向の高りを受け、たばこの規制が当たり前になっているのに、日本だけが取り残されているのです。

村上:「働き方改革」が叫ばれていますが、たばこは働き盛りの喫煙者の労働効率を下げています。会議の休憩ごとに吸う人はドーッと吸える場所に移動して戻っての繰り返しで、時間のロスがバカにならない。また、吸っている間は血管が収縮して血が濃くなり、血液の循環が悪くなって、吸えば吸うほど考えがまとまらなくなる。ことほどさように、たばこは労働生産性を下げるのです。喫煙者を採用しない企業も出てきていますが、労働効率の点からも、たばこ対策を進めるべきです。

西川:欧米にならって、経済産業省と東京証券取引所は、厚生労働省と連携しつつ、2015年から「健康経営銘柄」を公表しています。日本でも、従業員の健康増進に投資する「健康経営」を心掛けている企業は、業績や株価もプラスに作用する場合が多いのです。社員の心身が健康であれば生産性が向上するのは当然ですね。

「今日からいっしょに《卒煙》しよう!」

松沢:たばこは法律で禁止されていない嗜好品ですから、喫煙する自由はあります。でも、たばこを吸わない人が、吸っている人の煙を吸わされて健康被害をこうむるのは理不尽ですね。ですから、まず、吸わない人をたばこの煙から守って健康社会を作ろうと受動喫煙防止条例を制定しました。しかし、問題の根本は喫煙者を減らすことです。喫煙者が減れば受動喫煙も減るわけですから。

西川:喫煙者を減らすために、具体的にはどんな取り組みを行ったのですか?

松沢:村上先生をはじめ医師会の先生方に大きなお力添えをいただき、禁煙治療が保険適用になりました。ニコチン依存症の病気として保険適用で治療し、ニコチンパッチのみならず、経口薬も処方できるようになりました。こうして、禁煙治療の医療体制が確立されたのは効果絶大でした。また、神奈川県知事の時、もう一つ、受動喫煙対策として、「神奈川卒煙塾」を開塾しました。

西川:たばこを卒業する「卒煙」とは、いい表現ですね。

松沢:禁煙という言葉に抵抗を感じる喫煙者も少なくありません。だから、「卒煙しよう!」と呼び掛けたのです。「卒煙塾」とは、たばこが健康に良くないと気付き、努力してやめようという人には、家族とともに行政もサポートしますよという会です。塾長は、元は超ヘビースモーカーで、刑事ドラマでたばこ吸っているイメージのあった舘ひろしさんにお願いしました。舘さんは実際に経口薬で卒煙に成功されているので、「一緒に卒煙しよう!」と言っていただいたお陰で、たくさんの塾生が集まりました。

日本の喫煙率の推移

たばこが原因で人生を台無しにする人をなくそう!

西川:近頃、増えている女性喫煙者にはどのように伝えればよいでしょうか?

村上:喫煙を続けると、たばこに含まれるさまざまな有害物質が肌に影響を及ぼして、同い年でも見た目が親と子ほどの違いになってしまうことさえあります。顔や肌だけではなく、がんをはじめリウマチなどあらゆる病気の原因となるなど、体の中にもいろいろなマイナスを引き起こします。妊娠したらたばこをやめればいいというものではありません。体内に蓄積した有害物質が、お子さんに影響する可能性もあります。

西川:大人の喫煙者を卒煙させることも大切ですが、若いうちからたばこを吸わないようにする教育こそが重要ですね。

松沢:その通り!40代50代で、たばこを吸い始める人はいません。たいてい、10代後半から20代前半で吸い始め、やめられずに吸い続けるのです。喫煙の習慣が付くとなかなか卒煙できません。喫煙者を減らすには、中学や高校からの禁煙教育が非常に大切です。

西川:どんなスポーツでもトップアスリートになって活躍するには、たばこを吸っていると絶対に不利です。音楽アーティストも喫煙し続ければ、大切な声を失う可能性があります。ですから、若者があこがれるスポーツ選手や音楽アーティストから、「たばこはアウト!」という風潮を作れるといいですね。スポーツや音楽は言葉を労さずとも社会を動かします。また、消費者が経済を動かし、有権者が国と地域の行く末を決めるわけですからね。

村上:たばこが原因で健康を害し、人生を台無しにする人をなくしたいですね。ステキな女性が自分自身で顔や肌を傷つけてほしくないですし、未来のお子さんの健康な人生を奪う権利はありません。たばこのために病気になる人が減れば、本人も家族も幸せですし、企業は生産効率が向上し、国も地域も相当な医療費削減につながります。

松沢:IOC(国際オリンピック委員会)とWHO は「たばこのない五輪」を推進しています。2008年以降のオリンピック・パラリンピックのすべての開催国では、罰則付きの受動喫煙禁止措置を採っています。私達一人ひとりが健康寿命を伸ばすとともに、世界中の人々に来ていただくためには、「日本には受動喫煙はありません」と胸を張って言える国にしていくべきです。全国初の受動喫煙防止条例を作った神奈川県の皆さんとともに、これからも日本をリードしていきましょう!

西川:松沢先生、村上先生、わかりやすくお話をたまわり、ありがとうございました。

スモークフリー

【神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例について】

神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例とは神奈川県では、受動喫煙による健康への悪影響から県民を守るための新たなルールとして「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」を制定しています。この条例では、不特定又は多数の者が出入する室内又はこれに準ずる環境を対象としています。学校、病院、商店、官公庁施設など(第1種施設)→禁煙飲食店、ホテルなど(第2種施設)→禁煙又は分煙施行日 平成22年4月1日
(神奈川県のホームページより)

【「かながわ卒煙塾」について】

たばこをやめたい方とその方を支える家族などを対象に、市町村や県内の医療関係者と協働して進める「かながわ卒煙塾」では、喫煙者がたばこをやめるきっかけとなる「卒煙チャレンジ講座」を開講し、喫煙者が卒煙に取り組むきっかとなるよう、たばこを吸わないことのメリットを考えるとともに、楽しい卒煙方法や卒煙の勧め方等を学びます。

「卒煙チャレンジ講座」の内容

講演

  • 禁煙及び受動喫煙の健康影響
  • 卒煙のメリット
  • 卒煙成功への道
  • 誰にでもできる卒煙の勧め方
  • 口腔ケアとたばこ など
講師  医師、歯科医師、薬剤師等が、講演を行います。
情報提供  保健福祉事務所等から、禁煙サポート事業などを案内します。
個別卒煙相談  医師等により、卒煙についての個別相談を行います。
呼気一酸化炭素濃度測定  希望者の方に対して測定を行います。

主催・申込先
公益財団法人かながわ健康財団がん対策推進本部
〒231-0037 横浜市中区富士見町3-1(神奈川県総合医療会館内)
電話:045-243-6933 FAX:045-242-2939 MAIL:sotsuen@khf.or.jp
(神奈川県のホームページより)

事務所での対策の実施状況

【職場の受動喫煙防止対策の現状について】

(出典:平成19年、24年「労働者健康状況調査」、平成23年労働災害防止対策等重点調査、平成25年労働安全衛生調査(実態調査))
実施機関 厚生労働大臣官房統計情報部
調査の範囲 [事業所] 約13,000事業所(常用雇用者を10人以上雇用する民営事業所から層化抽出法により抽出)
[労働者]約18,000人(上記事業所に雇用されている労働者のうちから層化抽出法により抽出)


松沢成文先生 プロフィール

松沢成文先生 プロフィール

参議院議員。希望の党代表。
神奈川県知事として受動喫煙防止条例を全国で初めて制定。
(一社)スモークフリージャパン代表理事。

村上知文先生 プロフィール

村上知文先生 プロフィール

下北沢トモクリニック院長。
昭和大学医学部客員教授、東京医科大学病院地域医療指導教授。
松沢氏と共に受動喫煙防止に尽力。

斎藤糧三 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

斎藤糧三 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

日本機能性医学研究所 所長 斎藤糧三先生 × 健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん氏

たんぱく質は、心と体の健康に欠かせない栄養素 自然の中で育った良質の牛肉や魚を食べよう!
日本のアンチエイジングの先駆者

西川:斎藤先生は日本におけるアンチエイジングの先駆者ですね。先生が主導され私も登壇させて頂いた「世界アンチエイジング医学日本会議」の開催が2007年でしたから、10年以上も前から常に日本の医療をリードして来られたわけですね。

斎藤:10年前はプラセンタが最先端で、その後、ボトックスやヒアルロン酸も一般的になりました。昨今は加齢によるサルコペニア(筋肉量低下)やフレイル(健常な状態と要介護の中間)がキーワードになっていますが、当時から筋力低下の治療をしているのは日本では私くらいでした。それほどアンチエイジングは新しい考え方なのです。

西川:アンチエイジング医療が、近年、急速に増加しているアルツハイマー型認知症の治療にも役立てられているのですね。

斎藤:アルツハイマー病には36の要因があると言われ、いくつかの要因が重なって認知症が進むことが解明されています。脳の36のマイナス要因に対処することで、根本的にアルツハイマー病を改善して行く手法は、実はアンチエイジングで既に確立されている治療法と同じです。

糖質制限とセットでたんぱく質をしっかり摂取することが大事

西川:斎藤先生は、サッカー日本代表の長友佑都選手が実践して有名になった「ケトジェニックダイエット」もいち早く提唱されましたね。このダイエット法は他の糖質制限ダイエットとはどういう点が違うのですか?

斎藤:糖質制限だけを行うと血糖値を維持するために筋肉の中のアミノ酸がエネルギーの原料として使われ、筋力が落ち免疫力が低下するデメリットがあります。ケトジェニックダイエットは“肉ダイエット”とも呼ばれるように、糖質制限とセットでたんぱく質をしっかり摂取するのが特徴です。

西川:たんぱく質は、どのように摂るのがよいでしょうか?

斎藤:「グラスフェッドビーフ」(自然の中で牧草だけを食べてのびのびと育った放牧牛の肉)の赤身肉がおすすめです。おいしいうえに健康につながる食材です。牛はもともと草食なのに、私たちが今まで食べて来た牛肉の大半は、牛舎の中で運動を制限して穀物中心の餌で霜降りの肉質にする牛だったのです。

西川:なるほど、健康な牛のお肉をいただけば健康に美しくなれるわけですね!それで、斎藤先生は牧草牛専門の精肉店「Saito Farm 麻布十番」をオープンされたのですね。

斎藤:健康に育った牛のお肉で生活習慣病のリスクを低減していただきたいと思い、始めました。

西川:毎日、たんぱく質を摂り続けねばならないことが、意外に認識されていないですね。

斎藤:たんぱく質は、筋肉、骨、肌など体を作る基本成分です。たとえば、鉄分を摂っても、一緒にたんぱく質も摂取しないと、鉄分が体内の必要な個所に運ばれないのです。

自然の中で健康に育った肉や魚の良質のたんぱく質を摂ろう!

西川:神経伝達物質もたんぱく質でできているとすれば、心の問題にも影響がありますか?

斎藤:たんぱく質が不足すると、喜怒哀楽が適切に表現できない、心の切り替えがうまくいかないなど、精神の活動に支障を来たす可能性があります。たんぱく質は、心身を正しく機能させるために欠かせないのです。

西川:たんぱく質は、私たちの心と体の健康にとって、また、アンチエイジングにも欠かせない重要な栄養素なんですね。

斎藤:たんぱく質は食事から摂れる代表的な栄養素です。食事を楽しみながらたんぱく質を摂るのなら、まずお肉でしょう。たんぱく質を体の中で利用するには亜鉛が必要ですが、放牧牛のお肉には牧草を通して含まれています。

西川:たんぱく質は1日にどれくらいの量を摂ればいいのですか?

斎藤:厚生労働省の推奨では、1日に、男性は60g、女性は50gくらい摂れば、筋肉が維持できるとされています。ですから、1食当たり20g(牛肉に換算して100g)を、朝昼晩に分けて摂るのがいいでしょう。

西川:グラスフェッドビーフなど良質なたんぱく質を摂ることが重要だとわかりましたが、質はどうやって見極めればいいのでしょう。

斎藤:できるだけ、天然の肉や魚を食べることです。自然の食物連鎖の中にいる天然の魚には体に良い脂肪酸のオメガ3が豊富ですが、限られたエサを食べて成長する養殖の魚には、必ずしも多く含まれているわけではありません。

西川:斎藤先生のお話はシンプルでわかりやすいですね。肉でも魚でも自然の中で健康に育った生き物の良質のたんぱく質を、3食しっかりと摂り続けることが健康づくりに大切であり、まさに医食同源の食生活の基本なのだとわかりました。ありがとうございました。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」に見るたんぱく質の重要性

人間が体内でエネルギーを産生するのは、三大栄養素と呼ばれる、たんぱく質、脂質、炭水化物です。厚生労働省では、健康の保持・増進のための推奨する栄養の摂取のしかたを「エネルギー産生栄養素バランス」として公表しています。
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、推奨するたんぱく質、脂質、炭水化物の割合を、下記のように設定しています。

エネルギー産生栄養素バランス(%エネルギー)※男女共通

  1. 各栄養素の範囲については、おおむねの値を示したものであり、生活習慣病の予防や高齢者の虚弱の予防の観点からは、弾力的に運用すること。
  2. 中央値は、範囲の中央値を示したものであり、最も望ましい値を示すものではない。
  3. 脂質については、その構成成分である飽和脂肪酸など、質への配慮を十分に行う必要がある。
  4. アルコールを含む。ただし、アルコールの摂取を勧めるものではない。
  5. 食物繊維の目標量を十分に注意すること。
    (厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」より)

20代~60代で身体活動が普通レベルの女性の推定エネルギー必要量は1日約2000kcalです。そのうちの13~20%にあたる260kcal~400kcal程度を、たんぱく質で摂取するのが望ましいということです。男性の場合はエネルギー必要量が約2600kcal/日ですので、望ましいたんぱく質での摂取量は338kcal~520kcalになります。

  たんぱく質の食事摂取基準

「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、年齢と性別に応じたたんぱく質の必要量も定めています。

*乳児の目安量は、母乳栄養児の値である。

  1. 範囲については、おおむねの値を示したものである。
  2. 中央値は、範囲の中央値を示したものであり、最も望ましい値を示すものではない。
    (厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」より)
たんぱく質が不足すると筋肉量が低下しますから、積極的に摂取するようにしましょう。

斎藤糧三先生 プロフィール

斎藤糧三先生 プロフィール

医師/日本機能性医学研究所所長。
日本医科大学卒業後、産婦人科医に。美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。
2009年、日本機能性医学研究所を設立。
2013年、日本ファンクショナルダイエット協会を白澤卓二医師と設立し副理事長に就任。
2017年、日本初の牧草牛専門精肉店「Saito Farm 麻布十番」をオープン。

小阪憲司 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

小阪憲司 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

横浜市立大学名誉教授 小阪憲司先生 × 健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん氏

発見が難しいレビー小体型認知症患者・家族・ドクター一丸となって治療を!見逃されやすいレビー小体型認知症

西川:65歳以上の7人に1人が発症するほど認知症が増えています。アルツハイマー型、レビー小体型、脳血管症型が三大認知症と呼ばれますが、小阪先生が発見されたレビー小体型認知症とはどんな病気ですか?

小阪:レビー小体型はアルツハイマー型の次に多く全体の約2割を占める認知症です。症状の現れ方に個人差があり、良い時と悪い時が波のように現れ、症状だけで判断が難しい病気です。幻視や認知の変動、睡眠時の異常行動、動作が緩慢になるパーキンソン症状などが特徴的です。

西川:認知症の半数を占めるアルツハイマー型は記憶力や理解力が徐々に低下しますが、レビー小体型は診断しにくいのですね。

小阪:その通りです。手足がふるえたり筋肉がこわばったりするパーキンソン病や、うつ病、アルツハイマー型認知症など、ほかの病気だと思われやすいのが難点です。

西川:周囲や医師も見逃しやすいのですか?

小阪:はい。アルツハイマー型認知症は認知機能が全体的に低下していくのに対し、レビー小体型認知症は認知機能に波があり、初期段階では機能の低下が目立たず、しっかりしている時があるため、見逃してしまう場合もあります。

西川:幻視が起これば周囲も困りますね。

小阪:幻視の症状が出ると、部屋に掛けてある上着が人に見えたり、実際はいないのに、子どもや生き物が本人にはありありと見えたりすることがあります。ホースがヘビに見える人もいます。

西川:妻や夫が浮気していると思い込み、嫉妬深くなることもあると聞きます。

小阪:嫉妬妄想といわれる症状です。それも幻視で、いるはずがない男や女の人が見え、配偶者が浮気していると解釈してしまう場合もあります。例えば、娘を別の人と勘違いする誤認妄想、あるいは、自分はいつも監視・盗聴されているといった被害妄想に陥る人もいます。

西川:夜中に大声でわめき出すとも聞きます。

小阪:レム睡眠行動障害という症状が現れることがあります。夢をみて、通常は夢を体で表現することができないのにこの病気で夢を体で表現してしまう症状です。手足をばたつかせてけがをしたり隣で寝ている人をたたいたり蹴ったり、「人が来た」などと夜間せん妄のように騒ぐ患者もいます。

西川:そもそも、レビー小体型認知症はなぜ起こるのですか?

小阪:脳の神経細胞の中にレビー小体というかたまりができることによって起こります。レビー小体というのは、もともとドイツのLewy(レビー)によりパーキンソン病の脳幹で発見され、1950年代にパーキンソン病の診断には欠かすことのできないことが明らかにされました。しかし、当時はパーキンソン病では認知症はあまり起こることはないと考えられ、またこのレビー小体は大脳皮質には現われないと考えられていました。しかし、認知症とパーキンソン症状を主症状とし、大脳皮質にもレビー小体が見られる症例がありました。この物質が神経細胞を傷つけ壊してしまうため認知症を発症するのです。

西川:レビー小体はどういったメカニズムでできるのですか?

小阪:元来脳内にあるたんぱく質が変性したたんぱく質となって蓄積したものであることはわかっていますが、どうしてできるのかは解明できていません。そのメカニズムを突き止めることが今後の課題です。

日本人はレビー症型認知症になりやすい?!


西川:現在、レビー小体型認知症の患者は全国に約90万人いるといわれていますが、どういう人がかかりやすいのでしょうか?男性の患者が多いと聞きますが。

小阪:女性も少なくないものの、男性がやや多いといわれていますが、国内のさまざまな調査では大きな性差はないとされています。生真面目で几帳面などの病前性格と精神症状との関係は報告されています。

西川:気質と罹患率に関連があるのですか?

小阪:性格的に真面目な人は、何でもちょっとしたことでも気になり苦にしがちです。そこから、幻覚、妄想に発展しやすいのでしょうか。病気の発症との関係は明らかではなく、あくまでも統計学的な報告です。

西川:家族は、最初、「何かヘンなことを言っているな」という感じでしょう。ところが、気が付けば重篤化している。

小阪:初めは本人も家族もわかりません。だから、ドクターが説明する必要があるのです。そして、患者・家族・ドクターが一丸となっての治療が不可欠です。

西川:家族は大変ですね。本人は信じたくないし信じない。家族は困惑するばかり。

小阪:患者の中には自分でおかしいと感じる人もいますが、多くの人は最初の頃は気付きません。本人は認めたがりませんし、家族や友人が医師と対処するしかありません。

西川:年齢的には患者数の多いボリュームゾーンは何歳ですか?

小阪:初老期から老年期、つまり、60歳〜70歳が最も発症しやすい年齢層だといえます。

西川:医師からレビー小体型認知症だと診断された場合、どのように治療すればよいのでしょうか?

小阪:薬による治療が中心です。アリセプト®は幻視などの精神症状を含めた認知機能の改善に、ドパミンはパーキンソン症状に一定の効果があります。漢方薬や最近は使用頻度が少なくなりましたが、難治性の精神症状には、時に、非定型抗精神病薬を使用する場合もあります。

西川:家族はどのようなことに気を付ければよいでしょう? 本人には幻視が見えている訳ですし、こちらが浮気しているなどと何度も言われたら、「何を言っているんだ!」と辟易するでしょう。

小阪:大変ですが、病気なのだと割り切り、忍耐力を持って、病気を理解し患者に対応し続けることが大切です。周囲の対応は時として大きな成果が得られます。

西川:一度なってしまうと完治するのは難しいのでしょうか?

小阪:進行性の病気なので少しずつ悪化していきますが、早期に対処すれば、幻覚や妄想といった症状は、ある程度、緩和できます。ですから、本人のみならず家族にとっても、早期発見・早期治療が重要です。

西川:厚生労働省の発表では、2025年には自立度Ⅱ(日常生活に支障をきたすような症状や行動、意思疎通の困難さが多少みられても、誰かが注意していれば自立できる)以上の認知症患者数の推計は410万人、つまり65歳以上の5人に1人が認知症になると予測されています。ところが、アルツハイマー型は知っていても、レビー小体型は約2割を占めるにもかかわらず、あまり知られていません。気になる点があれば、レビー小体型認知症がわかる医師のいる病院に少しでも早く行くべきですね。ありがとうございました。

※協力:東海大学医学部東京病院神経内科 梁 正淵 准教授

小阪憲司先生 プロフィール

小阪憲司先生 プロフィール

医学博士。レビー小体型認知症の発見者として知られる。
1965年金沢大学医学部卒業後、名古屋大学医学部精神医学教室入局(副手・助手・講師)。
1975年東京都精神医学総合研究所副参事研究員・都立松沢病院兼務。この間、約1年半、Max-Planck精神医学研究所(ミュンヘン)客員研究員。
1991年横浜市立大学医学部精神医学教室教授。
2003年より横浜市立大学名

石井 良幸 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

石井 良幸 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

北里大学北里研究所病院 外科部長・教授 石井良幸先生 × 健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん氏

がんになっても諦めないで!早期発見・早期治療すれば大腸がんはほぼ治る
定期的にがん検診を受ければ大腸がんは怖くない

西川:がんは今や日本人の2人に1人がかかる時代。中でも大腸がんが増えており、女性の死因1位、男性の3位です。わかった時には手遅れということも少なくない怖い病気のイメージです。

石井:大腸がんは定期的に検診を受け、早期発見・早期治療すればほぼ治る病気です。行政から検診の通知が来るはずですので、継続的に受診することが大切です。検便による簡易の検査なので約6割の発見率ですが、何より定期的な検診が重要であることに変わりはありません。

西川:大腸がんになった家族がいる人は、やはり、なりやすいのでしょうか?

石井:身内に大腸がんがいる人はリスクが高いと考えた方がいいでしょう。一般的には40代からがん検診を受けますが、家族になった人がいる場合は、前倒しして30代から検診を受けることを考えても良いでしょう。

西川:しかし、検便では6割しか発見できないのであれば、できれば、40歳になったら、より正確な内視鏡検査を受けて、早期発見に努めた方がいいですね。

石井:「心配だ、怪しいな」と思ったら、少しでも早く内視鏡検査を受けることをお勧めします。忙しい人にこそ受診していただきたいです。働き盛りの人にがんがあったら、早く治して仕事に戻してあげることが検診の役割ですからね。

西川:大腸がんになりやすい年齢のピークは60歳代だと聞きます。

石井:一世代前は60〜70歳代がピークでしたが、今や百寿の時代ですから、近年は年齢を重ねるに連れ増加しています。かくしゃくとしておられる高齢者も多いので、80歳で手術も珍しくない時代です。

西川:内視鏡で検査して、ポリープを切除するのに痛みはないのでしょうか?また、どれくらいの時間がかかるのでしょうか?

石井:内視鏡による治療は麻酔をして行いますし、切る場所には知覚神経がないので、基本的には切除しても痛みはありません。専門医であれば、長くても30分〜1時間でしょう。ただ、小さなポリープなら簡単に切除して当日帰れますが、進行して処置が難しい際は安全を考えて入院した方が良い場合もあります。

ステージⅣの大腸がんであっても諦めないことが肝心

西川:よくステージⅢとかⅣとか言いますが、各々どのような状態を差すのですか?

石井:ステージ0はがん細胞が粘膜の中にとどまっている状態。Iは筋肉の層まででとどまっている。Ⅱは筋肉の層を超えて広がっている。Ⅲaは筋肉の層を超えて広がり、3個以下のリンパ節に転移している。Ⅲbは4個以上のリンパ節に転移している。Ⅳは肝臓・肺・腹膜など離れた他の臓器への遠隔転移がある状態です。

西川:ステージごとで、どれくらいの確率で完治するのでしょうか?

石井:現代の医療ではステージⅢまでは治る可能性が高いです。ただ、リンパ節への転移が3個までのⅢaは治る確率が高いですが、4個以上転移したⅢbは再発が心配です。

西川:ステージⅣだと相当に厳しい状態なのでしょうか?

石井:ステージⅣですと5年生存率は20%を下ります。しかし、転移がある人でも切除できれば生存率20%以下だったのが40%ほどに上がりますから、諦めないでいただきたい。

西川:切除できないところまで進行している場合もあるでしょう。

石井:残念ながら取れないと完治がかなり難しくなります。

西川:その場合、どれくらい生きられるのでしょうか?

石井:一昔前はあと半年の寿命と言われていた患者が、今は抗がん剤を使えば3年ほどは生きられる時代になっています。

西川:大腸がんを治療するには、仕事もやめざるを得ず、日常生活に大きな制約が出て来るのでしょうか?

石井:医学の進歩によって、基本的には外来の化学療法が主体となり、なるべく病院に通って治療できるようになっています。副作用を心配する方もいますが、通院して治療できる程度の副作用です。

西川:抗がん剤は高価なイメージがありますが?

石井:一般的に月額約60〜70万ほどかかります。しかし、保険で3割負担の人であれば、高額医療費として請求すれば月額8万円ほどになります。それでも年間約100万円もの負担ですので、やはり、定期的にがん検診を受け、早期発見・早期治療することが何より大切です。

西川:「40過ぎたら備えよ常に」が大切だとわかりました。貴重なお話をありがとうございました。

石井 良幸先生 トピックス 北里大学北里研究所病院消化器外科 03-5791-6345

石井 良幸先生 トピックス

道、胃、腸(大腸・小腸)、肝臓、胆嚢、膵臓などの消化器疾患に関する治療を行っています。
良性疾患から悪性疾患まで消化器領域すべての疾患に対応し、最先端の質の高い医療を提供しています。
また、それぞれの臓器のスペシャリストがいるため、多臓器にかかわる疾患に対してもチームを組んでの対応が可能です。

沢田哲治 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

沢田哲治 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん氏 × 東京医科大学病院 リウマチ・膠原病内科教授 沢田哲治先生

朝起きたら手がこわばる熱っぽい、疲れやすい人はリウマチの初期症状かも?
疲れや歳のせいと思ってませんか?

西川:朝起きたら手がこわばる、熱っぽい、疲れやすいという人が、「カゼ?」「パソコンやピアノのやり過ぎで腱鞘炎?」などと甘く考えていたら、実は関節リウマチで骨が変形してしまったという話を聞きます。関節リウマチとはどんな病気ですか?

沢田:免疫機能の異常が原因となる膠原病(こうげんびょう)の一種で、手足のこわばりや痛みの他、微熱や倦怠感などの症状があります。これらが1カ月半以上続いたら要注意です。

西川:リウマチというと高齢の女性に多いイメージですが、どんな人がなりやすいのでしょう?

沢田:約100人に1人がなる病気で、女性は男性の3~4倍なりやすく、年齢は特に関係ありません。20~40歳代で発症する人も少なくありません。先天的な遺伝や体質による要因は3割ほどで、そこに後天的な要因が加わって発症する多因子疾患です。

西川:骨が変形する怖い病気として知られていますが、どういった経過をたどるのですか?

沢田:指の第2関節(PIP関節)、第3関節(MC関節)、手首、足首、ひじなど、比較的小さな関節の周囲にある滑膜に炎症が起き、次第に腫れて肥厚します。腫れた滑膜が骨に浸潤すると骨が溶け、結果的に骨や周囲の腱が構造的に破壊されて変形に至ります。

西川:骨が変形したまま固まると、普通の動作さえ難しくなってしまいますね。

沢田:軽い方、どんどん悪化する方、寛解と再発を繰り返しながら進行する方の3パターンがあります。1〜2年で歩行が困難になるケースも全体の1割はありますので、早期発見・早期治療が非常に重要です。

西川:手足のこわばりや微熱が長く続いたら、疲れや歳のせいなどと軽く考えず、すぐに受診するべきですね。病院ではどの科に行けば良いのでしょう?

沢田:内科もしくは整形外科です。抗CCP抗体という自分に対する抗体や身体の中の炎症反応などを診る血液検査が有効で、MRIや超音波などで関節の状態を診断することもあります。

西川:どのように治療するのでしょうか?

沢田:薬物療法が中心になります。痛みを取るための消炎鎮痛剤と変形を防ぐ抗リウマチ薬を服薬していただきます。生物学的製剤の注射もありますが、月に3~4万円と高額です。

西川:生物学的製剤の注射は、投薬が効かない患者向けですか?

沢田:有効率が5割以上と高いので、最初から生物学的製剤を使用することもあります。飲み薬の抗リウマチ薬は効果が出るまでに3カ月ほどかかり、顕著な効果が出る患者も多いですが約半数の方には効きません。まず、1種類の薬を処方して3カ月後に状態の評価を行い、良くなっていればそれを継続し、そうでない場合は薬を変えてまた3カ月間続けます。

西川:自分に合う薬が見つかるまで患者は不安だと思いますが。

沢田:通常、関節は半年から1、2年かけて変形しますので、最初の3カ月の薬が合わなくても、次の3カ月で合えば十分間に合います。構造的に関節が変形してしまった場合、最終的には手術という手段もありますが、一昔前とは異なり、早期に適切な治療を開始すれば、身体機能が急に失われることはほぼなくなって来ました。

喫煙・肥満は薬も効きにくく要注意!

西川:どういった生活習慣が危険因子となるのですか?

沢田:喫煙による関節リウマチの発症リスクは倍以上です。他の様々な疾病の要因にもなり兼ねないので健康であるためには禁煙が必須です。そして、適度に運動し、バランスの良い食事を摂ることです。肥満の人はリウマチになりやすく薬も効きにくいです。要は日々健康的な生活を送ることが大切です。

西川:今を生きるには誰しも忙しいですが気をつけるべきことは?

沢田:ストレスをためないことが大切です。せっかく良い状態を取り戻しても、大きなストレスをきっかけに再発することもあります。また、歯周病が関節リウマチの一因だという仮説がかなり有力になってきましたので、歯と歯ぐきの健康にも気をつけていただきたいです。

西川:近年、口腔衛生とさまざまな病気の因果関係が指摘されていますね。関節リウマチをはじめ膠原病は昔から難病と言われて来ましたが、そもそも、どんな病気なのですか?

沢田:通常、体内にバイ菌などの異物が入ると、異物を排除するために白血球・リンパ球・抗体などが動員されて炎症を起こします。ところが、そうした要因がなくても、コラーゲンが主成分の膠原線維から成る、皮膚・血管・関節の周りの結合組織を、自分の免疫が誤って攻撃し、炎症を起こす自己免疫疾患の総称を膠原病と呼びます。

西川:膠原病にはさまざまな病気があるのですね?

沢田:関節リウマチ以外にも、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、ベーチェット病など数多くあります。しかし、近年の医療の進歩によって、いずれも早期発見・早期治療さえできれば、良好な状態を保ちながら日常生活を送ることが可能になっています。

西川:少しでもおかしいと思ったらシロウト判断せず、即、受診が鉄則ですね。ありがとうございました。

沢田哲治先生 プロフィール

沢田哲治先生 プロフィール

東京大学医学部卒業後、同大学病院物理療法内科(現アレルギーリウマチ内科)に入局。コーネル大学留学を経て医局長を務めた後に退局。
東京医科大学病院に奉職し、膠原病・リウマチ性疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、ベーチェット病など)に関する専門的診療に従事。
リウマチ・膠原病内科日本リウマチ学会専門医・評議員、日本リウマチ学会指導医、日本内科学会認定医。

星野 惠津夫 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

星野 惠津夫 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん氏 × 空海記念統合医療クリニック院長 星野 惠津夫先生

漢方+統合医療の極意は「自分で治す。自分で治る」西洋医学では救えない命を救うことができる統合医療

西川:星野先生は西洋医学を究められた一方で、漢方をはじめとする東洋医学、そして心のケアも含めた「医療のあるべき姿」を臨床の場で実践して来られた、世界的にも希有な存在です。

星野:西洋医学によって病気を治すのはいいのですが、副作用によってさまざまなことが起こります。そういうマイナスの部分を持たない「理想の医学」というものがあるのではないかと考え、日本中、いろいろな所に行き、いろいろな先生に会って来ました。西洋医学だけでは救えない命が数多くあり、良いことなら何でもやっていくべきだというのが、私の信条です。

西川:そういった活動を始められたのは、いつ頃のことですか?

星野:大学3年の終わりです。ちょうど臨床に入るタイミングで「統合医療」を始めたわけです。

西川:その頃は「統合医療」という言葉自体もまだなかったのではないでしょうか?

星野:なかったですね。『自然治癒力を活かせ―難症治療の決め手』(創元社)という本を読んで感動して、著者の小倉重成先生に会いに木更津まで行ったのが始まりでした。

西川:「自然治癒力」を引き出すことが、漢方をはじめ「統合医療」のキモなんですね。当時、難病と呼ばれた、糖尿病、慢性肝炎、ベーチェット病、リューマチなどは、西洋医学だけでは治療が難しいことから、漢方薬を試そうとされる患者も多かったと聞きます。

星野:漢方薬や鍼灸以外にも、1日1食の玄米菜食療法、運動療法、メンタルに働きかける座禅など、さまざまな方法を小倉先生は駆使していました。これらの指導を通じて実際にいろいろな難しい病気を治せることを知り、これが自分の歩む道だと確信しました。

西川:東京大学医学部という日本の西洋医学の殿堂に入学されて間もない時期に、西洋医学の限界をすでに感じておられたわけですか?

星野:当時、薬害や公害が問題になっていましたが、東大の医師は被害者を治療することも予防することもできず、期待して入学したのに期待外れだったんです。このまま行くと後悔することになるという危機感がありました。その後の医師人生でさまざまなことを学び、引き出しが多い医者になれたと思います。

星野 惠津夫 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

漢方の「適応」と「限界」がわかってきた

西川:星野先生のご専門は消化器で、特に内視鏡治療の権威でもいらっしゃいますね。

星野:がん研に移ったのは、がん患者に対し、統合医療で何ができるかを知りたかったからです。12年前、院内に「漢方サポート外来」を設け、約3,000人のがん患者を診て来ました。その結果、漢方で何ができるか、どういう人に漢方を使うべきか、どこまでできるか。つまり、漢方の「適応」と「限界」がわかってきたわけです。

西川:先生独自の貴重な臨床データですね。

星野:特に進行した膵臓がんや大腸がんの場合、漢方がかなり役に立つことがわかりました。普通であれば3ヵ月や半年で亡くなってしまう患者が、何年も生きておられるわけです。その理由もだんだんわかってきました。

西川:漢方の何が良いのでしょうか?

星野:漢方薬を使うと、食欲が出て、よく眠れ、便通が良くなり、むくみがなくなる。すると、栄養状態が良くなって免疫力が高まるのです。逆に、症状が辛くて食事も摂れない状態ですと、だんだん栄養状態が悪くなり、感染症にかかりやすくなります。がん患者はがん自体ではなく、栄養失調で死ぬことが多いのです。

西川:人が生きていく上で、バランスの取れた栄養摂取は不可欠なんですね。

星野:それも、無理矢理「強制栄養」で栄養を補うのではなく、食欲が出て食べることが重要です。でなければ、栄養状態は良くなっても元気にはなりません。それではダメなんです。

西川:人はメンタルのありようも免疫力に大きく関わって来るからですね。

星野:そこで漢方や鍼灸が効果を発揮します。自律神経系に作用しますから、食欲、睡眠、排便、排尿などが改善し、免疫力が高まって気分も良くなります。すべての人に効くというわけではありませんが、漢方が効くメカニズムとはそういうものです。

西川:そういった治療の効果を世に広く伝える活動が、2017年6月、銀座に開設された「空海記念統合医療クリニック」へとつながったのですね。統合医療の素晴らしさに感銘を受けました。ありがとうございました!

星野 惠津夫先生 トピックス 『がんに効く最強の統合医療』(マキノ出版)

星野 惠津夫先生 トピックス 『がんに効く最強の統合医療』(マキノ出版)

統合医療によるがんのベストな治療法を解説した星野先生の最新刊。
主治医が提案するもの以外にも有用な治療法はいろいろある。
しかし、「がんが消える」と喧伝する本や治療法には、効果に乏しいものや、詐欺まがいのものも多数含まれているのが現状だ。
だからこそ、正しいものを見極めて、治療法を構築する必要があると説く。

小田原 雅人 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

小田原 雅人 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん氏 × 東京医科大学 主任教授 小田原雅人先生

5人に1人が糖尿病患者か予備軍 自覚症状なく進行する恐ろしい病気を防ごう!
糖尿病が引き金となり合併症で失明や足切断?

西川:近年、糖尿病患者が激増しています。毎年、あざみ野の人口の10倍の約15万人ずつ増えている計算になります。

小田原:全国の糖尿病の患者数は神奈川県の人口より少し多い約950万人、糖尿病予備群は1100万人。国民の5人に1人が患者か予備軍です。70歳以上では男性の4人に1人、女性の6人に1人が糖尿病にかかっています。

西川:女性より男性の方が多いのはどのような理由からですか?

小田原:男性の方が生活習慣に問題のある人が多いからです。生活習慣の悪化による肥満などが大きな要因となり、男女ともに糖尿病患者が増えているのです。

西川:糖尿病は、それが引き金となって失明したり、足を切断しなければならないことさえある恐ろしい病ですが、最初に自覚症状はないのでしょうか?

小田原:喉の渇き、トイレが近い、急な体重減少、倦怠感などが初期症状として挙げられますが、相当に悪化するまで、ほとんど自覚症状のない場合が多いのです。

西川:この病の本当の恐ろしさは併発する「6大合併症」にあると言いますね。

小田原:糖尿病の合併症は高血糖によって大小の血管が侵されることで起こります。細い血管の障害が目に起これば網膜症で失明に至ることもありますし、腎臓に起これば腎症、神経に起これば神経障害を引き起こします。太い血管の障害(動脈硬化)が脳に出れば脳卒中(脳出血・脳梗塞)を起こし、心臓に出れば心筋梗塞・狭心症になり、足に出れば末梢血管障害を起こし、壊疽ができて足を切断しなければならないこともあります。

西川:まさに魔の連鎖を招く病気ですね。

小田原:網膜症や腎症など合併症発症の可能性は「高血糖×罹病期間」であり、血糖値の高い状態を長く続ければ続けるほどリスクが高まります。糖尿病は、自覚症状がなくとも静かに症状が進行し、数々の深刻な合併症を引き起こす恐ろしい病気であることを知っていただきたいです。

西川:糖尿病は他にもさまざまな病気の温床になりやすいのですね。

小田原:糖尿病患者はがんのリスクが約20%も上がります。肝臓がんや膵臓がんは約2倍、大腸がんは約1.4倍もなりやすいのです。また、アルツハイマー型の認知症は糖尿病でリスクが上がります。

西川:アルツハイマー病は脳の糖尿病とも呼ばれていますね。

小田原:さらには、歯周病や骨粗鬆症になりやすいですし、骨密度は落ちていなくても骨が変性して骨折しやすくなります。また、糖尿病を患うと免疫力が下がるので、肺炎等のいろいろな感染症にもかかりやすくなるのです。

小田原 雅人 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

思い立ったが吉日 早く検診に行った者勝ち!

西川:糖尿病性の腎症が悪化すると、高額な治療費と長い時間を要する人工透析を受けねばならないので大変ですね。

小田原:糖尿病性腎症は人工透析を受ける患者の原因のトップであり、1人当たりの治療費は年間約580万円かかります。

西川:それは重い!そもそも、人工透析とはどういうものですか?

小田原:腎臓が悪くなると老廃物を尿で排泄できなくなります。体内に有害な成分と水分がたまって全身がむくみ、肺に水がたまれば肺炎を起こすなど危険な状態に陥ります。そこで、機械に血管をつないで血液から水分と老廃物を取り除き、きれいになった血液を体内に戻すのです。1日5時間、週に約3回行いますが、病院への行き帰りも含め一回8~9時間は拘束されることになります。

西川:本当に大変ですね。社会的コストも増大する一方だと聞きます。

小田原:日本には健康保険があるので一定の自己負担で透析を受けることができますが、それが大きな社会的負担となっており、このまま患者が増え続けると現在のシステムを維持できるかどうかわかりません。

西川:本人や家族はもちろん、社会のためにも、早期発見・早期治療が大切ですね。

小田原:早い段階から血糖コントロールを行えば治療コストはかなり低く抑えられますし、患者自身のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)も維持しやすくなりますので、まずは健康診断を定期的に受けていただきたいのです。

西川:「何か病気が出て来たら怖いから」と健診を先延ばししている人も多いと思います。

小田原:今は良い薬も出てきていますし、治療法はどんどん進歩していきます。1回の採血だけでもある程度のことはわかりますので、とにかく怖がらずに健診を受けていただきたいです。

西川:ありがとうございます。思い立ったが吉日。早く検診に行った者勝ちですね!

小田原雅人先生 トピックス 東京医科大学病院 糖尿病・代謝・内分泌内科のご紹介

小田原雅人先生 トピックス

小田原雅人先生をはじめとする糖尿病学会認定専門医がすべての糖尿病診療の外来を担当し、他施設からの紹介にも迅速に対応しています。
また、高血圧・高脂血症・痛風などにも丁寧に対処し、生活習慣病の総合的治療を実践しています。
*初診は紹介状または検査結果が必要です。
TEL:03-3342-6111(代)

林田 哲 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

林田 哲 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

慶應義塾大学医学部 専任講師 林田 哲先生 × 健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん氏

乳がんは早く見つければ治る
12人に1人の女性が乳がんになる

西川:乳がんに対する関心が高まっていますが、女性のがんの中では、亡くなる確率は大腸がんが最も高いですが、なる確率は乳がんが一番高いことは意外に知られていません。

林田:日本では年間8万9000人が乳がんになっています。日本の女性は一生のうちに、12人に1人が乳がんになる計算です。その比率はアメリカの方が高く、白人女性の8人に1人が乳がんになります。

西川:日本では、戦後、増加してきたのですね。

林田:一昔前は、日本の女性は20人に1人しかなりませんでしたが、今や12人に1人と比率が上がっています。もはやいつ誰がなってもおかしくない病気です。

西川:乳がんが進行すると、乳房を手術で取らねばならない場合もありますね。母の字の2つの点は乳首を表すように乳房は女性のシンボルですから、女性にとって精神的にすごく辛いに違いありません。

林田:日本の女性の乳がん患者は40代や50代から増えてきますが、その年代ですと胸を全摘出されるというのはまだ相当に抵抗があります。もちろん、パーソナリティーによっても異なります。命に胸は換えられないという方もいるし、胸がないと生きていく張り合いがないという方もいます。

西川:いくつになっても、やっぱり、とても辛いと思います。

林田:以前より良くなったのは乳房の再建手術が保険で可能になったことです。一世代前は100万円以上の費用を自腹で支払わねばなりませんでした。慶應大学病院でも、数年前までは乳房温存手術の割合が6~7割あったのですが、最近ではすべて摘出して再建する方が増えています。場合によっては、その方が乳房の形もきれいになるケースもあります。

西川:保険が適用され、見た目もきれいになるとは朗報ですね。

林田:形成外科の技術は日進月歩で、相当にきれいになります。しかし、完全に元通りにするのはなかなか難しく、やはり、時間とお金と努力が必要です。

西川:再建するのにも段階があるんですね。

林田:40代・50代の女性といっても人によって再建する目的はさまざまです。私が再建手術を薦める際には、「あなたがどこまで再建したいのかを決めましょう。無理のない目標を定め、そこに向かって努力しましょう」と伝えるようにしています。

林田 哲 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

40歳以上は検診を受けよう

西川:健康な女性は、全摘出するステージに進む前に、まず、早期発見、早期治療が大切ですね。

林田:乳がんは早く見つかれば治ります。2センチ以下の乳がんはステージ1と呼びますが、慶應大学病院では、ステージ1の乳がんの場合、10年生存率が約93%です。

西川:早く見つけることができれば、ほとんどが治るのですね。

林田:10年生存率ですから、その間に別の原因で亡くなられる方もいます。そういう方も含めての数字なので、乳がんが原因で亡くなる方はほとんどいません。ですから早期発見が非常に重要なのです。欧米では乳がん検診の受診率は6~7割ですが、日本はどれくらいだと思いますか?

西川:半分くらいでしょうか。

林田:実は2割ほどだけなんです。

西川:そんなに低いんですか?5人に1人しか受けていないなんて!

林田:欧米では、年齢が上がれば上がるほど乳がんになる確率が高くなり、50代以上の人は年1回マンモグラフィーを受けることで生存率が高まることが分かっています。

西川:日本の女性は何歳くらいから乳がん検診を受けるべきですか?

林田:日本の女性の乳がん患者は40代・50代から増え、60代が中心です。ですから、40歳以上の女性は検診を受けるべきだと思います。

西川:先生のお話で何よりも早期発見が大切だとわかりました。横浜市では、40歳以上であれば、視触診検査とマンモグラフィー検査が無償で受けられる案内が送られてきます。すべての女性に受診していただきたいですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

林田哲先生 トピックス 慶應技術大学病院乳腺班のご紹介

林田哲先生 トピックス 慶應技術大学病院乳腺班のご紹介

林田哲先生を中心とする慶應義塾大学病院乳腺外科は、伝統と革新、そして思いやりと温かさが特徴で、患者の乳がん克服に大きく寄与している。また、総合大学病院であるため、産科や形成外科など各科との連携も密に取れるので安心。※初診はかかりつけ医療機関の紹介による予約が必要
外来予約センター TEL:03-3353-1257

近藤信也 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

近藤信也 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん氏 × 歯科医師・日本重力医学財団理事長 近藤信也先生

噛み合わせで肩こり・腰痛が治る
肩こりや腰痛など姿勢病を治す 安価で簡単な画期的治療法

西川:肩こりや腰痛に悩む人は多いですが、近藤先生は、長年の研究によって、その原因は姿勢の歪みだと突き止め、噛み合わせを改善することで治す、安価で簡単な画期的治療法を確立されたと注目を集めておられますね。

近藤:地球上で二本足で歩行するのはヒトだけです。現代人はさまざまなストレスや不摂生、運動不足などによって姿勢が歪みがちです。肩こりや腰痛、四十肩・五十肩、偏頭痛、手足の痺れ、膝の痛みといった“姿勢病”を引き起こす人が少なくありません。これを防ぐには姿勢を歪ませないことです。

西川:現代の生活様式では、姿勢が悪くなり、猫背やストレートネックになりやすいですね。肩こりや腰痛がひどくなるとマッサージや整体、カイロプラクティックなどに行きますが、その時は気持ち良くても、すぐにまた痛くなってしまいます。

近藤:施術で体の歪みを正せても、間違った頭の位置は正せません。頭の位置を正さないで二本足で立って歩くと、重力とバランスをとるために骨盤・足裏がすぐに元の位置に移動するので、悪い姿勢に戻ってしまうからです。

西川:骨格構造の歪みは、肩こりや腰痛などのみならず、虫歯・歯周病の原因にもなると、近藤先生はご著書『歯医者のウソ』で解説されていますね。

近藤:ストレスで体が歪むと、骨盤・足裏が垂線からズレ、重力とバランスを取るため頭の位置もズレます。頭の位置はアゴの筋肉群が頭を前に引っぱり、首の後ろの筋肉群が頭を後ろに引っ張って調整しています。体が歪み、頭の位置がズレると、左右のアゴの筋肉が不均衡となり、噛み合わせがズレます。その結果、歯の溝が正しく噛み合わなくなり、特定の歯に強い力がかかって、それが虫歯や歯周病の原因にもなるのです。

西川:たいてい、虫歯や歯周病は痛くて耐えられなくなってから歯医者に駆け込んで治してもらうだけで、原因など考えていませんね。

近藤:歯科医師が歯学部で教わるのは虫歯と歯周病の治し方であって、その原因や理由については「歯ブラシや歯磨きの方法が悪いから」というだけです。でも、歯を磨かない人でも虫歯がない人はいるし、しっかり歯磨きをしていても歯周病になる人もいます。何事も元から断たないと本当の意味では治りません。

近藤信也 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

ボディラインを美しく整え 顔のリフトアップにも効果

西川:そこで近藤先生は、長年研究を重ねられ、重力の力により姿勢を正すことで、肩こりや腰痛などの“姿勢病”、虫歯や歯周病を根本から治す「重力医学」の理論を確立されたわけですね。自ら考案された革新的なマウスピース「Dr.Mouth」と、それを着けてゆっくり歩く「ジャイロウォーク」による治療法のメカニズムとは、どのようなものですか?

近藤:発想の原点は、幼児が成人より頭の比率が大きく重い上に、全身の筋肉も脆弱なのに、どうやって姿勢を保って二本足で歩くようになるのかに着目したことです。大人の永久歯と異なり、子どもの乳歯は噛み合う面が擦り減って平らになっています。その理由は、昼間でも歯ぎしりすることでアゴを左右に動かし、頭を正しい位置に修正し続け、そのまま歩くことで正しい姿勢を学ぶということです。姿勢の歪んだ大人にこのメカニズムを応用しようと考えました。

西川:子どもがアゴを左右に動かすことによって、二本足で歩くための姿勢を学習しているとは思いもよりませんでした。

近藤:しかし、大人になってさまざまな要因で骨格構造に歪みが生じると、頭の位置が変化し、永久歯列の噛み合わせがズレてしまいます。長年の悪習慣で体が覚えてしまった間違った姿勢をリセットしなければ、根本的な要因は解決できません。そのために、噛んだままアゴを水平方向に動かせるマウスピース「Dr.Mouth」をすることで、子どもの乳歯列の状態を人工的に作り出すのです。そして、アゴを左右に動かしながら、ゆっくり歩く「ジャイロウォーク」を朝晩5分ずつ行うことで、本来の均整の取れた姿勢、あるべき頭の形に戻していくのです。

西川:安価に簡単に、姿勢病や虫歯・歯周病の原因を断ち、ボディラインを美しく整え、顔のリフトアップにも効果があるとは朗報です!興味深いお話を、ありがとうございました。

姿勢を見ればすぐにわかる 患部と痛みの原因

西川:腰痛や頭痛で診察に来た方のどこが悪いのか、どのように対処すれば良いのかはすぐにわかるのですか?

近藤:はい。見ればすぐに原因が分かります。腰痛ではあるものの噛み合わせが良くて歯に問題がない人の場合は、腰をまっすぐ立たせる筋肉が衰えていることが多いです。その場合はジャイロウォークをすることで、筋肉のバランスを整えることで改善できます。そうではない場合は、医原病のことが多いですね。たとえば、下の奥歯が2本くらい虫歯になってそのまま放置してしまった場合、上の奥歯がしっかり噛めるようにと最大2mmくらい伸びてきます。それから歯医者で奥歯をもともとの形に戻した場合、健康なときとは噛み合わせたときの高さがズレてしまうんです。人間の顎は蝶番のように動くのではなくて、顎が一度外れてから動くという特殊な動き方をするのですが、その時に奥歯が先に当たるようになるということですね。そうなると、噛み合わせのバランスを取ろうと顎が上を向くようになり、身体に歪みが生じていきます。それを正常に戻すためには、下の歯の高さをもとの噛み合わせの高さに戻さなくてはいけません。最大で3mmくらい削ったこともあります。

西川:歯で3mmというと相当大きな治療ですよね。そんなにズレてしまうのは、多くの歯科医が虫歯の治療だけを行って噛み合わせの重要性を見落としているからなんでしょうか。

近藤:そうでしょうね。人間にはもともと正常に動くための仕組みが備わっていますから、歯が全部生えそろっている人はちゃんとした噛み合わせも自然に身につくようになっています。それを、人為的に変えてしまう。とくに審美歯科などで全部の歯の高さをそろえるといった無理ないじり方をすると、神経にも関わってくるような身体に大きな影響が出てしまうんです。

西川:お話しを聞いていると、改めて歯は大切なんだと感じます。雑誌「プレジデント」でも、後悔していることの第一位に「若いうちから歯を大切にしておけば良かった」ということでした。実際、歯が悪くなってうまく食事ができなくなると、身体への影響がすごく大きいんですね。人間に限らず、動物園のサル山でも、歯が悪くなったボス猿やクイーンはすぐに身体が弱ってしまい、ほかのサルに負けて追いやられてしまいます。

近藤:ただ、ひとつ言っておきたいのですが「噛み合わせを直せば身体の不調がすべて治る」というわけではありません。身体の歪みが原因で虫歯や歯周病になるという仕組みを踏まえて、その治し方を考えなければいけない。

西川:僕の知人に、インプラントによって頭痛がするようになったという人がいるのですが、そういった場合も噛み合わせは関係しているのですか?

近藤:はい。本来、歯と骨の間には歯根膜という柔らかい膜があって、多少の衝撃であればそこで吸収されるようになっています。ですが、インプラントでは歯と骨を直接癒着させることになるので、歯根膜が持っていた“あそび”の部分がなくなってしまうんです。そうすると、噛みあわせたときに少しでもズレがあると痛みになって現れてしまいます。そのような場合は、ミクロン単位で歯を削って、もともとの高さに調整することで対処できます。

西川:インプラントが悪いわけではないんですね。

近藤:そうですね。もとの噛み合わせをしっかり再現することと、歯根膜の代わりになる“あそび”の部分を用意することなど、これからの技術の進歩は必要だと思いますが、それ自体が悪いものではありません。

西川:非常にデリケートな器官であると同時に、歯と歯茎だけでなく人体のメカニズムについても知らなくてはしっかりした治療はできないんですね。

近藤:はい。たとえば、頭蓋骨は複数の骨が関節を持ってつながってできています。ご飯を食べるときに左側の歯で噛むとしたら、右側の歯は浮いているのが正しい顎の動き方なんです。そのとき、顎の関節が動かない、あるいは動かそうとしたときに痛むのが顎関節症です。顎が動かせなければ「側頭鱗」という骨を動かして食事をするようになります。そうなると偏頭痛の原因になったりもするんですね。側頭鱗も動かなければ、首の筋肉を動かすようになる。首が凝れば背中、腰と全身に影響が及びます。

西川:早めに診療を受けないと、大変なことになるんですね。

近藤:はい。ただ、たとえば徹夜の後で歯が浮いたような感じがあれば、その時点で身体の凝りをほぐしたり、泳いだり、ゆっくり歩いたりすることが大切です。早いタイミングで歪みをまっすぐにできれば、歯医者に行かなければいけないような痛みにはつながりません。

西川:なるほど。身体が発しているサインを見逃さないようにすることも大切なんですね。ありがとうございました。

近藤信也先生 トピックス -目からウロコの書『歯医者のウソ』-

近藤信也先生 トピックス -目からウロコの書『歯医者のウソ』-

実は、虫歯や歯周病は骨格構造病に分類され、体全体への影響を考えて治療しなければ、頭痛や肩痛、手足のしびれを引き起こす危険性が潜んでいる。噛み合わせの調整や幼児期のよちよち歩きを再現する「ジャイロウォーク」の実践で、体調の維持管理・老化防止・美容に寄与する重力医学がよくわかる目からウロコの書!
近藤信也先生著 幻冬舎新書 840円(税別)

水町重範 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

水町重範 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

「脳MRI健診」の提唱・創始者 水町重範 × 健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん

運転者の脳内出血による事故を防げ!
~安価になった「脳MRI健診」で早期発見・早期治療~
運転者の体調急変が原因の命を奪う大事故が多発

西川:近年、軽井沢スキーバス転落事故や大阪の暴走事故など運転者の体調の急激な変調によって数多くの人命が失われる大事故が多発しています。水町先生が早くから警鐘を鳴らしておられたことが現実になってしまいました。

水町:あってはならないことですね。こういった事故は「健康起因事故」と呼ばれますが、心筋梗塞などの心臓疾患、睡眠時無呼吸症候群、脳梗塞やクモ膜下出血など意識障害を伴う脳の出血性の病変が原因で起こるものです。特にクモ膜下出血は「気分が悪いからちょっと停車しよう」などと考える間もなく意識を失ってしまいます。その時、運転者本人が対処することはほとんど不可能です。

西川:国土交通省の統計でもバスやトラックなど事業用自動車が引き起こす重大事故のうち、3分の1強は運転者の脳疾患が原因になっています。

水町:クモ膜下出血の88%は脳内の動脈瘤の破裂が原因で起きています。ですから、運転者の脳動脈瘤の有無さえ調べられれば多くは未然に防げるんです。本来は免許を取得する人が全員、脳のMRI健診を受けるのがベストですが、まず運転を仕事にしている人に健診を受けてもらえるよう、「運転従事者脳MRI健診支援機構」を設立し、行政や企業に働きかけを始めたわけです。

水町重範 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

ハンドルを握る人の「脳MRI健診」を常識に!

西川:MRIによる本格的な脳の検診である「脳ドック」は以前からありましたが費用が高額なので運転の仕事に従事する人すべてが受けるのは非現実的でした。

水町:脳ドックを受診するには6~7万円はかかるので広く多くの方に受けてもらえるものではありませんでした。一方、「脳MRI健診」は脳動脈瘤の検査に絞っているので受診料も2万5千円ほどです。一度検査して動脈瘤があるとわかれば2回目からは経過観察として保険も適用されます。

西川:負担が軽減されますので、運転従事者は自分と家族のためにも、乗客の命を預かる身としても受けていただきたいですね。

水町:総務省の統計でも日本で運転を職業にしている人は330万人います。その方々の家族も含めて約1000万人もが運輸事業によって生活しているわけですから、国の基幹産業の一つだと言えます。ですので、「脳MRI検診」とは運転者自身の健康管理のみならず、社会全体のリスク回避でもあるわけです。

西川:運転従事者はクルマのみならず日本経済のハンドルも握っているわけですね。

水町:脳MRI検診推進議員連盟や医師会などの支援もあり、トラック・バス・タクシーの事業会社の中で運転者の検診を受けるところも増えています。しかし、採算が取れないと二の足を踏む企業も少なくありません。

西川:コスト競争が厳しいのはわかりますが、安全を軽視すれば必ずツケが回って来ます。運転者が健診を受けている会社を、利用者が選別して利用する時代が来るでしょう。

水町:健診を受けた事業者には「脳MRI健診推進事業者証」を、運転者には健診済証をお渡ししています。今後は、こういった健康起因事故の予防をはじめ「社会・環境医学」がますます重要になってきます。

西川:医療・政治・経済をはじめ、あらゆるセクターがタッグを組んで取り組むべき課題ですね。

◆社会問題化する「高齢プロドライバー」と定年のない「個人タクシー」

西川:「社会・環境医学」の視点から考えたときに、バスやタクシーの運転従事者の高齢化がますます進みつつあることは大きな問題ですね。近年、訪日外国人観光客の増加によってバスの需要が急激に伸び、人手不足のために高齢の運転従事者を雇うケースが増えています。現在、バスの運転手の平均年齢は、全産業より6歳も高く、60歳以上の割合が16.4%にのぼります。つまり、6人に1人が60歳以上で、さらに高齢化しつつあります。

水町:同様にタクシー運転手の高齢化も進んでいますが、特に心配なのは個人タクシーの運転手の高齢化です。法人のタクシー会社のサラリーマン運転手と異なり、彼らは個人事業主なので定年がないんです。しかも、高齢になると、道路事情から昼間は走りづらいため夜中に仕事をしている人が多いようです。昼夜が逆転した生活をすることで、ますます動脈硬化を助長しかねません。

西川:先生ご自身も、そういった個人タクシーの運転手の方を診察されたことがありますか?

水町:もちろんです。最近でも2015年の年末に「脳MRI検診」を受けて、お正月休みに入るギリギリに所見が出てきて、その結果を見て、すぐお薬をお渡しした患者がいました。年が明けて、初仕事から帰ってきたら足がもつれて玄関から上がれなくなりました。救急車を呼んで搬送されているときに、お渡していたお薬が見つかったらしく、そのまま脳外科に連れて行かれたんです。すぐに脳血栓の溶解をはじめて、10日くらいで退院されました。
また、他の個人タクシーの運転手の事例では、「脳MRI検診」の結果を見ると頭の血管がボロボロで、検査すると血糖値が400もあるとわかり、即、東京医大病院に入院することになった患者さんがいました。その方のお嬢さんがクリニックに来て言うんです。「これでようやくお父さんに仕事を辞めさせることができます」って。

西川:そういった個人タクシーの運転手の人にとっては、運転自体が、もはや仕事を超えて、ライフワークになってしまっているんですね。そうなると、認知症にでもならない限り、家族も無理に辞めさせるわけにも行きません。しかし、運転手が急に気を失ったらクルマは凶器と化します。ハンドルを握るからには、まず絶対に安全運転できることが前提ですからね。

水町:その通りです。個人タクシーの運転手の場合、クルマと運転が好きで仕事を続けられている場合が多いんです。その喜びを奪ってしまうことには胸が痛みますが、「社会・環境医学」の視点から、健康起因事故を予防するために社会にとって必要なことだと思い、心を鬼にして説得しています。

◆40歳過ぎたら、乗るなら「脳MRI」受診、受診しないなら乗るな!

西川:先生は「運転従事者脳MRI健診支援機構」を関係者とともに設立され、まずはバスやトラックやタクシーなどの運転を仕事とする人全員が検診を受けるよう社会に働きかけておられますが、運転を仕事にしている人のみならず、ハンドルを握る人は誰しも、「脳MRI検診」か「脳ドック」を受診した方がいいですね?

水町:当然のことです。いかに健康に自信があっても、病気をしたことがなくても、40歳以上の運転をする人には基本的に受診していただきたいです。本人にまったく自覚症状がなくとも、急に動脈瘤が破裂することもあり得ます。しかし、「脳MRI検診」を受診すれば、そういったケースは限りなくゼロに近づきます。また、脳の血管が成長するにつれて脳動脈瘤ができることが先天的に決まっている人もいます。そういう方も、早めに脳動脈瘤を発見し、経過を診て行けば危険性を低下させることも可能でしょう。

西川:運転するときには、自分だけでなく、家族や友人を乗せる機会もあるでしょうし、急に意識を失って事故を起こせば、数多くの罪のない人を巻き添えにしかねません。ハンドルを握るならば、「脳MRI検診」を受けることを常識にして行かねばなりませんね。私も、毎年、受診するよう心がけています。

水町:そうですね。いずれは、運転免許を所持する人全員が受けるようになってほしいと思います。その前に、まずは運転を仕事にしている人全員が検診を受する世の中にして行かねばなりません。

西川:「脳MRI検診」や「脳ドック」は、どこで受診すればよいですか?

水町:「運転従事者脳MRI健診支援機構」のホームページを見ていただければ、私どもの「水町エム・アールクリニック」をはじめ、全国の受診できる医療機関をご紹介しています。あるいは、脳神経外科、神経外科のある病院やクリニックに相談すれば受診できるところを教えてくれると思います。

西川:「乗るなら飲むな、飲むなら乗るな」は当たり前ですが、「乗るなら(脳MRI)受診、受診しないなら乗るな」を当たり前の世の中にして行かねばなりませんね。私たち一人一人が「社会・環境医学」の視点を持って、「健康起因事故」をみんなで予防して行くことが大切だとわかりました。ありがとうございました。

水町重範先生 トピックス -水町エム・アールクリニックで「脳MRI検診」を受けよう!-

水町重範先生 トピックス -水町エム・アールクリニックで「脳MRI検診」を受けよう!-

ドライバーの脳動脈瘤の有無を調べる「脳MRI検診」、本格的な「脳ドック」をはじめ全身のMRI、CTの撮影・診断ができる。慶應義塾大学病院脳神経外科の優れた画像診断医師によるバックアップ体制により高い信頼性が担保されている。
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-1-16 TEL:03‐3404-1030(要予約)

渋谷健司 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

渋谷健司 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん × 公衆衛生の世界的リーダー渋谷健司

家族・職場・地域で健康づくり
~“公衆衛生”が健康寿命をのばす!~
対症療法のCureより日常的なCareが大切

西川:渋谷先生がおっしゃっている“公衆衛生”とは、私たちの健康と医療は世の中のことすべてとつながっているという考え方ですね。

渋谷:その通り!健康づくりも医療も病院やクリニックがあれば成り立つのではなく、地域みんなで創り上げて行くことが大切です。対症療法でCure(治療)するだけでなく、日常的にどのようにCareして行くかです。地域の皆さんが健康でなければ街は元気に成り得ません。りゅうじんさんが手掛けているまちづくりの真ん中に医療があるのです。認知症の患者が増えていますが、本人や家族や医師だけでなく、地域全体で、日々、サポートして行くことが大切になって来ます。

西川:なるほど、先生が座長としてまとめられた2035年に向けた「保健医療2035」のビジョンに描かれているようにですね。

渋谷:現在の制度を無理に維持しようとすれば、一人一人の負担を上げて給付が下がるという暗い話になりがちです。しかし、20年後を見すえて将来のあるべき姿を考えた場合、どのような手を打つべきかという今を生きる私たち自身へのメッセージです。

渋谷健司 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

日常的に相談できるかかりつけ医を持とう!

西川:日常的に相談できる「かかりつけ医」「かかりつけ薬剤師」を持つことの重要性も「保健医療2035」で提唱しておられますね。

渋谷:近年、病気を患った人の中には、あちらこちらの病院でもらった薬を飲み過ぎて、結果的に体を悪くしているケースも少なくないんです。

西川:体調を崩すまで病院にほとんど行かず、病気になったら今度はいくつもの病院に行き、薬を飲み過ぎる極端な人が跡を絶ちません。

渋谷:最近も5カ所の医療施設からもらった15種類もの薬を飲んだことが原因で意識障害に陥り救急搬送された人がいました。必要なものだけにすると運良く2日で回復しましたが、薬の飲み過ぎには注意が必要です。

西川:心配性で病院に行くのが怖くて健康診断も受けない人が、病気になると心配になって逆にやり過ぎてしまうんですね。

渋谷:毎年、健康診断を受診している人でも、「タバコをやめなさい」「太っているから運動しなさい」と注意されても、発症して日常生活に支障を来さない限り、なかなか変わりません。本人だけでは生活習慣は簡単には改善しづらいものです。健康とは家庭や働き方、地域など周囲からの影響が大きいのです。

西川:一人一人の健康は、家族、職場、地域のみんなで守って行くしかありませんね。首都圏は一人当たりの医師の数が少ないことも気がかりです。

渋谷:そうですね。しかし、医師がすべてを担うのではなく看護師や薬剤師もいっしょにサポートしています。健康づくりのために、ぜひ、かかりつけ医やかかりつけ薬剤師を持っていただきたいです。また、生活習慣や働き方を見直すことこそが健康につながります。家族や職場の仲間でお互いの健康を意識し合うことが大切です。

西川:日本は寿命も健康寿命も世界のトップレベルですが、2つの差は男女ともに約10年もあります。寝たきりや認知症になって過ごす時間を縮めるにはどうすれば良いのでしょう?

渋谷:まず一人一人が自分の健康は自分で守ることが大切です。しかし、個人と医療関係者だけでは守れません。人によって家族によって仕事によって地域によって状況は異なります。家族は家族、職場は職場、地域は地域、みんなで健康づくりの仕組みを作って行きましょう!

西川:まさに“公衆衛生”こそが健康寿命をのばすカギなんですね。


西川:渋谷先生は「保健医療2035」の中で、人口減少と超高齢社会に向けて、地域における医療制度のあり方自体が変わって行くべきだと指摘しておられますね。

渋谷:もはや国が一律にどの地域でも同じ医療を提供すべき時代ではありません。今後は、全国一律ではなく、横浜市ならば横浜市、あざみ野ならばあざみ野における、おのおのの地域のニーズに合わせた医療に変わって行くべきですし、行かざるを得ません。

西川:実際、地域によってかなり住民の特性やライフスタイルも異なりますからね。例えば、運動に関してでも、大都市部に住んでいる人たちは移動に鉄道を利用することが多いので、頻繁に駅で階段を昇り降りしますが、地方では一人が一台ずつ自分のクルマを持つ車社会でほとんど歩きません。また、食事に関しては、塩分の摂取量ひとつ取っても地域によって差があります。

渋谷:長野県では県を挙げて減塩運動を実施したことで、寿命も健康寿命も延伸しましたね。

西川:昔から医食同源と言われますが、今でも食に関する地域差は厳然と存在します。和食が世界遺産に登録されましたが、伝統的な和食はほぼパーフェクトに近いほど栄養バランスは良いものの、塩分が多いのが玉に傷ですね。

渋谷:カロリーも低いし、野菜もたくさん摂れますが、塩分の摂り過ぎになる恐れがあります。また、フルーツやナッツ類も少ないですし、偏っている点もあります。それから、意外に知られていないのですが、実は和食には砂糖が調味料として相当に使われているんです。

西川:和食の懐石料理などにも砂糖が結構使われているらしいですね。太らないし健康にいいと思って和食中心にしていても、知らない内に糖分の摂り過ぎになっている可能性もあります。和食は、本来、砂糖を使わなくても、昆布とかカツオ節とか旨みを出す方法は他にもあるわけですからね。

渋谷:最近は以前より減って来ているとは思いますが、それでもかなり和食には砂糖が使われています。今やフランス料理でもカツオ節を使ったりしますし、そもそもフランス料理やイタリア料理は、あまり砂糖を料理に使いません。

西川:それに、日本では毎日のように、テレビやネットにスイーツの情報があふれかえり、お店には行列ができています。「スイーツは別腹」などと言って、男性も女性も砂糖の過剰摂取の危険性がほとんど認識されていません。糖分は肌を糖化させ、シワを刻み込むお肌の大敵でもありますからね。

渋谷:イギリスでは砂糖の過剰摂取がホットトピックになっています。大英帝国勲章も受勲しているセレブシェフのジェイミー・オリヴァーらが中心になって、「砂糖は危険だ!」「低脂肪でも砂糖が大量に入っている食事は健康に良くない」と訴えています。

西川:塩も砂糖も精製した白い粉末は、もともと自然界には存在しない工業製品ですからね。

渋谷:それから、日本のもう一つの重要な課題はタバコです。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、健康作りの象徴として、「タバコ・フリー・オリンピック」を目指しているんですが、まだまだ浸透していません。

西川:あざみ野も含めて横浜市、神奈川県はタバコによる健康被害に関する住民の意識が高く、規制も進んでいます。
横浜市内は全域ポイ捨て禁止で、違反すると2万円以下の罰金を科される場合があります。
また、条例で定められた、主要駅周辺エリアを中心とする「喫煙禁止地区」(横浜駅周辺、みなとみらい21地区、関内地区、鶴見駅周辺、東神奈川駅周辺、仲木戸駅周辺、新横浜駅周辺)では路上での喫煙も禁止です。
それに、神奈川県は全域で、 受動喫煙による健康への悪影響から県民を守るために、学校、病院、商店、官公庁施設などは禁煙ですし、飲食店、ホテルなども禁煙または分煙が義務付けられています。

渋谷:横浜市、神奈川県の取り組みを東京都はもちろん全国に広げて行かねばなりませんね。「タバコ・フリー・オリンピックがモスクワや北京でできて、何で東京でできないんだ!」という風潮が盛り上がれば東京も変わるでしょう。

西川:できないはずがありませんね。ただ一方で、アメリカでマフィアがはびこった禁酒法時代のように過度にシャットアウトしようとすると、地下で広がったりレベルの低いものが出回ってより危険な事態に陥り兼ねません。

渋谷:おっしゃる通りで、禁止ではなく、選択肢を提示して行くことが大切ですね。そして、一人一人が意識の部分でより健康な方向に向かうように環境づくりをして行きたいものです。

西川:食事も運動も禁煙も、結局、健康づくりは日常の生活習慣の積み重ねですね。人間の行動にも慣性の法則があって、良い習慣をつければ良い方向に向かいますし、その逆もある。

渋谷:そうです。でも何でも楽しくないと続きません。だからこそ、家族や地域の友達や職場の仲間同士でお互いの健康を意識し合うことが大切なんです。みんなで手を携えて健康習慣を身に付けて行きたいですね!

西川:渋谷先生からお話をうかがって、公衆衛生とは、そして、健康づくりとは、自分自身のハートと、家族や地域や職場のみんなのハートをつないで、お互いの思いやりの気持ちを通わせることなんだなとわかりました。ありがとうございました!

渋谷健司先生 トピックス

渋谷健司先生 トピックス

「JIGH」国際保健フォーラムで伊勢志摩サミットに向け提言
渋谷先生が理事長を務める医療領域の問題解決に取り組むシンクタンク「JIGH」は、国際ラウンドテーブル「GGG+フォーラム2016」を共催。G7伊勢志摩サミットに向け、グローバルヘルスの課題などについて議論し、日本がリーダーシップを発揮することで合意した。

浦上克哉 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

浦上克哉 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

認知症研究の第一人者 浦上克哉 × 健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん

認知症は“怖い病気”ではない!
~正しい理解と早期発見が大切~
65歳以上の高齢者の3人に1人が認知症!

西川:浦上先生が取り組んでおられる認知症は超高齢社会に突入した日本にとって最大の課題です。家庭にも地域にも大きな負担を及ぼしています。患者やその前段階の人の数はどれくらいですか?

浦上:認知症と診断された人が462万人。その予備軍が400万人。合計862万人です。65歳以上の高齢者人口の28%に当たります。

西川:つまり、高齢者の3人に1人が何らかの認知障害を持っているということですね!

浦上:他の病気と同じように患者より予備軍の方が少ないはずがありませんので、実際はもっと多いでしょう。

西川:一言で認知症と呼んでいますが様々なタイプがあるのですね。

浦上:「アルツハイマーと認知症は別ですか?」と聞かれることがよくありますが、アルツハイマー型も認知症の一つで全体の約6割を占めます。他にも、血管性認知症、レビー小体型、前頭側頭型があり、認知機能が低下する病気を総称して認知症と呼んでいます。

アロマテラピーが症状改善に効果あり

西川:認知症の症状が悪化すると、家族さえわからなくなったり、自宅の場所も忘れてしまう場合がありますね。 “あらゆる知が壊れていく病気”と呼ばれています。原因が解明されておらず、徘徊や暴力といった症状が現れることもあり、一たびかかると治らない恐ろしい病気だというイメージがあります。

浦上:認知症は誤解が多い病気なんです。“怖い病気”と言われますが、直接死を招くわけではありませんし、症状の進行もとてもおだやかです。徘徊や暴力といった症状は、ガンでいえば末期の状態です。近年は、治療法も確立され、早期に発見して薬を飲めば、そのような状態になることはありません。

西川:そううかがって少し安心しました。早期発見のためには、周囲の家族や友人はどんな点に気を付ければ良いですか?

浦上:日頃から行動を観察し、本人の変化に早く気付くことが大切です。初期症状としては、時間や曜日を何度も尋ねたり、外出がイヤになったり、腐ったモノを食べてしまうことなどが挙げられます。

西川:もの忘れはよく知られた症状ですが、腐ったモノを食べるのはなぜですか?

浦上:認知症は、記憶障害より先に、嗅覚障害が起きるからです。しかし、嗅神経は再生能力が高いため、メディカル・アロマテラピーによる予防法や治療法が確立されています。

西川:アロマが認知症に効くというのは意外です。しかも、アロマなら日常生活に取り入れやすいですね。どのように利用すれば良いのですか?

浦上:昼間と夜寝る前で別々の香りが効果的です。昼間はローズマリー・カンファーとレモンで認知症を改善し、夜は真正ラベンダーとスイートオレンジでリラックスします。

西川:どちらの香りも頭がスッキリしそうですね。認知症にならないためには、どんな生活習慣を心がければ良いのでしょうか?

浦上:「コミュニケーション」「運動」「知的活動」の3つが大切です。普段から人と関わり、ウォーキングや水泳など有酸素運動を行ってください。頭を使い手を動かすことも習慣づけると良いですよ。

西川:やはり、日々の生活習慣が大切なのだとわかりました。自分自身と家族で毎日の生活に気を付けていれば、認知症など怖るるに足らずですね!

浦上:認知症の早期発見のためには、家族が最初の診断に付き添って来られると、普段どんな生活をしているかがわかって、医師が正しい診断をしやすくなります。認知症の症状のある人は、病気だと思われたくないという気持ちから、思い出したフリをして取りつくろったりすることがあるんです。

西川:そのためにも、周囲が気づいてあげることが大切なのですね。早期発見で治療もラクになり、症状もおだやかになるのは、本人のみならず、家族も大いに助かります。ところで、年を取ると認知症でなくてもモノ忘れしやすくなりますが、認知症かそうでないかはどこで判断すれば良いのですか?

浦上:通常のモノ忘れが内容の一部を忘れてしまうのに対して、認知症は内容自体を忘れてしまいます。例えば、夕食の献立のうち、1つを忘れてしまうのが通常のモノ忘れ、夕食を食べたこと自体を忘れてしまうのが認知症なのです。

西川:なるほど。それは忘れ方のレベルがまったく違いますね。「ウチの嫁はごはんを食べさせてくれない」などと近所の人にふれまわるおばあちゃんの話を聞きますが、それは認知症によるものなのですね。

浦上:はい。認知症特有の言葉や行動を知れば、病気がそうさせているのだと納得できるものです。やさしさと思いやりを持って接すれば、症状の悪化を抑えることもできます。

西川:他にはどんな特有の症状がありますか?

浦上:料理を作っていたのを途中で投げ出してしまったり、外出するのがイヤになるといったことがあります。それは料理の手順を忘れてしまったり、外出の際に途中でモノ忘れしたらどうしようと思うことから来ているのです。

西川:「認知症になったらイヤなことを忘れられるから気がラクでいいね」などと言う人もいますが、そんなことはありませんね。

浦上:その通りです。認知症はイヤなことを忘れるのではなく、大切なことまで忘れてしまうため、本人にとってもツライのです。

西川:当事者の立場に立った対応が必要なのですね。ところで、日常の食生活の中で認知症を予防するために、どんな点に気を付ければよいですか?

浦上:マスコミでこんな食品がいいというと、その食品ばかりを一生懸命食べる人がいます。その食品の成分が認知症を改善するという短期的なデータが出ていたとしても、長期的なエビデンスは得られていないものがほとんどです。また、成分が優れているからといって、日本人の体質やライフスタイルに合っているのかどうかの検証も必要です。ですから、一つの食品に頼るのではなく、バランスの取れた食事が何よりも重要です。

西川:たしかにテレビなどで「これがいい!」と言われた食材に飛び付いて、そればかり食べるのはよくありませんね。認知症は、個人や家庭での対策も重要ですが、超高齢社会の現在、官民を挙げた対策が必要でしょう。

浦上:認知症の問題は、市町村ごとで各地域によって実情が違いますから、自治体ごとの取り組みが大切になります。

西川:各地域における取り組みには、どのような事例がありますか?

浦上:鳥取県の琴浦町では、2004年から、65歳以上の高齢者を対象に、私が開発したタッチパネル式コンピュータによる「もの忘れスクリーニング検査」を行っています。そこで、得点の低かった人には、認知症予防教室を受ける対策が整っており、認知症の早期発見と予防に役立てられています。

西川:10年以上も前から取り組んでいる自治体があるんですね。そういった取り組みは各地で増加傾向にあるのでしょうか?

浦上:近年は、取り組みの重要性を認識した市町村が増えています。神奈川県でもいくつかの市町村から講師にお招きいただいています。

西川:そういった仕組み作りに積極的に取り組んで、個人も家庭も自治体も、「認知症なんて怖くない!」と言えるようにして行かねばなりませんね。浦上先生、誰しもが知っておくべき認知症に関する大切なことを、わかりやすくお教えいただき、ありがとうございました!

浦上克哉先生 トピックス

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対馬 ルリ子 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

対馬 ルリ子 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

女性トータル医療のパイオニア 対馬ルリ子 × 健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん

女性の幸せは自分の体を知ることから!
~体の内側にもっと目を向けてみよう~
ライフスタイルの変化が年代別の健康リスクをもたらす

西川:対馬先生は、女性の体をトータルにサポートする医療を提供しておられますが、近年、女性のライフスタイルが大きく変化する中で、どんな現象が起きていますか?

対馬:初潮年齢が早まり、出産年齢は遅くなっています。また、寿命が延びたことにより、更年期が人生のほぼ真ん中になりました。

西川:女性の社会進出にともなって、高齢出産のリスクや、産みたいときに産めないといった問題が出てきていますね。

対馬:日本は世界一の高齢出産国です。平均初産年齢が30歳を超えているのは日本だけです。最近の女性は見た目が若いので50歳くらいでも子どもが産めると思いがちです。しかし実際は卵巣の中の卵子が1万個を切る42歳頃には妊娠が難しくなります。

西川:いざ子どもが欲しいと思ったときにはもうどうにもならない。そういった情報は若い頃から周知すべきですね。

対馬:10~20代から自分の体について知るべきです。最近の若い女性は痩せている人が多いですが、体脂肪が減ると無月経になりがちです。月経が無くてラクなどと思ってはいけません。2年以上、無月経だと排卵が戻る確率は極めて低く、妊娠できない体になる可能性もあります。

西川:フランスでは痩せすぎモデルを規制し始めましたが、日本でも若い人の極端なダイエットは問題ですね。もやしとゼリー飲料しか食べないというタレントさえいます。一方、40代以降の更年期を迎える女性は、どういった点に気を付けるべきですか?

対馬:女性の体は女性ホルモンによって病気から守られています。ところが、閉経後は女性ホルモンがほぼゼロになりますので急激に疾患が増えます。閉経は50歳前後にやってきますから、余命までの約40年、女性ホルモンなしで、どう過ごすかが課題です。

自分の体をもっと知り生き方を考えよう!

西川:女性ホルモンがゼロになると、どんな疾患にかかりやすくなるのでしょう?

対馬:脳や骨・関節の機能低下が顕著になります。それにより、アルツハイマーや骨粗しょう症、関節の病気にかかりやすくなります。

西川:女性と男性はホルモンの性質が異なるので疾患にも性差があるのですね。

対馬:日本の女性は、40歳を過ぎて「産めるだろうか」、50歳になって「更年期がツライ」、70歳で骨折して「どう治せば」と焦る人が多い。でも本当はトラブルが起きる前が大切なんです。

西川:対処療法ではなく未病の段階から予防すべきなんですね。そのためにはどういった心がまえが必要なのでしょうか?

対馬:自分の体をもっと知り、生き方について考えるべきです。欧米の女性は若い頃からライフプランを主体的に決めます。私は20歳になる前に、将来は医師になり仕事を続け、子どもを産み育てると決めました。もちろん途中で変更しても良いのです。常に生き方を考え、決めるべきです。

西川:なるほど。生き方を決める意志こそが大切なんですね。

対馬:誰しも自分の外側にベクトルを向けがちですが、実は体の内側に目を向けるとわかってくることが多いのです。そのために、体のことを何でも相談できる、かかりつけ医を持ち定期的に検診を受けてみてください。すると、年代ごとのトラブルも未然に防ぎ、自分が生きたいように生きられますよ!

西川:対馬先生は医師としてご活躍で、さまざまな社会的活動にも参画され、お子様も産み育てておられます。先生のように公私に充実した人生を送る女性が増えれば、日本はもっと元気になるに違いありません。

対馬:そうですね、主体的に生きることは、男性よりも長生きする女性にとっては大事なことです。男性は、がんなど大病をしてポックリ逝ってしまう分、寿命が短くなっています。それに対して女性は、大病は少ないものの、グズグズとした疾患が長引き、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)が下がることが懸念されます。

西川:そうですね。骨粗鬆症が原因で骨折し、寝たきりになってしまうと、本人も家族もQOLが大きく低下してしまいます。

対馬:男性ホルモンは、運動機能を発達させ、骨や筋肉をかたちづくる働きがありますが、女性ホルモンは、やわらかさをつくるので、骨や関節が早く弱くなりやすいのです。そこが、男性と女性の性差になっています。そうした男女の疾患の性差も考えないと、自分が何を予防したらいいのかわからなくなってしまいます。

西川:疾患に大きな性差があるとは、一般的になかなか考え及びませんね。 でも、それによって予防法が異なるとすれば知っておくべきですね。

対馬:例えば、主要な死因別の年齢死亡率を見ると、悪性新生物(がん)は男性が女性の2倍。心疾患と脳疾患、脳神経疾患が女性の1.8倍など、男性の生活習慣の悪さが不利に働いています。ですから、男性は「運動して節食してタバコをやめなさい」と言われるわけです。それに対して女性は、女性ホルモンが優位に働いて生命を守っているので、若い年代にはこうした疾患が少ないのです。

西川:若い女性が、中高年の男性と同じように「運動して節食」と考え過ぎると、若年層の痩せすぎのような問題も起こってくるのですね。

対馬:若い女性の場合は、最近のライフスタイルの変化によって、乳房や子宮、卵巣の疾患がものすごい勢いで増えています。この10~20年で、乳がんは驚くほど増えていますし、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮体がん、卵巣がんも増えています。

西川:それは気を付けなくてはいけませんね。早く気付くためには定期的に検診に行く必要がありますね。

対馬:その通りです。日本の女性は35歳でも検診に行ったことすらない人も非常に多いです。日本も欧米も、女性が教育を受け、キャリアを持つようになったという点では同じですが、欧米の女性は早くから、かかりつけ医を持って検診に行っています。それに対して、日本の女性は自分の体のことを知らな過ぎます。

西川:日本の女性はキャリアを築いても、中身はお嬢さんのままの人が多いのかも知れません。40歳を過ぎて子どもが産めないと気づいても医学的に致し方ないでしょう。

対馬:はい、どんなにがんばっても閉経年齢は変わりませんから、子どもを産みたい人は、妊娠する能力のあるうちに産まなければなりません。日本は、戦後、経済的に豊かになって教育を受けたり、仕事をしたりできるようになって、結婚年齢も初産年齢も高くなりました。可能性が広がるという点では良いことなのですが、出産は後にずらせるといっても限界があります。

西川:日本の女性は自分の体のことをもっと知らなくてはなりませんね。

対馬:はい。女性は元々ホルモンの変動によって自律神経や感情、免疫が変動しやすい分、病気になりやすい面もあります。また、2種類のホルモンが変動するというのも非常に大きな性差です。男性ホルモンは、1種類がコンスタントに出ているだけなので、ストレスや働きすぎ、生活習慣による疲労があるだけですが、女性の場合は、月経周期によってホルモンが変動するのです。

西川:月経前にはイライラしたりするのはそのためですね。男性は身体的にはわからないので頭で理解する必要があります。

対馬:私は、2001年から、産婦人科だけでなく、女性をトータルにみた女性医療をやりたいと、アメリカ・コロンビア大学の性差医療に携わるマリアンヌ・レガト先生を訪ねました。そのとき、トータルな視点から見た女性医療にとって大事なことは何かと聞くと、返ってきた答えは、「年齢」でした。

西川:それは、なぜですか?

対馬:女性は50歳前後まで月経があり、それによって守られているのですが、それ以降は女性ホルモンがなくなるので守られなくなるのです。なぜ、50歳前後かというと、卵巣寿命が50歳前後なのです。

西川:私の専門はマーケティングですが、今年から日本の女性の2人に1人は50歳以上になると言われています。50歳になって、女性ホルモンが急激になくなった後、女性がどう生きるかは医療のみならず、日本社会全体の課題です。

対馬:もともとみんな、親から引き継いだ遺伝子的に弱いところがあります。女性ホルモンに守られているうちは、あまり表に出てこないんですが、閉経後にそれが顕在化します。例えば、高血圧や糖尿病などです。それらがなくても、寝たきりやアルツハイマーで介護や医療の面倒をみてもらわずに済む方法も考えなくてはなりません。女性は実際の寿命と健康寿命のギャップが13年もありますが、少しでもその差を短くするために、戦略的に健康を維持する必要があります。

西川:そのためには、かかりつけ医を探すべきなんですね。日本は、医師にかかるというと、病気になってから行くというイメージがありますが、どうしたらよいのでしょうか?

対馬:病気になってから行くのは、健康保険を使った医療です。そうではなく、美容室に行く感覚で、検診や健康相談にのってくれるクリニックや医師を見つけなくてはなりません。そこできちんと予防的な体の相談をしましょうというわけです。

西川:なるほど。かかりつけ医というのは、病気になってからではなく、予防的な相談ができる先生のことなのですね。

対馬:諸外国で実践されているヘルスケアですね。病気になってからかかる専門医ではなく、普段から相談に行けるヘルスケアアドバイザーです。現在、私どもで、ヘルスケアアドバイザーの養成を始めたところです。産婦人科も、通常の産婦人科医だと、不妊治療だけ、お産だけ、手術だけとそれぞれの専門に分かれてしまいますが、そうではなく、トータルで診られる人材を育てようとしています。

西川:対馬先生が中心に進めておられる女性医療ネットワークで行っておられるのですか?

対馬:はい。15年程前から、政府にも働きかけています。WHO(世界保健機関)に、「ライフ・スキル・サポート」というプロジェクトがあり、幼い頃から老年期まで女性の健康特性はつながっているという視点から、啓発教育や検診をやっていこうという考えがあります。それにしたがって、トータルな女性医療を診られる医師を都道府県に1~2人は配置できるように取り組んでいます。東京のほか、横浜、札幌、富山でも、私たちの仲間が活躍しています。

西川:それは、ぜひ国でもやってもらいたいものですね。

対馬:私が医師になって 30年経ちますが、本当に日本はその点が変わっていません。女性の社会進出などライフスタイルの変化に合わせて、自分の健康のことを知らなくてはなりません。特に更年期は、体の変化以外に、親の介護を抱える大変な時期なのです。

西川:若いうちから自分の体のことを知って、先生のように先にライフプランを決めるのが良いのですね。

対馬:もちろん、一度決めたプランを変更していけないわけではありません。変更しても構いませんから、まずは自分で決めることです。日本の女性は、言われたことは一生懸命にやりますが、自己決定力がありません。私のクリニックに来られるかなり大人の女性でも、「主人に相談して決めます」という人もいます。そうではなく、自ら決めて実践する習慣をつけてください。

西川:たしかに、何事も習慣ですからね。

対馬:はい。すべて健康に関わることは習慣です。食事や運動の習慣もそうですが、検診を受けて自分の将来を決めることも習慣です。そのために私たちがいます。いわば、私たち医師は、使いこなしてもらいたい道具なのです。

西川:女性の体を美しく花を咲かせ実を結ぶ木にたとえるならば、先生方は庭師のような存在かも知れませんね。

対馬:その通りです。女性の体は、植物のようなものだとつくづく思います。きちんと日に当ててあげたり、お水をあげたりすると、だんだん肌ツヤもよくなって、いきいきとしてきます。そうして、自分らしい太い幹になってゆくのです。

西川:先生がおっしゃられるように、自分の体を知り、自分で決められる女性を日本にどんどん増やして行かねばなりませんね。対馬先生、本日は貴重なお話をありがとうございました!

対馬ルリ子さん トピックス

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白澤 卓二 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

白澤 卓二 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

日本における加齢制御医学の第一人者 白澤卓二 × 健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん

日本の伝統食でアンチエイジング
~世界が認める日本食に立ち返ろう!~

日本における加齢制御医学の第一人者 白澤卓二先生と、「あざみ野STYLE」 応援団長で厚生労働省の健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじんさんによる健康に関するスペシャルトーク!

アメリカ政府が
元禄以前の日本食を推奨!?

西川:白澤先生はアンチエイジングに関して加齢に抗するのではなく加齢を制御するという視点を提唱された先駆者ですね。

白澤:アメリカから入ってきた当初は若返りという考え方だけでしたが、今後、高齢化が進む日本では、加齢のプロセスを制御して若々しさを保つという理論の方が重要だと2000年頃に考え至りました。

西川:アンチエイジングという言葉がまだ一般化していない頃ですね。

白澤:当時、私は65歳以上の患者向けの病院に隣接した研究所で働いていました。そこで実感したのは、病気の数が少ないほど元気でいられるし、生活の質も高いということです。若くいられるかどうかは、高齢期の病気を予防できるかどうかにかかっています。つまり、アンチエイジングとは予防医学だという位置づけです。

西川:先生はココナッツオイルによる認知症の改善効果をいち早く発信されるなど病気を予防するための食の重要性を訴えておられますが、最も大切なことは何でしょう?

白澤:日本古来の食事に戻すことが大切です。戦後、日本人の食事の質はガラッと変わってしまいました。

西川:急速に食生活の欧米化が進み、肉やパンを多く食べるようになりましたね。

白澤:逆にアメリカでは1970年代に上院特別委員会のマクガバンレポートが、ガン、心臓病、脳卒中など生活習慣病の原因は食にあり、肉を減らし野菜を増やし、塩分や精製した砂糖、穀物を減らすべきだと警鐘を鳴らしました。理想は日本の江戸時代の元禄以前の食事だと提唱しています。

経済再生のみならず
食文化を再生すべき

西川:和食が世界無形文化遺産に登録されましたが、私たち自身が野菜や豆、キノコや海藻なども摂取できる日本の食の素晴らしさを忘れてしまっていますね。

白澤:現在の日本の農業は農薬と化学肥料を使い、1つの畑で1種類の野菜だけを作るようになって栄養価が下がっています。そうした農業をやめて、土も種も元に戻すべきなのです。

西川:同じ野菜を大量に作れても栄養価が低くては意味がありませんね。でも、実際のところ無農薬栽培は難しくないですか?

白澤:いえ、江戸時代は流通がなく、5キロ圏内で採れた作物を食べていましたが、風土病もありませんでした。日本の土には無農薬でも病気を防ぐ力があったんです。

西川:もし土を元に戻すことができれば有機栽培も可能だということですね。野菜はどのように食べればよいでしょうか?

白澤:野菜の生活習慣病を予防する効果は絶大です。仮に微量の農薬に汚染されてもメリットの方が大きいです。多品種の野菜をたくさん食べることが重要です。

西川:主食は何を食べるべきですか?昔はパンなどなく玄米だったわけですが。

白澤:日本人が現在食べているパンはアメリカやカナダ産の小麦から作られています。日本では学校給食でパンが出されていますが、アメリカが和食を推奨しているのと真逆です。

西川:日本経済の再生も大切ですが、日本の食文化を再生すべきですね。

白澤:私たちは自国の食文化を失ってしまったんです。今、食べているものは加工品など1960年以降に出てきたものばかりです。昔の食を取り戻さねばなりません。

西川:世界中が評価する日本の伝統食に立ち返り、食文化のDNAを絶やさず受け継ぐことがアンチエイジングにとって最も重要なことなのですね。

白澤:歴史を持っている国というのは文化の真ん中に食があって、それが柱になっています。フランスにはフレンチ料理の文化があって、イタリアだったらイタリア料理、スペインだったらスペイン料理の文化があります。それらの国では今でも50年前とほとんど同じものを食べています。それが今の日本ではファーストフードや加工品ばかりになっている。何が日本食かを、今一度、定義すべきです。

西川:現在、日本人の多くが食べているからといって、本来、ファーストフードが日本食ではあるはずもありませんし、今食べられているパンは明らかに戦後に生まれた食ですね。

白澤:特に日本のパンに使われている北米産の小麦は、1960年から80年の間に品種改良や精製が進んで別物になりました。フランスなどでは今も昔のやり方でパンを焼き、1日3回、パンはパン屋さんで買うものと決まっています。当然、時間が経てばカチカチになります。パンがふわふわしてビニール袋に入って流通するものと考えられている製パンなどというものがあるのは日本だけです。

西川:明治時代、大都市部で脚気が大流行し、多くの人が命を落とした原因は、玄米ではなく精製した白米ばかりを食べたからです。小麦粉も精製して真っ白な粉だけで作ったふわふわのパンだけを食べれば良いはずはないでしょうね。

白澤:精製が進んだ白米や小麦を食べると血糖値が急上昇し、それを抑えようとインスリンが急激に分泌されるので、私たちの体は悲鳴を上げています。

西川:戦後、小麦粉をはじめ外国産の食材がどんどん入って来て、日本の食を根本的に変容させてしまいました。食は文化であり、私たちの体をつくるわけですから、すべてをビジネスの尺度だけで考えるととんでもないことになりかねませんね。

白澤:世界には、外来種と化学肥料と農薬をセットにして売っている会社があります。その会社は、世界戦略で農薬まみれの農業を支配し、日本はその犠牲になっているといえます。この会社はBCGやダイオキシン、アスパルテームを創り出した会社ですが、それらはすべて発売禁止になっています。完全にケミカルプラントなのですが、ホームページを見ると非常にエコな農業をやっていると自社を定義しています。

西川:おそろしいですね。TPPによって、そういったマイナスが助長されることのないように、抗加齢ではありませんが、それこそ抗って行かなくてはなりませんね。逆にこれは信用できるという食品はありますか?

白澤:納豆や味噌など日本古来の発酵食品については、プロモーションをお手伝いしたいと思っています。

西川:たしかに発酵食品は体に良いでしょうし、日本古来の製法で作っていれば安心ですね。ところで、先生が、近年、勧めておられるココナッツオイルはどのような仕組みで認知症患者の認知機能を改善させるんですか?

白澤:認知機能を改善させるのはケトン体という物質ですが、ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸が体内でケトン体となって脳を働かせる効果があるのです。

西川:通常、脳は炭水化物を原料とするブドウ糖をエネルギーとして作動しますが、脳の糖尿病とも呼ばれるアルツハイマー型認知症を患ってしまうと、脳はブドウ糖を受け入れられなくなり動かなくなってしまう。しかし、脳は、ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸を原料とするケトン体を燃料にしても動く別の作動メカニズムを持っているので、認知機能が改善する場合があると考えられる訳ですね。最近は認知機能の改善のみならず、ハリウッドセレブが美容に効果があると常用する人が多く、日本でも女性に人気を呼んでいますね。

白澤:ハリウッドセレブには、ココナッツオイルを口に含んでうがいする「オイルプリング」が注目を集めています。オイルプリングをすると、歯のホワイトニングや歯周病に効果があると言われています。

西川:人気を呼んで、近頃、高級スーパーの入口にココナッツオイルが山積みにされていますね。でも、歯にはさまったものを除去するためには歯磨きやデンタルフロスが必要なように思いますが?

白澤:歯ブラシとは研磨剤でエナメル質を物理的に磨いて歯を白くしているだけです。これはどこかの会社がつくったビジネスモデルに過ぎません。昔の人はそんなことをしなくても虫歯になりませんでした。人類の長い歴史上においても、歯ブラシや歯磨き粉やデンタルフロスなどありませんでした。親に言われて子どもの頃から習慣になっているだけです。その点、オイルプリングは、ココナッツオイルに含まれるラウリン酸の免疫力を高める機能を利用したもので歯を研磨しません。

西川:白澤先生は、運動については、どのようにお考えでしょうか?

白澤:私は膝を壊してしまうような過激なスポーツは勧めません。介護予防で筋トレを推奨するのもどうかと思います。それよりも、日常生活の中で体を上手く使うのが一番です。その時に体の軸を安定させるのを意識することが重要です。体の軸の安定が歩行や転倒防止に役立つのです。

西川:昨今は、移動がクルマ中心の地方都市に住む人より、電車や地下鉄やバスを利用する際に何度も階段を昇り降りする大都市に住む人の方が、足腰も強く健康だという指摘があります。まちづくりも、高齢化社会だからと何でもバリアフリーにするではなく、階段などバリアがある方が健康寿命の延伸には良いのだと考え方が変わって来ました。

白澤:駅で階段を昇り降りして乗り換えするのは高齢者にとって、かなり難易度が高い作業です。それを毎日のようにできる人は身体能力が高いと言えます。より多くの高齢者が日常生活で階段をバリアにしないようにするのが今後の課題です。

西川:先生おススメの運動はありますか?

白澤:私は「ジャイロトニック」を推奨しています。これは、もともとバレエダンサーのための運動法で、背骨がねじれる軸回転をうながす運動です。人間は歩行する時、実は体がねじれているのです。地球ゴマと一緒で回転するから軸が安定しているのです。高齢者の歩行訓練にはとてもいいですし、トム・クルーズも使っていると注目されています。

西川:おもしろいですね!ぜひ、やってみたいです。それから、食事、運動とともに、アンチエイジングの3要素と言われる生きがいについてはどのようにお考えでしょうか?

白澤:人生のチャレンジ目標を持っている人は圧倒的に強いですね。これは、「何のために生きているのか?」という質問に答えられるかどうかです。目標は大それたものではなくても、「孫が結婚する姿を見たい」、「お金儲けをしたい」など何でも構いません。それがきちんと答えられるかどうかが重要です。

西川:特に男性は会社をリタイアすると燃え尽きてしまい、一気に老け込む人も多いですからね。

白澤:前向きに生きているだけで人生に目的ができます。日本人の多くがこれに答えられないとしたら、国が生きがいを創出できていないということです。

西川:今後、日本は世界の中で高齢化社会のトップランナーを走って行くことになります。その際に必要なことは何でしょうか?

白澤:とにかく、日本は伝統的な文化を失い過ぎています。本来、伝承すべき文化は親から子に引き継がれるものなのですが、戦後の横断的な価値観によって、それが真っ二つになってしまいました。横断的な価値観とは、親が何をやってきたかよりも、同級生が何をやっているかを気にするものです。本来は、プロスキーヤーで登山家の三浦敬三さんがやってきたことを息子の三浦雄一郎さんや孫の豪太さんがやっているように、親がやっていたことを継承することが必要なのです。

西川:体のDNAはつながっているけど、文化のDNAは途切れてしまっている訳ですね。

白澤:そのとおりです。文化のDNAが体を守るものであったのに、それを継承しなかったから結果として、体も悪くなったのです。

西川:これからは、食文化をはじめ日本各地に伝わる伝統的な文化をもう一度取り戻すことが、すなわち、私たちの心身を健康にし、人生を豊かにすることにつながるのだとよくわかりました。もしかすると、今が、戦後、途切れた文化を取り戻す最後のチャンスかも知れませんね。貴重なお話をありがとうございました。

白澤卓二さん トピックス

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久保 明 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

久保 明 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

久保 明 × 西川 りゅうじん

自分の体と向き合うことこそ健康の原点
~自分自身に合った健康法を知ろう!~

抗加齢を科学する名医 久保明先生と、「あざみ野STYLE」応援団長で厚生労働省の健康寿命をのばそう運動主宰西川りゅうじんさんによる健康に関するスペシャルトーク

西川:久保先生は予防医療とアンチエイジング医学をリードして来られ、現在も最前線で診療しておられますね。健康に関する情報があふれる中で、自分に合った健康法を知るにはどうすれば良いのでしょうか。

久保:昨今の情報過多の中でまず大事なことは、自分自身の状態を知ることです。現在は、検診や人間ドック以外にも、活性酸素や血中のビタミン量など加齢にともなう状態を調べて、一人一人に合った健康法を医師から提案することができます。

西川:先生は銀座医院でプレミアムドックをスタートされ、患者ごとに最適な医療の提供を目指しておられます。そのためには、まず自分の体を知ることなんですね。

久保:それが一番大切です。個々のデータベースをもとに、どのようにアレンジしていくかがプロである医師の役目です。一人一人老化の状態が違うのと同じように、健康のあり方もまったく異なるものですから。

西川:人間ドックの進化系であるプレミアムドックを受けると、どんなことがわかるのですか?

久保:たとえば、血管の老化を示す動脈硬化や糖尿病の一歩手前である糖化の状態を知ることなどが可能です。

西川:糖化という言葉を最近よく耳にしますが、どういう意味ですか?

久保:体の細胞はたんぱく質でできていますが、過剰な糖分がくっついて、たんぱく質の機能が低下してしまうことです。

西川:その糖化で肌が老化するわけですね。

久保:皮膚下にはコラーゲンやエラスチンなどのたんぱく質がありますが、糖がくっつくと伸縮性がなくなってしまうんです。

西川:それがシワの原因ですね。糖化は体の中でも影響がありますか?

久保:たとえば、肺にもエラスチンがありますので、伸展性が損なわれます。実際に糖化と比例して、慢性閉塞性肺疾患(COPD)という肺の老化が進むというデータもあります。

西川:では、その糖化を防ぐにはどうすれば良いのでしょうか?

久保:いくつかの方法がありますが、基本的には摂取カロリーを抑えることです。次に炭水化物の比率を抑えること。そして、食べる順番や朝昼夕の量を調整するなど食べ方の工夫ですね。

西川:一方で糖質を一切摂らないダイエット法がもてはやされていますが?

久保:炭水化物を摂らないとたんぱく質と脂肪だけになってしまいます。そうなれば動脈硬化などの血管障害が進行する可能性が高いです。極端な方法はインパクトがあるためメディアで取り上げられやすいので信じる人も増えるのです。しかし、本来、医学や科学で大切なのはインパクトではなくファクト(事実)です。多くの人を対象に比較検証を行った上で確かめられたことを信じるべきです。

西川:テレビや雑誌にあおられて、一面的な情報に惑わされてはいけませんね。

久保:その通り!一人一人の体が異なるのですから、その人ごとの健康法が必要です。今後は数多くの臨床で得られたデータをどう個人に結び付けるか、最先端の医学を医療の現場でどう活かせるかが課題です。

西川:先生のお話をうかがって、同じ型の機械を修理するように、「これで健康になれる!」といった健康法の危うさを再認識しました。自分の体と向き合うことこそが健康の原点なのですね。

久保:現在のアンチエイジング医療や予防医療は、まだまだ医学とは言えないかも知れません。医学と呼ぶためには、「調べること」「対処すること」「確認すること」の3つの作業が必要です。ところが、今のところ、確認する作業が成されていないのが現状です。その結果、「ゴマだけを食べればいい」「納豆だけを食べればいい」・・・、などと、いろいろな健康法が出て来ています。重要なのは、それが合う人も合わない人もいるということです。その効果を一定数の人数のサンプルで確認・検証する必要があるのです

西川:久保先生のご著書『人気の「これだけ健康法」が寿命を縮める』(講談社)のタイトルの通り、「これだけの健康法」は危ういですね。最近、1日1食にすれば長寿遺伝子がONになると言われ、やってみたら、逆に無理が出てリバウンドで太ってしまったという笑えない話も耳にしますが、実際、効果はどうなんでしょう?

久保:長寿遺伝子をONにするしくみというのはいろんな方法があるんですよ。私たちも週末だけ断食する方法を大学と共同で調べましたが、週末だけ3分の1のカロリーに減らすだけでも長寿遺伝子に変化がありました。これを医学として確立するためには、1日1食の人と、2食の人、3食の人を、100人なら100人、何年間か経過を診ていくというスタンスの研究が望まれます。

西川:今後、「健康寿命」が、ますます重要なキーワードになって来ますね。男性も女性も、健康に自立して生きられる「健康寿命」は寿命よりも約10年も短い。長生きしても、健康でなければ、本人も家族もつらいし、家族も自治体も国も負担も大きくなる一方です。

久保:昨今は、厚生労働省の取り組みの効果もあり、「健康長寿」をのばそうという意識が芽生えています。しかし、それ以上に大切なのは、生きがいを持って生きることです。私たちはそれを「能力長寿」と呼んでいます。つまり、自然から与えられた能力をどうやって活かすかという視点です。その能力とは、職業に関わらず、魚釣りがうまいとか野球を教えるのがうまいといった広い意味です。それぞれの能力を活かしながら生きる寿命という考え方です。

西川:なるほど。おっしゃる通り、生きがいがあるからこそ健康でいようと思いますし、いられますからね。

久保:そのためには、頭と身体の2つの健康が必要になってきます。まずは、認知症への対策。もう1つは、ロコモ(ロコモティブシンドローム=歩行や日常生活に何らかの障害をきたしている状態)やサルコぺニア(骨格筋量や筋力の低下を特徴とする症候群)など身体が不自由にならないことです。

西川:生きがいがあるから心身が健康なのか、健康だから生きがいが持てるのか、鶏が先か卵が先かはわかりませんが、いずれにしても、仕事や趣味があって生涯現役で「能力長寿」を目指そうということですね。まず、認知症にならないためにはどうすればよいのでしょうか?

久保:私たちができることは、まず遺伝子をみることです。現在、ある遺伝子の変化を認めると3割くらいアルツハイマー型認知症になる確率が高くなることがわかっています。遺伝子というのは、親から由来する遺伝とは別で、自分自身が持っている遺伝子のことです。私たちのデータによると、日本人の4分の1から5分の1くらいの人がその変化を持っているんですよ。

西川:そんなに高い割合なんですね。驚きました!

久保:あとは生活習慣病がある人、外傷がある人、身体活動が低い人はアルツハイマー型認知症になりやすいとされています。最近は、ある程度、予防もできるのではないかという実験もされていて、ビタミンEを用いた研究もあります。

西川:身体を動かす効果についてはどうですか?

久保:運動は生活習慣病予防の点でも望ましいですね。

西川:自分で判断するためのエイジングドック以外の基準は何かありますか?

久保:試しに良いと思う健康法を3ヶ月ほど続けてみて、判断してみてはいかがでしょうか。

西川:やはり、自分の健康は自分の身体に聞いてみるのが一番なのかも知れませんね。

久保:でも、過信は禁物です。科学的なデータをもとにした医師によるアドバイスが確かな予防医療につながります。申し上げて来ましたように、人間の体は多様で、アドバイスも十人十色です。だからこそ、私は、可能な限り、医療の現場に身を置こうと考えているのです。

西川:本日は貴重なお話をありがとうございました。久保先生には、これからも日本の医療をリードして行っていただければと存じます。

久保明さん トピックス

最新刊『人気の「これだけ健康法」が寿命を縮める 老化指標を改善する28のステップ』(講談社)は、流行りの健康法の誤りを指摘し、老化指標のレベルを改善して若返るためにはどうすればいいのかのヒントが分かりやすく解説されています。

塩谷 信幸 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

塩谷 信幸 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

塩谷 信幸 × 西川 りゅうじん

生きがいを持つことこそ”アンチエイジング”健康寿命の延伸は目的ではなく手段だ
アンチエイジング医療の先駆者塩谷信幸と健康寿命をのばそう運動主宰西川りゅうじんのスペシャルトーク!

西川:塩谷先生は名実ともに日本のアンチエイジング医療をリードして来られましたが、「見た目」が大事だとおっしゃっておられますね。

塩谷:日本には「かたちより心」という観念があって、見た目にこだわるのはどうかという思いがあります。しかし、『人は見た目が9割』という本がヒットしたように、見た目も大事だと思っているのが本音。ですから、見た目に市民権を与えようと活動しています。オープンにしないとアングラなものがはびこってしまいますから。

西川:建前ではなく、素直に見た目を意識することこそが、心身の若さ、美しさを保つことにつながるわけですね。

塩谷:見た目も全身の一部。人間の見た目は中から整えれば若くなるのです。若さとは体の内側の表れであり、皮膚は健康の鏡です。

西川:アンチエイジングと言えば、注射でシワが消えるといったテクニックだけがクローズアップされがちですが、先生がおっしゃりたいのは、心身の健康から生まれる「美」ですね。

塩谷:はい。皮膚は臓器の中でも特殊で外に露出していて外部から見える。それだけで医療の一つの専門分野です。でも、見た目だけを板金塗装で直すのではなく、中から整えることが大切なのです。

西川:クラシックカーも外装だけキレイにすればいいのではなく、エンジンや足回りまで修理しないと動きませんからね。

塩谷:そう。ただ、人間はクルマと違って見た目を整えることによって元気になることもあります。外からの見え方に気をつけること自体が健康につながる。つまり、外見と中身は別物ではなく一体なのです。

西川:アンチエイジングとは日本語で抗加齢ですが、先生のお話は、老いに抗(あらが)う西洋医学的な技術だけではなく、自然の営みを尊重する東洋医学的な考え方も合わせ持っているように感じます。

塩谷:アンチエイジングとは加齢に抗うだけとは考えていません。老化は自然現象。それをなるべくゆるやかにして“美しく老いる”ことを目指す。決して不老不死ではなく、一言でいえば健康寿命をのばすことなのです。

西川:アンドロイドのような修理でなく、人間らしく健康に生きる時間をのばすことですね。

塩谷:現代のアンチエイジングの問題点は、ノウハウばかりが先行していることです。本来、“How”ではなく“Why”であるべきなのです。

西川:どうやって若く見せるかではなく、なぜ若くありたいのかということですね。

塩谷:生きる目的がなければ意味がありませんし、そこまで踏み込まないと本当の意味のアンチエイジングには成り得ません。健康寿命の延伸は目的ではなく手段です。でないと、「健康のためなら死んでもいい」という世界になってしまう。アンチエイジングが見据える先は生きがいやQOL(クオリティ・オブ・ライフ)なのです。

西川:アンチエイジングは“生”とは何かという人生の本質につながるのですね。日々生きる目的を持って健やかに齢を重ねたいものです。

塩谷:アンチエイジング医療が誤解されているのには、医学界の中での二極化という要因もあります。肌や見た目を若返らせる外科的医療の分野と、点滴やキレーション療法(キレート剤を点滴して行うデトックス治療)、遺伝子診断といった内科的医療の分野の2つがつながらず別々になっています。肌や見た目の若返りは、狭くは美容外科、広くは形成外科の分野です。各々、ある専門分野だけがアンチエイジング医療と言う言葉に置き換わっているのです。

西川:アンチエイジングを、各論ではなく、トータルな視点から総論でとらえるべきだということでしょうか。塩谷先生は、アンチエイジングを、医学のみならず、さらに、心理学、社会学、老人学に至るまで学際的な枠組みから再構築すべきだと提唱しておられるようにも感じます。

塩谷:現在の医学は専門化が進み、ますます細分化されています。そのうち、「右の腎臓はわかるけど左の腎臓は専門外」というようなことが起こりかねません。アンチエイジングは全身の老化をゆるやかにするために、抗酸化や抗糖化、抗炎症といったことを考えますが、こうした治療は臓器ごとに分けられるものではありません。縦割りのままではうまく行かないので、横串を入れて統合する仕組みにしなければと思います。

西川:細胞ごとにバラバラになってしまった医療を、ふたたび、血管やシナプスでつないで仕組みづくりが必要なのですね。

塩谷:それらに加えて、アンチエイジングと老年病学をどう共存させるかという課題もあります。老年病学は内科的な思考で生活習慣病などになった時に対応するのですが、その一部としてアンチエイジング医療があっても良いと思います。そのためにも、医学の全科に横串を入れる考え方が必要なのではないかと思います。

西川:先生は、アンチエイジングの目的は高齢者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の確保だとおっしゃっていました。今後は独居老人がますます増加し、高齢で経済的に破綻する老齢破綻が懸念されています。その解決のためには、地域社会で支え合える仕組みが必要ですね。

塩谷:いろいろなアプローチがありますが、私は定年制度の見直しを支持しています。現在の定年制度は、平均寿命が50代の頃に作られた制度です。医者や芸術家は定年があってないようなものですが、ほとんどの人は企業で働いています。そういう人たちは定年を意識して逆算して生きなければならない。60歳くらいで一度ワーキングスタイルを変えて仕事を続けられる方法が検討されています。

西川:私の専門のマーケティングの分野でも、テレビの視聴率をはじめ、平均寿命が50代の頃に作られた仕組みがほとんどで、見直しが急務となっています。CMなどの広告や商品開発のターゲットを考える際に、消費者を年齢別に分類していますが、50歳以下は細かく区分けがあるのですが、なんと、50歳以上は100歳を超える人に至るまで同じ層だととらえているのです。来年から日本の女性の2人に1人が50歳以上になるというのに、まったくナンセンスです。

塩谷:高齢者自身も意識を切り替える必要があります。心理学者のユングは、人生を午前と午後に分けました。フルに働ける時代を午前、それ以降を午後と呼んだ訳です。60歳以降の人生をそれまでの仕事の延長線上で続けるのか、午後の仕事に切り替えるのか。午後の仕事に切り替える例には、地域のボランティア活動などが考えられますね。午後の時間は人生を見直す貴重な時です。自分の過去と折り合いを着けるために、自分史を書くのも良いかも知れません。

西川:塩谷先生はブログに、人生を振り返ることは、他人を許し、自分を許すことだと書かれていました。なるほどと心に浸みました。あの時、こうしておけば良かったと悔やんでも過去は変えられないですからね。

塩谷:どうしようもない過去は認めて、新しくやれることを考えることが大切ですね。それを午後の仕事として行えば、新たな生きがいにつながると思います。

西川:朝日も美しいですが、夕日も美しいですからね。日本は日ノ本の国ですが、初日の出、サンライズも素敵ですが、これからはサンセットを尊ぶことが大切になるでしょう。

塩谷:サンセットの方が余韻があります。この年になってやっとわかってきたこともあるのですよ。

西川:先生は女性の生き方について、どんな考えをお持ちでしょうか。

塩谷:私は今の女性は男性より主体性があるので、まったく心配していません。しかし、問題はまだまだ日本が男性社会であることです。

西川:女性大臣が辞任に追い込まれたりしていますが、立場が人を作る部分もありますので、ある時期は意図的にでも女性の管理職を作って行くことも必要だと思います。

塩谷:良い意味で男女が共存する社会が作れないかと考えています。先日、女性ばかりのメンバーの研究会で、高校生の頃の夢がどれくらい実現されているかを調べてみたのです。いろいろな体験があっておもしろかったのですが、男性は良くも悪くも自己責任で未来を拓いて行けます。でも、女性の場合には配偶者になびかないといけない。それが前提になってしまっているのです。実際に独立しようと思っても、例えば夫婦で医者の場合、どうしても奥さんの方が犠牲になりがちです。急にすべてが平等にというのは難しくとも、女性の夢が活かされるような社会にしたいですね。

西川:最近、男女ともに未婚ならぬ非婚の結婚しない人がますます増えています。数年前、コラムニストの酒井順子さんの著書の『負け犬の遠吠え』から「負け犬」という言葉が流行語になりました。「30歳を過ぎて結婚せず子供がいない女性は、どんなに美人でどんなに仕事ができても、女の中では「負け犬」だ。だけど、それが楽しい」というのです。今や東京をはじめ大都市では30歳以上の女性の2人に1人が独身になっており、都心部は“負け犬保護区域”と呼ばれています。

塩谷:結婚の形態も見直すべき時が来ているのかも知れませんね。しかし、人間は大脳を背負ってしまったために、神と獣の間の存在になってしまった。われわれの矛盾した社会構造の原因はそこにある訳で、それにどう対処して行くかが課題です。男女同権と言えども、男性に子供は産めません。より具体的なことを言えば、女性は妊娠した瞬間から体内のホルモン分泌までが変わります。それを途中で中断すれば必ずひずみが来るのです。これは権利の問題ではなく、ヒトという種の宿命です。でも、大脳では、妊娠の実際と、仕事や自己実現との折り合いが着かない…むずかしい問題です。

西川:そういった意味でも、医学と社会学がリンクして行かざるを得ない時代になっていますね。先生がアンチエイジングで目指されていることとも大いに関係して来ますね。最後に、塩谷先生の今後の展望をお聞かせいただければと思います。

塩谷:現役の頃は雑用が多過ぎました(笑)。今はゆとりができたので、改めて西洋医学だけでは解決できないことにも注目したいですね。現在、われわれが偉そうに言っていることも、実は4000年前のインドでアーユルヴェーダが訴えていたことと原理的に同じこともあります。場合によっては、その頃の方が革新的な場合すらあるかも知れません。ですから、そういったことも含めて統合して行く必要があると思っています。そして、アンチエイジングの手法も、日常のライフスタイルにどう落とし込めるかの整理も必要だと考えています。

西川:今はアンチエイジングのみならず、医療や健康づくりについても情報があふれかえっているため、逆に何が正しいのかわからなくなっている部分もありますね。

塩谷:How toばかりが先行して、「クルミが健康にいい」とメディアで報じられると、スーパーからクルミがすべて消えちゃったりする。そうではなく、根幹があって、それに対して、いくつかのアプローチがあるのだと整理しなければいけないと思っています。そうすることで、一人一人のライフスタイルに落とし込みやすくなります。

西川:1種類の食材や1種類の運動が、あらゆる年代や体型の、さまざまな遺伝子を持つ、すべての人に良いはずがありませんからね。全体のバランスと一人一人の状態にあったアプローチが大切ですね。

塩谷:一番良くないのは「あれはダメ、これはダメ」という教条的な教え方です。逆に「あれは楽しいから取り入れよう!」と楽しみながら美しく健康になっていただきたいです。

西川:なるほど、“ダメダメ”アンチエイジングはダメってことですね!塩谷先生のお話をうかがうことで、生きることの楽しさ、大切さがわかったような気になれました。お忙しい中、貴重なお時間とお話を、ありがとうございました。

塩谷信幸さん トピックス

塩谷先生が理事長を務めるNPO法人アンチエイジングネットワークでは、様々なアンチエイジング分野で活躍している専門家の英知を結集し、関連分野の協力もあおぎながらHP上での情報配信、セミナーの開催をおこなっています。月1(第1水曜日)にメルマガ配信もおこなっておりますので、ぜひご登録ください。

辨野 義己 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

辨野 義己 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

辨野 義己 × 西川 りゅうじん 花郷 六本木店(03-5775-3888

うんちは健康状態のバロメーター!腸内環境を改善する方法とは?
うんちと陽のスペシャリストの辨野義己先生と、「あざみ野STYLE」応援団長で厚生労働省の健康寿命をのばす運動を進める西川りゅうじんさんによる健康に関するスペシャルトーク!

西川:辨野先生は、腸内環境、腸内細菌、便の研究の権威として学会のみならずテレビでも引っ張りだこですね。お名前も便の研究をされている辨野(べんの)先生でわかりやすいです。

辨野:「ペンネームですか?」とよく聞かれますが本名です。フルネームも、辨野義己(便のよしみ)ということでウン命だと思っています(笑)

西川:日本人は便秘で悩んでいる人が多いと言いますが実態はどうなんですか?

辨野:便秘というのは3日以上出ない状況を言うんですが、日本人女性の48%が便秘で、そのうちの65%は5日に1回しか出ていないんです。このように女性の便秘というのは常態化していますね。

西川:若い女性の最大の悩みが便秘だという統計もありますね。

辨野:20代の女性の半数は便秘です。ひどいパターンでは月曜から金曜まで出ずに、土日に下剤で出す人もいます。30代以上の女性も4割近くが便秘なので、もう改善できないと諦めておられるようですね。

西川:便秘は治らないんでしょうか?

辨野:いえ、食習慣が腸の滞留時間を大きく左右しているので食べ物で改善できます。例えば、イモをよく食べるアフリカの黒人女性の食べかすの滞留時間は17時間程度ですが、精製されたパンや肉類を多く食べるイギリスの女性は便を出すのに3~5日かかったとの調査があります。

西川:冷蔵庫の中でも、それだけ長時間、食べ物を置いておけば腐りますね。

辨野:便秘の人というのは、腸内環境が悪化している人たちが多いんです。同時にお腹が痛い、太りやすい、臭いガスが出る。そうした人たちというのは、肌の状態も悪いんですね。

西川:腸年齢が肌年齢。そして、腸美人が肌美人だと先生はおっしゃっていますよね。

辨野:腸の粘膜と皮膚は起源が同じですから、腸粘膜の状態が悪いと肌の状態も悪くなります。高い化粧品を塗ったところで、腸内環境が悪いとどうにもなりません。それから、女性の死因の1位は大腸ガンであることも忘れてはなりません。

西川:大腸がんの要因は何ですか?

辨野:世界がん基金と米国がん研究所が10年毎に出す「ザ・レポート」による大腸がんリスクをあげる要因は肉類・加工肉の食べ過ぎ、野菜不足、運動不足、そしてアルコールの多飲です。

西川:報道でも肉の食べ過ぎは良くないとか、60歳を過ぎたら肉を食べた方が良いとか何が正しいのかよくわかりません。

辨野:肉のタンパク質が大事なのはもちろんですが、肉のおいしさは脂肪にあるので、肉を食べすぎると結局、動物性脂肪の取り過ぎになりますね。

西川:からだにいい肉の食べ方はありますか?

辨野:野菜と一緒にバランス良く食べることが重要です。肉と野菜の比率は、1:3~1:5。また、発酵食品や海藻も良いでしょう。そうすれば、腸内環境が良くなりますよ。

西川:どんなうんちが理想的なんでしょうか?

辨野:良いうんちは80%が水分ですから、ストーンと気持ちよく出ます。すっぱい酸性臭がして黄褐色、男性で300g 、女性で250g程度です。重さはトイレに行く前と出た後で体重計に乗るとわかりますよ。

西川:お通じをチェックしてみることが大事というわけですね。

辨野:大便は体からのお便り。便所とは体からのお便りを読み取る場所ですね。健康管理する場所ともいえます。食べることは生きること、と言いますが、もっと言うと、出すことこそが生きること。うんちを、豊かに生きるうえでの目安にしてください!

西川:女性の死因1位が大腸がんということは、腸内環境が寿命を決めると言っても過言ではないですね。大腸は大腸がんのみならず、からだの中で一番病気になりやすい臓器だと聞きます。

辨野:たとえば、大腸がんは、遺伝的な疾患だと思われがちですが、実は腸内細菌によって引き起こされている病気です。

西川:胃がんがヘリコバクターピロリ菌によって引き起こされることは広く知られるようになりましたが、大腸がんも細菌が原因とは知りませんでした。

辨野:つまり、消化器官のがんとは、慢性的に常在している菌の感染症なんです。

西川:大腸がんが細菌による感染症だという認識などまったくありませんでした。

辨野:腸には大腸と小腸がありますが、小腸が消化吸収の場なのに対し、大腸は食べかすを貯めて排泄する器官です。小腸は消化酵素や栄養素が働く場なので腸内細菌が少ないのです。ところが、大腸は腸内細菌の巣窟です。しかも、人によってその構成パターンは十人十色なんです。

西川:大腸には大腸がんだけでなく、潰瘍性大腸炎、大腸カタルといった色々な恐ろしい病気がたくさんあるのも、人によって異なるさまざまな腸内細菌が引き金になっているわけですね。

辨野:大腸がんは転移しやすい病気なので、死因としては肺がんや肝臓がんでも、そのもとは大腸がんという人も多くいます。

西川:大腸にはどれくらいの数の細菌がいるんですか?

辨野:大便1g当たりに約6000億から1兆個近い細菌がいます。大腸内には1キロ近くの残差物(うんち)があるんですが、600兆個から1000兆個近い腸内細菌が管腔(かんくう)にいるのです。私たちの身体を構成している細胞数は60兆個ですからその10倍強。しかも大腸粘膜に定着している腸内細菌をかきあつめると、なんと1.5キロの重さになります。

西川:大腸内の細菌の重さだけで1.5キロですか!腸の中にそんなにたくさんの細菌を飼っているとは信じられません。私たちは腸内細菌と共生して生きているわけですね。善玉菌、悪玉菌の細菌も私たちのからだの一部だと考えた方が自然ですね。

辨野:ある意味、われわれの身体は腸内細菌によってコントロールされていると言ってもいいですよね。そして、21世紀になって腸内細菌の遺伝子解析によって、ようやくその全容が把握できたのですよ。

西川:遺伝子解析できるといろいろなことがわかりそうですね。最新の遺伝子解析によって、どんなことがわかってきたのですか?

辨野:2004年に科学雑誌「ネイチャー」でアメリカの研究グループが肥満に付随する腸内細菌の役割について発表しました。肥満は今まで食物の過剰摂取が原因と考えられてきましたが、新たな因子として腸内細菌が浮上したのです。

西川:肥満も腸内細菌の影響があるんですね!たしかに、太りやすい体質の人は、遺伝や食生活の影響も大きいでしょうが、何を食べても太りやすいと言いますね。親から引き継いだ腸内細菌の影響があるのかも知れませんね。

辨野:それだけじゃありません。脳の機能さえも腸内細菌が関与することがわかってきました。つまり、腸内細菌を抜きにして現代の医療は語れなくなっているんですね。

西川:「21世紀は腸の時代」と言われていますね。

辨野:まさにその通りです。よく考えると、動物のなかに脳のない動物はいても腸のない動物はいませんよね。ナマコなどの腔腸動物に脳はなく、腸そのものが脳の機能をしているのです。

西川:なるほど、生命には腸が一番大事なんですね。

辨野:さらに、身体に微生物がいない無菌動物と腸内細菌などをもった通常動物をくらべると、ドーパミンという脳内のやる気物質は通常の菌をもった動物のほうが少ないのです。つまり、ドーパミン産生を腸内細菌は抑制しているのです。ドーパミンが枯渇するとアルツハイマー病やパーキンソン病などの認知症の症状が出てきます。また、セロトニンという幸せホルモンの95%は腸でつくられて、血流を介してダイレクトに脳に行くようにもなっています。

西川:善玉菌を中心に腸内細菌は生きるために必要なんですね。腸の環境がいいとウツにもなりにくいし、幸せな気持ちになれるわけですか。たしかに、お腹の調子が悪いと気分まで悪くなって、やる気も出ません。

辨野:脳の機能は腸内細菌によって左右されているともいえますね。現在、「腸脳相関」という言葉が提示されています。昔は脳から腸に命令が伝わっていると考えられてきましたが、逆で腸こそがファースト・ブレイン(第一の脳)なのかもしれません。

西川:脳の健康も腸がつかさどっているんですね。

辨野:腸内環境は個人個人が違います。バランスの良い食生活で腸内環境を整えることが前提になってきますが、現在、私の研究課題は、これまで3200名の腸内細菌解析で得られた“腸内細菌データベース”を駆使して、「特定の腸内細菌を有している人には、どのような食生活をすれば良いか」という新しい健腸生活を提案することです。

西川:その人ごとの腸の特性に合わせた医療を提供することによって、病気になってから病院にいくのではなく、「未病」の段階で防ごうということですね。

辨野:健康を予防する立場から腸内細菌のデータベースを利用するという時代にきていますし、新しい展開が求められています。健康の在り方を変える、一番の大きな課題ですね。

西川:私がスーパーバイザーを務めさせていただいている厚生労働省の「健康寿命をのばそう!スマートライフ・プロジェクト」の運動にも大きくかかわってくるトピックスですね。

辨野:自分が生きていく上でこれを食べれば安心してうんちが出る。そういう習慣を身につけて、何を足せばいいんだろう、というような感覚を持っていただく。研究というところから一歩進んだ、健康へのアドバイスができるようになると、わくわくしています。

西川:うんちを毎日、チェックすることで、食生活を整え、腸が変わればからだも変わって心身の健康が維持できるんですね。私たちのからだの一部である腸内細菌と良いお付き合いをして、心もからだも健康でいたいものです。ありがとうございました!

辨野義己さん トピックス

最新刊『腸内細菌革命 若返る!やせる!病気にならない!』(さくら舎)は、健康と寿命を根本から変える腸内環境とその働きを解説。腸内環境を自分で良くし、いつまでも若々しく、長生きするための方法がわかります。

松尾 通 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

松尾 通 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

松尾 通 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

生きてる限り『歯』が命!健康長寿の秘訣は口にアリ!

日本アンチエイジング歯科学会会長の松尾通先生と、「あざみ野STYLE」応援団長で厚生労働省の健康寿命をのばす運動を進める西川りゅうじんさんによる健康に関するスペシャルトーク!

西川:松尾先生は歯のアンチエンジングに関する第一人者としてご活躍ですが、歯は美容や健康だけでなく寿命に直結しますね。ボス猿も歯が悪くなるとすぐに地位を奪われますから。

松尾:動物は歯をなくすと食べられませんから、すなわち死なんですね。人間は、義歯など人為的なカバーがあるから生きていられますが、食べる楽しみがへると、老後が不幸なものになりかねません。

西川:大学時代に財界の重鎮として活躍する先輩に「社会に出る前にやっておくべきことは?」と聞いたら「卒業までに歯を治しておけ」と言われました。その時は拍子抜けしましたが、今となればなるほどと納得させられます。

松尾:雑誌「プレジデント」で70歳以上を対象に、「リタイア前にやるべきだった後悔トップ20(健康編)」という調査がありましたが、1位は「歯の定期健診を受ければよかった」なんです。70歳以上の人には歯は痛切な問題なんですね。

西川:長生きしても寝たきりでは本人も周囲もツライ。寿命よりも「健康寿命」こそが重要ですが、普段、歯の大切さを忘れがちです。

松尾:多くの人は60歳くらいで歯にガタがきます。ですから、死ぬまでの2~30年をどう埋めるかが課題です。悪くなってから治療するのではなく、ケアすることで歯の寿命を伸ばさなければなりません。「CureからCareへ」というわけです。

西川:歯医者さんといえば子どもの頃に虫歯になったら連れて行かれる怖いところというイメージが植え付けられがちですね。

松尾:そう、今までは歯の治療に対するモチベーションがネガティブだったんです。痛い、時間が掛かる、お金が掛かる。でも、Careは痛くありませんし、悪化する前にメンテナンスするので、お金もそれほどかかりません。

西川:歯垢や歯石を取ってもらうクリーニングは気持ちいいですが、そもそも歯石ってなぜよくないんですか?

松尾:歯石はバイ菌のたまり場なんです。歯周病菌も虫歯菌もそうですが、感染症なんですね。

西川:歯のバイ菌が原因となってあちこちに様々な病気を引き起こすことがあるんですね。

松尾:採血してみたら、血管のなかに歯周病菌が入り込み、粥状の血餅をつくっていたという例もあります。歯周病は全身に影響するんですね。また現在、日本人の死因は脳卒中を抜いて、肺炎が3位になりました。そのひとつである誤嚥性肺炎の原因は口腔ケア不足なんです。

西川:当たり前のことで普段忘れがちですが、私たちは口から食物だけでなく細菌も取り入れています。からだの入口にある歯は全身に影響を及ぼすんですね。 「噛む」ことは脳にも影響すると言われますが。

松尾:咀嚼で刺激を受けると脳に酸素を送り込むポンプの役割をするんです。統計的に見ても、歯を1本失うと0.6%の割合で認知症が進むと言われています。歯のケアは認知症の予防にもなるんです。高齢社会になって、幸せな人生の最後を送るためには健康じゃなくちゃならない。その一番の秘訣は「歯」なのかもしれません。

西川:まさに歯の健康が健康寿命をのばす。「芸能人は歯が命」というCMがありましたが、ヒトを含め、あらゆる生き物は歯が命ですね!松尾先生のお話から歯の健康が健康寿命をのばすために重要であることはよくわかりましたが、心身の健康をトータルにとらえるためには、当然、さまざまな医学との学際的な研究が欠かせませんね。

松尾:日本は、医学と歯学が教育制度も免許制度も別なのですが、最近やっと医歯連係という認識ができてきています。認知症や心臓疾患にも関わってくるわけですから。

西川:優れた歯科医師は、患者の歯を診れば、全身の健康状態がわかると言われますね。

松尾:私の医院では日常茶飯なんですが、お口をみれば糖尿病かどうかもわかります。医師に紹介状を書いて調べてもらいますと9割を超える確率で当たっています。

西川:なるほど、実際にわかるわけですか!歯学は医療の一分野であって、医療全体と関わって来る訳ですね。

松尾:これまでは歯科というと、削る・抜く・かぶせるという外科的な治療がほとんどでしたが、これからは内科的なところにも着目して健康管理をサポートしようとしています。

西川:松尾先生が先導されてさまざまな取り組みが始まっているとうかがいました。具体的には、どのようなことがスタートしているのでしょうか?

松尾:一つはプロバイオティクスです。ヨーグルトなどに入っている乳酸菌が歯周病を含めて身体の状態を良くすることはわかっていますので、口腔内科のなかでもこれを推奨しています。

西川:健康寿命をのばすヨーグルト「1Day+ワンデイプラス」ですね。私もいただいていますが、美味しいし、毎日調子がいいです。スウェーデンの医療バイオテクノロジー企業のバイオガイア社製の特別な菌で作られていると聞きました。食は栄養の補給のみならず、人生の楽しみや生きがいでもあります。ステーキが好物だった人が自分の歯で食べられなくなったら、つらいですね。

松尾:日本人の感性のなかに「歯ざわり」「歯ごたえ」「のど越し」というのがあります。なぜ、アワビが珍重されるかというと、歯ごたえなんです。その正体は歯のまわりの歯根膜というハンモックの役割をしたものがあって、これがセンサーとなって“おいしい”と感じるんですね。

西川:たしかに歯ごたえや歯ざわりで食感を楽しんだり、咀嚼するによって満足感を得ている部分は大きいですね。和食が世界遺産に認定されましたが、ヒトに歯があったからこそ、日本の素晴らしい食文化が華開いたとも言えますね。

松尾:噛むことは人間にいい影響を及ぼしてるんですよ。最近、食品メーカーはそこに注目していて、どうしたら噛みごたえのあるものを提供できるかを研究しています。そこで、私たちも食の分野にも関わってきて、お弁当の監修までやってるんです。個食がトレンドになっていますし、一大センセーションを巻き起こすんじゃないかと思っています。

西川:歯があってこその食ですからね。健康との関わりで言えば、食ともう一つ重要なのがスポーツですね。野球やサッカー、ゴルフをはじめスポーツ選手は、力を込める際に歯で噛み締めるので、歯のケアが欠かせないと聞きます。

松尾:大リーグの選手がガムを噛んでいるのは、集中力を高めるためですね。ラグビーなどのコンタクトスポーツではマウスピースを付けていますね。あれには外傷から身体を守るほかに、運動能力を高める効果もあって、瞬発力が上がると言われています。ほかのスポーツにも有効だということで、スポーツメーカーからノンコンタクトスポーツ用のマウスピースも発売されています。

西川:いい歯でいい噛み合わせをしていると馬力が出るんですよね。いみじくも歯を食いしばるという表現があるように、健康な歯があってこそ頑張れる訳ですからね。

松尾:それと顎位、アゴの位置関係にも関わるんです。正常な噛み合わせを持っていると体幹が安定する、これが良くないとなると胸椎も腰椎も傾いてくる。だから歯の噛み合わせを良くすることは体全体のバランスをとることにつながるんです。

西川:歯の噛み合わせが体の骨格の状態にまで影響を及ぼすのですね。歯の健康は消化器官や内臓、骨に至るまで人体のあらゆる器官の健康に直結していたとは驚きです!

松尾:そうなんです。健康全体のことを最近はとてもよく考えていて、「道の駅」ならぬ「健康の駅」構想というのもあります。全国には7万もの歯科診療所がありますから、ここを拠点にして、健康の情報を手に入れたり、ちょっとした体のメンテナンスもできる場をつくれたらと思っています。全部は無理でも5%でも参加すれば、立派な社会資本になります。

西川:歯科医院が、“健康づくりのインフラ”になれば素晴らしいです。歯の健康がからだ全体の健康につながる訳ですから、松尾先生のおっしゃるように、これからは、Cureではなく、毎日のCareのために歯科医院に気軽にうかがうことが大切ですね。ありがとうございました!

松尾通さん トピックス

「I❤aging」をテーマに開催される記念大会。当日は松尾先生の講演をはじめ、歯学界や医学界の著名な先生が講演。対談でおなじみの西川りゅうじんさんやナグモクリニックの南雲吉則院長による市民公開講座もあります。

渥美和彦 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

渥美和彦 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

渥美和彦 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

不老長寿はすぐそこにある未来 新たな時代の医療とは?
日本統合医療学会の渥美和彦先生と、「あざみ野STYLE」応援団長で厚生労働省の健康寿命をのばす運動を進める西川りゅうじんさんによる健康に関するスペシャルトーク。WEB版も必見!

西川:渥美先生はステキなおヒゲをお持ちですね。「鉄腕アトム」のお茶の水博士のモデルのお一人でもあるそうですね。

渥美:私は大阪の出身で手塚治虫さんとは、北野中学(現・北野高校)で同じクラスでした。彼は昆虫が大好きで絵も非常に上手でしたね。ちょうど漫画を描き始めていたようですが、そのときは天才なんてわかりませんでした(笑)。その後、彼は大阪大学、僕は東京大学の医学部に進み、いろんな会で一緒になりましたね。

西川:お二人は御縁が深かったんですね。手塚さんは私の小学校の先輩でもあり、伯父も手塚さんの同級生で虫取りをご一緒したようです。先生は常に医療の最先端で研究して来られましたが、統合医療とはどのようなものですか?

渥美:統合医療とは、漢方や針灸などの伝統医学と対症療法である西洋医学をあわせて、一人ひとりの患者にあった医療を提供するものです。

西川:心身を癒し未病を防ぐ各地に伝わる医療と手術などで治す近代医学の双方の良いところを合わせる訳ですね。

渥美:約20年前、伝統医学はそれまでの医学に変わる「代替医療」と共にアメリカで注目を集めていました。当時、私は日本学術会議の部長としてアメリカの医学界と交流があったことから、その情報を知り、早速日本の代替医療について調べ、学会をつくりました。

西川:林野庁の森林セラピー戦略会議の座長を務めましたが、ドイツなどでは森林療法や温浴療法に保険が適用されますからね。

渥美:今後、日本では統合医療をどのように取り入れていくかが課題です。われわれは東日本大震災を経験し、今後も南海トラフ地震に備えなくてはなりません。震災でライフラインが途絶えると電気を使う西洋医療は機能しなくなりますので、災害医療としての統合医療が必要になってきます。そこで、今、神奈川や静岡、愛知、三重、和歌山の知事と、各地域で統合医療センターを設けようという話をしています。神奈川の黒岩知事は理解がありますので、モデル県となる可能性がありますよ。

西川:地域から医療が変わりそうですね!それに統合医療は予防医学にも力を発揮するでしょうね。もともと東洋医学は日常から未病を防ぐことに重点を置いています。

渥美:そうですね。今までの医療産業は、病気になった人を助けるものでしたが、これからは未病の状態で患者さんを発見して病気を予防する方向に進んでいくと思います。それにはセルフケアがカギになってきます。

西川:日本人の死因の大半は生活習慣病が元ですが、生活習慣は自分で変えるしかありません。

渥美:はい。食事や運動は以前から注目されていますが、住まいを快適に整える森林浴マシンなんていうのも登場していますし、“着る医療”にも注目が集まっています。「バイオラバー」もその一つですよね。

西川:意識して、日々、身の周りの衣食住に気をつけて、健康を維持することが大切ですね。

渥美:まさにこれからは予防医学、健康の時代。そうすると、それを生み出す新しい医療産業が必要になってきます。病気になって痛い思いをするんじゃなくて、そうなる前に予防する。そんな夢を実現する社会を「未来健康共生社会」と名付け、研究会もスタートさせています。

西川:不老長寿は人類の夢。みんなの健康が経済の元気化につながるとは超高齢化社会に突入した日本にとって明るいニュースですね!

西川:小保方晴子さんが万能細胞の一種であるSTAP細胞を発見して話題を呼んでいます。そういった再生医療もこれからの最先端の医学ですよね?

渥美:今のところ再生医学で、心臓の断片をつくって動かせるところまでできています。ほかに、遺伝子科学の分野ではゲノム診断というのも登場しています。血液を採取し、遺伝子を分析すると、その人が将来どんな病気になる可能性があるかを予め診断できます。

西川:アンジェリーナ・ジョリーが、遺伝子検査の結果、乳がんになる可能性が非常に高いからと、まだがんになっていないのに切除したことで注目を集めましたね。

渥美:ゲノム診断はコンピュータ解析が中心の医学ですが、そのほかにもITは予防医療にも活用されようとしています。たとえば、ウェアラブル(身につけることが可能な)センサーを利用して、具合が悪くなったになったとき、すぐに病院に連絡できるシステムという実験をしたことがあります。

西川:ITやバイオをはじめとする最先端技術とその対極にある伝統医学。そういったあらゆる人類の叡智が融合して、未来の医療が切り拓いて行かれるわけですね。

渥美:新しい言葉でいうと、ユビキタス社会ですね。今は、そのモデルを世界のどこでやるか、というところまで時代がきています。

西川:また一方で、日本は高齢化社会への課題が山積しています。日本人は寿命は長いですが、その分、認知症や寝たきりの人も少なくありません。一昔前までは長寿県だったのにいつのまにか平均寿命が短くなっている地域もあります。

渥美:地方は車社会で歩く機会が少ないことが一つの原因でしょうね。便利になっている裏側には、必ず副作用や弊害がともないます。ですから、どのように利便性を管理するかが問題です。

西川:便利過ぎることが全て善ではありません。20年くらい前は街づくりと言えば、すべてバリアフリーにすれば良いと思われていました。しかし、最近になって、ロコモ(自ら動けること)の重要性が見直されて来ていますが、人間も生き物です。自分の足で動けるということが何よりも大切です。血液も手足を動かすことによって、骨の中の骨髄で作られます。健康を維持するためには、日頃から一定の付加をかけて足腰を動かす習慣が必要になります。ですので、昔の人が歳を取ってからもお寺の参道の階段を登り降りしたように、街にも坂や階段は必要なんです。それこそが自然の状態だからです。

渥美:高齢者を含めた町づくりというのも課題です。高齢者が病気を経て退院した後、ただ単に病院と家を往復する生活ではなく、その人たちが何か仕事や生きがいをもって働ける町づくりを考えなきゃいませんね。

西川:昨今、「コンパクトシティ」という考え方で、街の機能を中心部に集約して、もう一度、みんなで一緒に住もうという流れが出て来ています。そうすると、高齢者がお互いがどうしているかわかるし、若い人たちと交流する機会や場も増えます。コミュニティを再生することにもつながるのです。

渥美:そうですね。高齢者も社会のしくみに参加することを考えた方がいいでしょうね。高齢者には知恵や経験をもった人がたくさんいます。子どもや孫を育てた女性が、若いママさんを集めて子育てについて教えるというように、高齢者のなかには先生と呼べる人がたくさんいるはずです。社会参加をすると本人も元気になります。

西川:古今東西、世代を超えた人的交流によって人類は進歩して来ました。渥美先生の提唱されている統合医療によって、一人一人にとって有意義な高齢化社会にして行きたいものです。ありがとうございました。

渥美和彦さん トピックス

最新刊『医者の世話にならない生きかた』(ダイヤモンド社)は、人が本当に健やかに、幸せに、人生を送るための「医」を提唱。病院や医者の見きわめ方、病気との付き合い方、自分の面倒の見方をとおし、これからの時代の新しい生き方がわかります。

田口淳一 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

田口淳一 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

田口淳一 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

ウォーキングと筋トレでアンチエイジング!
東京ミッドタウンクリニック院長で、最先端のガン治療を行う田口淳一さんと、「あざみ野STYLE」応援団長で厚生労働省の健康寿命をのばす運動を進める西川りゅうじんさんによるカラダの健康に関するスペシャルトーク。

西川:田口先生は医療現場の最先端でご活躍ですが、日頃から私たちが気を付けなければならない健康に関する注目のキーワードはありますか?

田口:「ロコモ」または「ロコモティブ・シンドローム」という言葉をご存じでしょうか?

西川:ロコモティブは機関車の意味もありますから、体の動きに関する問題ですね。

田口:ロコモとは、膝が痛い・腰が痛いなど、歩行や日常生活になにかしらの支障があり、将来寝たきりのリスクが考えられる状態のことをいいます。

西川:ロコモは年齢に関係なく老若男女の誰にでもありがちなカラダの不調ですね。

田口:そうなんです。実は、現在、日本の医療費にかかっている金額は、心筋梗塞や脳梗塞といった心臓・脳疾患系よりも、整形外科系のほうが多いんです。

西川:たしかにビジネスマンやOL、主婦にも膝や腰の痛みに悩んでいる人も多いし、毎日の湿布や痛み止めにかかるお金もバカになりません。

田口:老化というのは筋力の低下から始まります。逆に筋トレをして大腿四頭筋という大きな太ももの筋肉をはじめ体幹の筋肉などをきたえると、アンチエイジングホルモンが放出され、若さが保てます。私の病院に来られる方で、88歳の方がおられます。70歳でゴルフを始められ、80歳になってリタイタしたので一念発起して筋トレを週2回始められてから、4キロくらい体重がへって、ドライバーが150ヤードから200ヤードをラクラク越えられるようになったそうなんです。

西川:実は私の父は82歳なのですが、先日、ゴルフで人生2度目のホールインワンを決めました。今度は3回目を目指すと張り切っています。周囲はちょっと困惑していますが(笑)

田口:筋トレをしてきたえれば、70歳や80歳をスタートにしても人間は成長できるんですね。ドライバーで200ヤードを超えられるなんて、40代の人が聞いてもうらやましい話ですよね。

西川:文部科学省による最新の調査では、なんと、70代の4割が地域のスポーツ同好会やフィットネスジムなどに所属しているとのことです。

田口:それはとても正しい健康法です。一時期、ジョギングが注目されていましたが、筋トレのほうが、整形外科的には、のぞましいでしょうね。将来、医療費にお金をかけないようにするためには、3、40代から積極的にやるといいですね。あとは、普段から歩く習慣をつけることが大事ですね。近くなら車で移動するより歩く、エスカレーターを使わずに階段を自分の足で上る、というように。

西川:クルマばかりで移動する地方の人より、毎日、電車の駅で階段を上り下りする大都市の人の方が健康だと言われますからね。

田口:足腰の筋力トレーニングは、寝たきりやボケ防止にもつながります。筋肉や骨が弱くなり、骨折して寝込んでしまうと、一気に老け込みます。人とコミュニケーションをとらなくなることも一因なのかもしれません。

西川:人間は人と人の間と書くように人同士でつながっていないと生きて行けません。地域の歩く会やジムで体をきたえつつ、そこで友だちを見つけて、心身ともに健康な生活を送るのが一番ですね

田口淳一 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

西川:健康と美容のためには、運動のみならず食事が大切ですが、ダイエットに関して医学的見地からアドバイスがあれば、ぜひご教授ください。

田口:最近、ダイエットに成功するためには、どの方法が効果的なのかという研究がありました。その研究では、3つのダイエット法を比較したんです。1つは、野菜と穀類を中心とした食事をし、脂肪をカットし、良質なたんぱく質を少し取る。2つめは、炭水化物をゼロにしてお肉や野菜はいくらでも食べてもよいローカーボンダイエット。3つめがオリーブオイルとサラダを多めに取る地中海式ダイエットです。

西川:興味深いです。どれも効果があると言われているダイエット法ですからね。一体、どれが最も効果的だったのですか?

田口:実は短期間での成功率はどれも高かったんです。さらにその中で、食事制限中の満足感はどれが高かったかというと、2つめのローカーボンだったんです。欧米人を対象にした結果だったからかもしれませんが、肉や野菜に制限がなかったことがよかったのではないでしょうか。加えて、体内の善玉コレステロールも増えたんです。

西川:なるほど。お肉や野菜が食べ放題でやせられたら最高ですね。でも、ご飯もパンもうどんもソバもお好み焼きもデザートもまったくダメなのはツライ。

田口:誰も予想していなかった結果でした。でも、やはり疑問が残るということで、長期間に渡ってどんな食生活をしてきた人が健康なのか、という研究をした人がいたんです。

西川:短期的にやせてもカラダを壊したら意味がないですからね。それで、結果は、どうだったんですか?

田口:やはり、肉や野菜しか食べない人というのは、それなりに動脈硬化など心臓系の疾患があるとわかりました。ダイエットのために短期間のうちは、ローカーボンでもいけど、その後はバランスのよい食事を心がけるのがよいようです。

西川:極端なダイエットがいいはずがありませんね。医食同源と言うように、健康寿命をのばすためには食事バランスに尽きます。人間は雑食の生き物ですからね。一時期、りんごダイエットなど単品ダイエット法が流行りましたが、続くわけがないですね。リバウンドするのが目に見えています。

田口:そうですね。たまたま成功する人はいそうですが。でも、あるダイエット法は失敗しても、違う方法がぴったりくるということもありますので、再び挑戦してみるということも大切かもしれません。

西川:たしかに健康に良いことを始めるのに遅すぎることはありません。それに何度へこたれても、やらないよりはやった方がいいですからね。

田口:禁煙も同じで、一度失敗をしても、またやり直せばいい。失敗したという罪悪感をもちつづけるんじゃなくて、何度でも再チャレンジ。そういう気持ちでいれば、ダイエットも禁煙も成功できるんじゃないでしょうか?

西川:ありがとうございました。読者の皆さんにとっても大いに参考になったに違いありません。人生二度なし。バランスの取れた食事・運動・禁煙・睡眠に気をつけて、心と体の健康寿命をのばしましょう!

田口淳さん トピックス

現在は先端医療として進行がんに対する樹状細胞免疫療法も行っています。医師会での講演会や学会活動も行い、流血中がん細胞やがん組織遺伝子検査などの研究及び臨牀も実行しています。

尾身奈美枝 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

尾身奈美枝 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

尾身奈美枝 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

季節の食材で心も体もハッピーに!
テレビ番組で料理のスタイリングを手がける元祖フードコーディネーターであり、料理研究家としても大活躍の尾身奈美枝さんと、「あざみ野STYLE」応援団長で厚生労働省の健康寿命をのばす運動を進める西川りゅうじんさんによるグルメと健康に関するスペシャルトーク。WEB版も必見!

西川:尾身さんはフードコーディネーターの草分けとして、また料理研究家として活躍されて来られましたが、そのきっかけは?

尾身:私の実家は工務店で住み込みの人もたくさんいました。母がそこでみんなのごはんやお弁当を作っていて、私も早くから包丁をもって手伝うのが好きだったので、将来は漠然と料理に携わる仕事がしたいと思っていました。それで、高校を卒業後、調理師の専門学校へ進みました。

西川:当時は調理師学校といえば男の世界ではありませんでしたか?

尾身:そうなんです。女性は2割しかいませんでした(笑)。私はそのまま短大に進学できる高校に通っていたので、先生もびっくりして「短大を卒業してからでもいいんじゃない?」と。でも私は早く料理の道で身を立てたかったんです。

西川:学校を卒業してすぐにどこかのお店で料理人になったのですか?

尾身:私は料理人というより、料理学校の先生みたいなことをしたいと思っていたんですが、そうした求人というのはなかなかなかありません。でも、働きたい気持ちが強かったので、学校の行きかえりに見かけていた料理学校に履歴書を持っていきました。当然、初めは受け入れてもらえなかったんですが、とにかく押しの一手。その後も熱心に電話をかけていたら、手伝う機会を与えてもらって、正式に採用をもらいました。

西川:まさに初志貫徹!その経験が料理研究家のベースになったわけですね。そして、フードコーディネーターへは?

尾身:その後、当時としては珍しくシェフがデモンストレーションをして料理を教えるカルチャースクールができるというので、そこでアシスタントをしたり、NYに渡って領事の家庭で料理を作ったりしました。NYでは70歳なのに大学生になった男性と出会いました。私はそれまで、年齢を気にしていたように思うのですが、「やりたいことがあれば、そのときがやりどきなんだ」と気づきました。先輩から『料理の鉄人』の話をいただいたのもその頃です。

西川:尾身さんがそのとき奮闘されたお陰でフードコーディネーターという職業が確立され、現在のグルメブームにつながったわけですね。今、変化を振り返ってみてどう思いますか?

尾身:コックさんがシェフになりオリーブオイルやバルサミコ酢を誰でも知っている世の中になりました。料理がこんなに力をもつ時代になるなんて想像もしていませんでした。

西川:一方、家庭で料理を作る機会が減り、今や手作りで料理を作るのは特別なイベントになってしまっている家も少なくありません。

尾身:現在のお母さん達は忙しいのでお惣菜を買ってくるのは仕方のないことかもしれません。でも、1品だけ手作りのものをプラスしたり、お惣菜にスライスした玉ねぎやキュウリを足すだけで、子どもに本当の野菜のおいしさが伝えられます。私が簡単なレシピを提案しているのもそのため。気負って難しいものをつくるより、季節の食材をゆでるだけでいい。夏に一緒にキュウリをかじったな、とか食を通じて季節の思い出もつくってほしいですね。

西川:『料理の鉄人』で数々のスターシェフとお仕事をご一緒されたと思いますが、特に革新的だと感じたのはどなたでしたか?

尾身:皆さん本当に素晴らしい方ばかりですよね。特に道場六三郎さんは即興性のあるアイデアを料理に取り入れた方。和食にバルサミコ酢を取り入れたり、和食のイメージをくつがえしました。また、料理の鉄人でずいぶん料理界もオープンになりました。

西川:たしかに道場さんが登場するまで和食は徒弟制度に守られた、変化のない閉ざされた世界という印象が強かったですね。男社会だった日本食の料理界も変わりつつありますね。

尾身:ほんとに、昔は和食の道に女性が進むなんて考えられませんでした。でも、今は女性のほうが長続きするし、手先が器用と重宝されているそうです。今はまだ表舞台には出てきていませんが、5~10年後にはミシュランで星をとれるくらいの人は出てくると思います。

西川:尾身さんに続く人も出て来るといいですね。日本の食の世界はますますおもしろくなるに違いありません。何より日本はあらゆる食材に恵まれていますから。

尾身:日本は縦に長い国なので、北から南までいろいろな食材が豊富です。春夏秋冬それぞれの旬もあるし、海にも囲まれている。番組でいろいろな場所に行かせてもらって、改めて日本はすごいな、と思います。

西川:食材も食のレベルも世界のトップ。バランスの取れた和食のお陰で平均寿命も世界一でした。しかし、近年、食生活の欧米化などによって、健康に過ごせる時間を意味する「健康寿命」が男女ともに寿命より10年も短くなってしまっています。このまま行くと、さまざまな生活習慣病によって、日本人の寿命自体も短くなる懸念が出て来ています。

尾身:人間の内臓が食事に追いつくのって三代かかるそうなんです。日本の食事が欧米化したのは戦後ですよね。特に大腸がんが増えているというのは、腸の長さと食生活がマッチしてない。寿命が短くなるのもそのせいかもしれません。

西川:医食同源と言うように、体は食べたものでできています。健康のためにも食は重要ですね。それに、あざみ野周辺には小さなお子さんを持つお母さんもたくさんいるので、子どもの時から食事には気を使ってあげていただきたいですね。尾身さんご自身もあざみ野と関わりがあるのですね。

尾身:はい。あざみ野にDaiというハワイアンレストランがあるのですが、そこのデザートのレシピを提供しています。いつも来ると、若いマダムのパワーが動き出す可能性があると感じます。

西川:食は美と健康の素。美しく元気なあざみ野マダムに、新たな“あざみ野STYLE”の食を生み出して行っていただきたいですね!

尾身奈美枝さん トピックス

尾身奈美枝さん トピックス

生放送でニンニクを使った料理を披露。こどもからお年寄りまで、おいしく食べられて元気になれるカンタンなレシピが紹介されます。たくさん買ってしまったときの使い切りアイデアも満載。夏の疲れが出るシーズンを手作りの食事で乗り切りましょう。

吉元由美 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

吉元由美 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

吉元由美 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

人を喜ばせて「素敵スイッチ」をオン!
杏里や平原綾香をはじめ日本を代表するアーティストの楽曲に歌詞を提供してきた作詞家の吉元由美さん。憧れの職業に就き、人々の記憶に残る作品を紡ぎだす原点はどこにあったのか?そして、歌詞を創り上げるまでには、どのようなドラマがあったのか?貴重なエピソードには、さまざまな気付きがあふれています。お相手は「あざみ野STYLE」応援団代表でマーケティング界のカリスマ、西川りゅうじんさん。誌面のみならずWeb版もぜひご覧ください!

西川:吉元さんは、平原綾香さんの「Jupi ter 」をはじめ、数多くのアーティストの作詞を手がけられていますが、大学卒業後は広告代理店に勤務されていたそうですね。どういうきっかけで作詞家になられたのですか?

吉元:私はもともと、人生は持ってうまれた才能をいかして生きていくものだと思っていました。でも、自分には特別な才能なんて何もないと思っていました。そんな、あるとき「作詞家になってみたら?」と言われたんです。確かにクリエイティブなことに興味はあるし、音楽も好き。「どうしたらなれますか?」と聞いたら「勉強すればなれるよ」と返ってきました。勉強してなれるなら、挑戦してみようと思いました。

西川:自分探しですね。勉強というと学校に通われたんですか?

吉元:いえ、独学です。本や映画をたくさんみて、名作といわれる詞を写経するんですね。言葉が腕から伝わって、刻み込まれるイメージ。詞の構成がわかり、楽曲を俯瞰して見られるようになりました。

西川:そこからどういういきさつで、作詞家デビューされたんですか?

吉元:知人の紹介で芸能プロダクションを訪ね、書き溜めた作品をプレゼンしたんです。すると、その場で新人アイドルの楽曲を2曲分書いてくださいと発注を受けました。そのとき、「あ、私の人生が変わった」と思いました。

西川:それはすごいですね!でも、すぐに稼げるわけじゃない。会社に勤めながら作詞家デビューされたんですか?

吉元:そのオファーを受けたのが4月でリリースは6月でした。私は、7月には会社に辞表を出しました。確かに1、2曲書いたからといって売れる保証はありません。でも、私は大きな運をつかみたかった。会社のお給料を保険のようにして、人生を歩みたくはなかったんです。

西川:背水の陣でのぞまれたわけですね。そんな姿勢が運を引き寄せるカギになったのでしょう。吉元さんの生き方は多くの女性達の憧れです。一方で、心の中に夢を抱きながら、一歩を踏み出せない人も数多くいます。

吉元:人は必ず、果たすべき目的を持って生まれてきています。そもそも私たちは、親から命を与えられているということを忘れてはいけません。取り柄のない人なんていないはず。自分を信じてそれを見つけにいってほしいですね。

西川:人それぞれ存在意義があるということですね。自分にはやりたい仕事も、いい出会いもないと思っている人にメッセージはありますか?

吉元:自分のためと思うと限界がきますが、人に喜んでもらいたいという発想に変えると何かが見えてきます。神様になったつもりで考えてみるとわかりやすいでしょう。神様なら、自分から働きかけて、人に喜びを与えている人にチャンスを与えてあげたいと思うはずです。takeからgiveへ発想を転換してみることですよ!

西川:吉元さんといえば、杏里さんの楽曲を数多く手掛けておられますね。彼女の曲に携わるようになったのは、いつ頃のことですか?

吉元:作詞家としてデビューして3年目でした。当時、杏里が「キャッツアイ」や「悲しみが止まらない」でヒットを飛ばしたころです。レコーディングのアルバムで数曲手掛けた後、アルバム「サマーフェアウェルズ」の1、2曲ほど参加したあとに、ロンドンでレコーディング予定のアルバムをコンセプトづくりからお手伝いしました。

西川:杏里さんの登場は時代の音として世の中に衝撃を与えました。一気にスターダムへと駆け上がって行った杏里さんのアルバムをコンセプトづくりからゆだねられるとは、すごいことですね!

吉元:自分としてもチャレンジでした。同時に杏里には、当時すでにスターだった松任谷由美さんや竹内まりやさんとは別のもうひとつのストリームを創り出せるだけの可能性を感じました。私はそれを「適齢期サウンド」というコンセプトで同世代の女性たちの気持ちをくすぐる世界観を創り、発信して行こうと考えました。

西川:杏里さんは作曲をされていたけれど、作詞は吉元さん。まさにお二人によるコラボレーション、協働。楽曲制作のパートナーですね。一方、平原綾香さんの「Jupiter」を手がけられたのは今から10年程前になりますでしょうか?

吉元:はい。レコード会社から新人がデビューするということで話があり、ホルストの原曲に日本語で歌詞を付けるということはすでに決まっていました。そこで平原さんが歌っているのを初めて聴いてみて、低音からぐっーと上がってくるような歌声に、アメリカ・セドナで見た、遠くの地平線に雷が落ちるイメージが浮かびました。「平原さんの声は天と地をつなぐエネルギーなんだ」と思いました。

西川:特別な歌声を持っているというのを確信された。従来の歌謡曲とは何か違うメッセージを込めようと思われたんですね。

吉元:今までも、私自身のメッセージや哲学を詞に盛り込んだことはありましたが、平原さんはそれを自分自身の声としてストレートに表現できるアーティストでした。私が感じた中で一番大事なことを表現すればいいと思いました。「私のこの両手で何ができるの?」という詞がありますが、自分から働きかけていくと良い作用が波紋のように広がります。「利他」の精神はこれからの時代のキーワードになるはずです。

西川:見返りを求めず、自ら種をまくと、花が咲き、実を結びますね。喜んでもらうことを自らの糧とすることこそが人生の幸せにつながるのでしょう。

吉元:「よろこんでもらえましたでしょうか?」という、ある種の、芸人スピリットですよね(笑)。心境が変わると変化も起きます。人を喜ばせることは、自分の「素敵スイッチ」を点火することなんです!

西川:一人でも多くの人に心のスイッチをオンにしていただきたいですね。ありがとうございました!

吉元由美さん トピックス

吉元由美さん トピックス

吉元さんの歌詞にも込められている美意識やメッセージを学び、自分らしくいきていくためのサロンセミナー「吉元由美のLIFE ARTIST」が開講中です。感性を磨き、運をつかんでみませんか。詳しくは、事務局03-5326-3601まで。

青木晃 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

青木晃 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

青木晃 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

アンチエイジングで、心と体を健康に!
今回の対談には、日本のアンチエイジング(抗加齢)医学の第一人者としても知られる青木晃院長をお招きし、現代社会において、より健康に生き抜く秘訣を中心に様々なお話を伺いました。お相手は「あざみ野STYLE」応援団代表、マーケティング界のカリスマ、西川りゅうじんさん。約2時間の対談では、青木先生が自衛隊医官時代に体験された「地下鉄サリン事件」の裏話も飛び出しました。今回は誌面だけでなく、WEBも必見です!

西川:青木先生は早くから「アンチエイジング」に着目して来られましたね。そのきっかけは何だったのでしょうか?

青木:私が防衛医大で研修医をしていた時に、担当していた患者さんが重度の糖尿病でお亡くなりになったのがきっかけです。60歳ぐらいの男性でしたが、非常に過酷な闘病生活でした。失明、透析、脳梗塞などでほとんど動けない状態。奥様が付きっきりで看病していたのですが、家族の心労も大変なものでした。これを見て「糖尿病って、こんなに酷い末期を迎えるのか…」と衝撃を受けました。糖尿病という病気は、日頃の生活に気をつけていれば防げるもの。しかし、多くの患者が予備軍の状態を放置し、病気になって、はじめて事の重大さに気付くのです。これは、今の保険制度ではある意味仕方ないことなのですが、この状況をどうにか変えることはできないかと思い、アンチエイジングに注目しました。

西川:なるほど。ヒトは習慣の動物ですからね。糖尿病をはじめ生活習慣病は、まさに日常の生活の習慣が原因。病気が発病してから治療することより病気にならない生活習慣こそが大切ですね。

青木:アンチエイジングとは「元気で長寿を享受するための理論的、実践的科学」です。私は実践を通じて、アンチエイジングの概念を世に浸透させたいと思っています。病気にかかりにくい身体を作ることは、男性はよりかっこよく、女性はよりきれいで美しくいることに繋がるのです。

西川:戦後、「GNP」(国民総生産)ばかりを、数字をばかりを追いかけて来た日本人が、「新GNP」=元気・長生き・ポックリを求めるようになって来ました。寿命より、自分で自立して生きられる健康寿命は10年も短いですからね。日常的にアンチエイジングを意識することは大切ですが、具体的には何に気を配るべきですか?

青木:基本は3つです。食、運動、生き甲斐です。まずは食ですが、老化というのは体の中に活性酸素が発生すること。それを予防するためには、新鮮で作り手のはっきりした野菜を食べること。緑黄色野菜がいいですね。また、体に悪いものを入れないことも重要です。食品の成分を見て、○○安息香酸とか見慣れない文字があるものは極力避けていきたいですね。

西川:現代は利便性を追求するあまり、合成や人工のものが溢れています。こういう世の中だからこそ、より一層食べ物への注意が必要になってきますし、子供への食育も大切になってきますね。

青木:その通りです。また、運動では歩くことが大切です。私は4年間、休まずに一日一万歩を歩いています。毎回、ニンテンドーDSを使ってゲーム感覚でやっているのが、続けるための秘訣ですね。「やらなきゃ」という気持ちよりも、楽しむ姿勢が大切だと思います。

西川:そうですね。私も毎日のようにジムに行き、筋トレと水泳をしています。最初は億劫でしたが、ジムに通ううちに友達ができたりして、今ではすごく楽しんでいます。そして、3番目の生き甲斐はすごく共感できます。一番大切と言っても過言ではないと思いますが、いかがでしょう。

青木:そうですね。生き甲斐や夢、希望、目標があるのとないのでは全然違います。冒険家の三浦雄一郎さんが良い例ですね。私は順天堂大学時代に三浦さんのバックアップをしていたこともあるんですが、彼の場合、食は結構いい加減なんですよ。いっぱい食べるし、飲むし。でも、運動と生き甲斐はすごいですよね。62歳でエベレスト登頂を決めて、70歳で達成。今年で80歳になるのに、3度目のチャレンジを表明していますからね。

西川:三浦さんは本当にスゴい方ですよね。エベレストのような低気圧、極寒の地はいるだけでも大変です。私も以前、高地であるメキシコシティに行ったことがありますが、まったく体が動かなかったですしね。

青木:エベレストのような高地においては、年齢+70歳まで身体能力が落ちると言われています。その状態に身をさらすのは、ある意味究極のアンチエイジングですよ。

西川:なるほど。男性の場合、仕事が生き甲斐という人も多いですよね。私の周りでも、仕事に没頭していた人が定年を迎えると、一気に老け込んで元気を失くす方が多いですね。とにかく、食、運動、生き甲斐。この3つを意識することが体を健康に保つための秘訣ですね。先生のFacebookを見ると、毎朝のランニングやワインを楽しんでいる姿がアップされています。まさに、この3つを実践しているなという印象です。

青木:私も西川さんのフィードを見て、「すごく運動をしているな」と関心していますよ。確かにFacobookは、その人のライフスタイルを垣間みることができるので、アンチエイジングに最適のツールです。私の周りには、アンチエイジングを意識している方が多いですが、皆運動と食に気を遣っているし、遊び方も上手ですよね。共通性が見出せます。

西川:そういう方は、多くの人にとってのロールモデルになりますね。「走らなきゃダメ!」とか「食に気をつけて!」と説教するのではなく、その人のライフスタイルを見て「こうなりたい」と思うことは、非常に前向きですよね。

青木:私が毎日走っているのを見て、友達がランニングに興味を持ってくれることもあります。あれだけ「走れ!」、「食べるな!」、「飲むな!」と患者さんに説教してもダメだったのに、向こうから興味を持ってアプローチしてきてくれることを考えると、これはまったく新しい医療だとも言えますね。

西川:先生は今でこそ、アンチエイジングの権威として知られていますが、地下鉄サリン事件にも大きく関わっていたそうですね。

青木:ええ。私は当時、医官でしたので。確か第一報は、地下鉄で毒ガスがまかれたらしいというものでした。4人が亡くなっていて、他の人も生死に関わる状態であるとのこと。自衛隊にも招集がかかり、私は聖路加国際病院に派遣されました。

西川:もっとも患者が多かった病院ですね。院長の日野原重明さんが、大量受け入れができるように設計していたという。

青木:そうですね。聖路加には陸軍の医官である私と、海軍、空軍の医官、看護官が向かいました。その時、毒ガスが原因だということは、わかっていたのですが、それが何かがわからい状態でした。「アセトリトリル中毒じゃない?」と言われていましたが、それで死者が出るとは考えにくい。患者を見てみると、鼻水や喘息のような咳、目の頭の痛みを訴えていました。決定的だったのが、見たことのないようなピンポイントの縮瞳。これを見てサリンだわかったんです。

西川:先生がその判断を下したんですか?

青木:私は士官学校で、嫌というほど化学兵器の勉強をしていたんですね。その時は「こんなの、いつ役に立つんだよ」と思いながら勉強していましたが、まさかこんなに早く役立つとは思ってもいませんでした。サリン、ソマン、VXガスなどの毒ガスについても、かなり勉強していたので、症状や対処法も熟知していました。なおかつ、私は事件の2ヵ月前にアメリカとNATOが協同で編集した特殊武器防護の本の翻訳を手伝っていました。私が化学兵器の章を担当していたこともあり、最新事情にも精通していたんですね。

西川:先生がいたからサリンだとわかったとは…。聖路加国際病院に運ばれた600数名の患者さんのパニックを救ったということですね。

青木:治療が一段落した時、休憩室でテレビを観ていたら速報が入ってきましてね。「自衛隊の毒ガス専門医がサリンと断定」とううニュースが流れたんですよ。「誰のことだろう?」なんて、みんなで話していたら、それが僕だったみたいで。夕方に自衛隊病院に帰ったら、糖尿病の専門医から毒ガスの専門医になっていましたよ。

西川:今でこそ、こうやって語ることができますが、あの事件の裏側にはこんなことがあったんですね。

青木:その後、アメリカやイスラエルの軍医が来て「これだけの濃度のサリンが撒かれて、死者が4名に抑えられたのは奇跡だ。初期治療の賜物だ」と言っていただきました。また、佐々淳行さんの本に取り上げていただき「聖路加国際病院の日野原院長と青木という医官が職務を超えて連携したからこそ、被害を最小に留めることができた」とも書いていただきました。それまで、普通の自衛隊員だったんですが、この件で立派な勲章をいただくことができました。

青木晃さん トピックス

青木晃さん トピックス

青木先生の生き甲斐の1つでもあるワイン。好きが高じて2011年に日本ソムリエ協会認定「ワインエキスパート」の資格も取得。この春から恵比寿にあるワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」で、講師を務める。詳しくは、レコール・デュ・ヴァン 0120-844-055まで。

北原照久 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

北原照久 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

北原照久 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

たった一度の人生。夢を持って思いっきり楽しもう!
今回の巻頭特別対談では、10月2日に行われた、公開対談「楽しみながら夢を実現する生き方とは?」の模様を紹介します。ゲストには「開運!なんでも鑑定団」でおなじみの、おもちゃコレクター北原照久さんをお招きしました。お相手は「あざみ野STYLE」応援団代表、マーケティング界のカリスマ、西川りゅうじんさん。まさに夢を形にし続けてきたお二人に、夢を実現する秘訣を語り合っていただきました。

西川:北原さんは、ホントに「楽しみながら夢を実現する生き方」を実践しておられますが、夢を実現するために心がけていることはありますか?

北原:そうですね。僕は夢を叶えるために「自分の夢を、熱く情熱的に楽しく語る」ことを心がけてきました。とにかく、一見無理だと思われるような夢でも口に出すんです。たいてい100人に話すと99人は「無理」と言う。でも、必ず一人はおもしろがってくれる人が出てきます。これが1,000人であれば10人、一万人であれば100人が味方に付いてくれることになるんです。100人が協力してくれれば、大抵の夢は実現できます。

西川:「有言実行」ですね。北原さんのように明確な夢を持って、その夢を腹の底から熱く情熱的に語れる人はそうそういません。人間は人の間と書く通り、同じ夢を持つ仲間を増やすことが夢の実現の必須条件に違いありません。

北原:「夢が叶う」と言いますが、「叶」という文字は、口偏に十と書きますよね。口から10回、言葉が放たれると叶うということです。ただ、私はこれでは足りないと考えています。だから、線を一本足して千回、それでもダメなら1万回、とにかく夢を熱く語ることが大切なんです。

西川:そして、「誠実」に語ったことを実行することですね。「誠」とは「言」ったことを「成す」と書く。そうすれば「実」りますね。

北原:私はこれまで「おもちゃ博物館を作りたい」、「加山雄三さんに会いたい」、「吉永小百合さんに会いたい」、「サンダーバードに乗りたい」という夢を、学生時代から想い続けてきました。今年で64歳になりますが、これらの夢を実現できたのも、口に出して言い続けたからだと考えています。

西川:学生時代から43年想い続けて、60歳で吉永さんに会えた時は感無量だったでしょう。

北原:メディアでもずっと「好き、会いたい」と言い続けてきました。お会いした時は、うれしすぎて、記念のTシャツを作ったほどでした(笑)。

西川:そこまで思ってもらえれば、吉永さんも女優冥利に尽きますね。夢を叶える秘訣は何でしょう?

北原:夢が実現した後のことを具体的にイメージすることです。例えば「吉永さんに会ったら、どんな話をしよう?」と、具体的に考えるんです。

西川:夢を天然色で見えるほど具体的に想い続けると、気が付けば実現しているものですね。ニュートンは万有引力の法則を発見した時に「なぜ発見できたのか?」と聞かれると、「いつも、それを考えていたから」と答えました。まさに思考が現実化するのですね。

北原:具体的に楽しいイメージが描ければ、その夢は実現することができます。とにかく楽しい目標があれば、そっちに向かって動きだすようになります。あとは継続すること。「継続は力なり」です。思い続ければ、いつか夢は叶います。実現できていない夢は、まだ夢の途中なんですよ。

西川:あきらめない限りは失敗した訳ではないですからね。どんな状態でもプロセスをおもしろがることができれば道が開けますね。

北原:その通りです。むしろ、実現よりもその夢に近づいていく自分を実感するのがうれしいのではないでしょうか。自分でも「そろそろ実現するんじゃないか?」って予感がするんですよ。アーティストがこんなことを言っていました。その人は、路上ライブからキャリアをスタートさせて、メジャーデビューを果たした方なんですが、「神様、成功の近道があったら教えてください。私はその道を通らないようにしますから」と。誰もいないライブに一人、ファンが増え、一人が10人になり、10人が20人になっていく。どんどん自分の歌を聞きにくる人が増えていったことに心底ワクワクしたそうです。もし、すぐにデビューすることができたら、その感動を味わうことは出来なかったというんです。私だったら、すぐにでも、その近道を通りたいと思ってしまいます(笑)

西川:昔から成功には「運・鈍・根」が必要と言いますが、小さなことにクヨクヨしない鈍とコツコツやる根気も大事ですが、やはり、運が最初に来ますね。

北原:運は大事ですね。絶対に運がよくないと、夢は実現できません。

西川:私達は、今、こんな平和で豊かな日本に生きているだけでも運がいい。そして、生きているだけでも運がいいし、さらに元気ならば、それ以上、運のいいことはないですね。

北原:聞くだけで、3割、4割運がよくなる話をお教えしますよ。

西川:北原流開運術。それは必聴ですね!

北原:野球で3割バッターと言えば一流選手ですからね(笑)運をよくするための10か条というのを僕は唱えているので、それを時間の許す限りお伝えします。
 まずは、プラスの発想をすること。生きていれば、悲しいことや辛いこと、たくさんあると思います。もし、そういうことが重なったら、自分をバネだと考えてください。バネって、押さないと飛ばないですよね。つまり、今起きている辛いことは、飛び上がるための前兆。そのイメージを持っていれば、辛いときにも耐えることができます。

西川:なるほど、気持ちの持ち方一つで人生は変わりますからね。りゅうじん流開運術は簡単です。マイナスのことを言いそうになったら、語尾をプラスの言葉に置き換えるんです。「ダメだ」と言いそうになったら、「ダメじゃない。これからだ」と言ってしまうんです。

北原:りゅうじんさん、それ僕が最後に言おうと思ったのに(笑)まあ、それは置いておいて、次は勉強することと素直さ。勉強はすればするほど、人生は豊かにすることができます。

西川:インドのガンジーが言った、「明日死ぬと思って生きなさい。永遠に生きると思って学びなさい」と言葉が大好きです。人間は一生勉強ですね。

北原:いい言葉ですね。勉強が好きになると、テレビでもラジオでも、いい話をキャッチできるようになるんですよ。そしたら、それを他の人に話す習慣を付けるといいですよ。話すことで、その人にも感謝されるし、話が自分のものにもなります。

西川:リアルライフにおける、Facebookのシェアのようなものですね。

北原:そうですね。あと大切なのは、3カン。つまり、関心、感動、感謝。これがないと、やはり運は下がっていきますよね。これらをしっかりと意識することが大切です。

西川:勉強になります。感動とは、感じて動くと書きますね。感じたら具体的に動かないと、感動したことにはなりません。言葉や文字や行動に表わしてこそ本当に感動したのだと言えます。

北原:そうですね。例えば、夕焼けを見て僕が「キレイだね」と言う。それに対して、女性が「別に」と言う。それじゃ終わってしまうんですよ! ちゃんと感動を表現してくれれば、その後に話したい気持ちにもなります。僕は、普段からしっかり「ありがとう」や「おいしい」をしっかり言葉にして伝えようと心がけています。

西川:「ありがとう」とは「有り難い」。つまり、「なかなかない」ということですね。「生きてるだけでありがたい」「あなたがいてくれてありがたい」と何事にも感謝していれば、どんどん運は良くなりますね。

北原:他にも、「ツイている人と付き合うこと」、「親孝行をすること」、「人を褒めること」、「自分はツイていると思うこと」等々。これらを心がけていただければ、運が上がっていくはずです。詳しいことは、僕の本「夢の実現-ツキの10カ条」に書いてありますので(笑)

西川:私達は夢を実現するために生きているんです。人生二度なし。今日は残りの人生の最初の一日です。さあ、今日から夢の実現に向けて歩み出しましょう!ありがとうございました。

中博さん トピックス

中博さん トピックス

著書「facebook『100の言葉!』-こころにひだまり」を発売。今年のはじめからfacebookをはじめた北原さん。毎朝投稿する「希望の言葉」は、人々のこころに暖かい灯りをともす。毎日1000人近くの「いいね!」に支えられた珠玉の「100の言葉!」が詰まった一冊。

中博 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

中博 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

中博 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

日本の発展を支えた人が住む街 あざみ野の過去と未来を語る。
松下電器産業(現パナソニック)で手腕を発揮し、創業者・松下幸之助氏の願いを実現するため奔走、現在は経営コンサルタントとして活躍している中博さんが登場。あの『課長島耕作』のモデルともなった中さんのお相手は、『あざみ野STYLE』応援団代表で、地域と産業の元気化の達人、西川りゅうじんさん。今回はお二人にあざみ野の過去・現在・未来について語り合っていただきました。

西川:中さんは、あざみ野在住の方々とも御縁があるのですね?

:「あざみ野会」という会合があって、その仲間とよくゴルフをしますね。実は、あざみ野やたまプラーザには、僕らの同期やちょっと下の世代の人が結構いるんです。20年ほど前のバブル前後の頃、青山や西麻布は手が届かなかったけど、あざみ野なら100坪くらいの家が買えたんですよね。

西川:日本が“ジャパン・アズ・ナンバーワン”と呼ばれ輝いていた頃、その輝かせた人達が住む街でしたね。

:そう。当時、高級な日本を作るために、多くのビジネスマンが海外に勉強しに行ったんです。そして、日本に帰ってきたとき、欧米スタイルの家具や車が置ける広い家を求めたんですよ。そういう意味でも、あざみ野は広い土地があったから人気が出たんです。日本を世界一にするために働いた人たちが、住み始めた場所なんですね。

西川:今も、あざみ野には日本の黄金時代のそんな残り香があります。

:あざみ野は、先進国の仲間入りを果たすために奮闘した根っこの人たちが住む街だから、バブルが弾けても良質なライフスタイルは残ったわけ。次の世代にも、そのDNAを受け継いでほしいな。

西川:豊かな時に、あざみ野で蒔かれた種から芽が出て、花が咲き、実を結んだ。でも、これからが大切です。熟した実を発酵させるか腐敗させてしまうか。

:その通り。そのためには、街の人の努力が必要。ただ住めるだけじゃなくて、エンターテインメントがあって、住む人もいきいきしている人間的な街にできるかどうかがかかってる。

西川:結局、街づくりとは人づくり。街は住んでいる人が創るものですからね。住む人の意識とライフスタイルが街並みや家並みを時間をかけて醸成して行くんです。

:そのためには地域の歴史を作って、伝えていかなきゃいけない。あざみ野考古学も必要だし、日本が成長し始めた頃のあざみ野を、誰かが記述したらおもしろいんじゃないかなって思いますね。当時の人たちの言葉を集めるだけでも、何か発見があるはず。

中博 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

西川:その通り!ふるさとの自然・風土・歴史・文化に関する教育、“郷育”を世代を超えて伝えて行かないと人は根なし草になって“愛郷心”を持てないんです。

:そうなんですよ。そして、歴史を伝えたら、新たな要素も取り入れて変化を起こすべき。そのためには「よそ者」「バカ者」「若者」の3つの者が必要。ときには、よそ者覚で街を外から見ることも大事だし、常識だけじゃ変化はできないからバカ者になることも重要。もちろん、街づくりには若さも大切です。この要素を入れて、さらに充実したあざみ野スタイルを作ってほしいですね。

西川:日本人はスケールが小さいとか、国際性に欠けるとか、クリエイティビィティに乏しいなどと思っている人も多いですが、日本の歴史をひもとけば、その真逆であることがわかります。「よそ者」を受け入れるキャパシティがあったわけです。

:そうですね。特に京都は、長い歴史を紐解いていくと、中国や韓国、ペルシャなどから取り入れたものを上手に同化させながら文化を作っていますね。

西川:奈良の大仏を忘れてはなりません。奈良時代の752年、聖武天皇が建立しましたが、今も昔も世界最大の金属で鋳造した仏像です。しかも表面を金メッキして、さらにその仏像を容れる世界最大の木造の大仏殿を造った。お披露目の開眼会には、地球が丸いことさえ知られてない、辞書もない時代に、ペルシャやインドやベトナムからも使節を呼んでいます。

:昔の人のほうが、パイオニア精神は強いと思いますね。外国に向かう船も半分は沈没したと思うけど、それでも多くのお坊さんは勇気を持って海外に向かい、よそ者になった。今の日本には、よそ者になる勇気も、よそ者を受け入れる勇気も足りないと思います。

西川:たしかにそうですね。今や商社や外務省に入った人でさえ、海外勤務を嫌がるようです。超円高なのに海外への留学生も減る一方です。あまりに内向き志向になり過ぎですね。自ら「鎖国」しているようなものです。

:ほんの少し前は、今よりもずっと柔軟だった。松下幸之助をはじめ、高度経済成長期を支えた世代の人たちは「異端」を歓迎したんですよ。「異端」というのは、社会的にありえないことやもののことです。松下幸之助の代名詞ともいえる「二股ソケット」なんて、まさに異端。当時ではありえませんでしたが、全国に広まって認知されれば正統なものになるんです。『課長島耕作』は、まさに異端の行動者ですね。現代のビジネスマンは異端を怖がるし、上司も道を外れないように誘導する。その結果、縮小傾向にあるんだと思うんです。全国的に、島耕作みたいなビジネスマンが少ないんですよね。

西川:人と異なることこそが価値を生み出すのに、「KY」とか言って、みんなお互いの空気ばかり読んで保身に走っている。人と異なる勇気を持つためには何が必要でしょうか?

:自分で発想して行動し、最後まで責任を持って行うことじゃないかな。海外出張ひとつとっても、今は上司の命令を受けてから動くけど、僕らの時代は自分で申請して、海外に行ってた。上司の命令通りにパフォーマンスするだけじゃなくて、ときには勝手に動くことで、新たな発想やビジネスが生まれると思うんです。

西川:「草食系」の男子ばかりが増えていますからね。今や草を食べる「草食系」を超えて、まったく動かない「植物系」の男子まで出て来ています。一方、「肉食系」女子が増えていますね。

:そうなんですよ。新商品の開発でも、最近は女性が開発したものがヒットしてる。女性は「いつクビになってもいい」って、腹を括ってる感じがするんですよ。その点、男性は上司に言われた通りに動いてばかりで、本当に草食化が進んでるって感じるな。

西川:日本の祖は女神である天照大御神(アマテラスオオミカミ)ですからね。日本が元気を取り戻すためには、お隠れになっていた平成の女神に天の岩戸から出て来ていただいかないとなりません。

:女性版島耕作が出てくる時代なのかもしれませんね。

中博さん トピックス

中博さん トピックス

ミャンマーに非常なる関心を持っているという中さん。日本の終戦後の活気ある風景が、見られるからだそうだ。アウンサン・スーチーさんの存在も関心事の一つ。今年11月、30数名の企業経営者の方々を連れて、視察団長としてミャンマーを訪れる。

山崎大地 × 西川りゅうじん 宇宙対談(後編)

山崎大地 × 西川りゅうじん 宇宙対談(後編)

山崎大地 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

“宇宙産業革命”が起こる!あらゆる分野にチャンス到来!
山崎大地さんと西川りゅうじんさんによる巻頭特別“宇宙”対談。前半は本格化する宇宙旅行の現状と、お二人が宇宙で実現させたい“夢”について語ってもらいました。山崎さんが宇宙でハネムーンがしたい!といえば、“宇宙婚”をプロデュースする!と応えるりゅうじんさん。後半も引き続き、白熱する宇宙トークをどうぞ。

西川:そういえば、私たちがお話しているこの場所(バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°)で扱っているバイオラバー製品も、実は宇宙事業と大きな関わりがあるんです。バイオラバーの前身ともいうべき特殊ゴム素材が、早くから宇宙ロケットの機体断熱材として使用されているんですよ。

山崎:それは誇り高いですね。スペースシャトルには地上で開発された技術や素材の総結集が搭載されているので、断熱材や耐熱タイルなどに日本製の素材が多く使われています。日本の技術はとても高く、そのまま宇宙で使用できる商品や、宇宙向けに開発されたものが地上の生活に役立っていることも少なくありません。NASAで公式に使用されているカメラはニコン、腕時計はカシオ、シューズはミズノ、CDプレーヤーはパナソニックなどがあり、厳しい基準や検査を通って採用されているんです。

山崎大地 × 西川りゅうじん 宇宙対談(後編)

西川:実は私の父が創業して弟が経営する会社で開発した製品もNASAで使用されているんです。ガラスとアルミ箔を張り合わせる特殊技術なんですが、NASAの検査に合格するのはとてもハードルが高いです。大変名誉なことですが、開発コストがかかるので儲けなどありませんが(笑)。

山崎:それでも、そういう特殊な技術や素材は、今後の宇宙ビジネスに大きな関わりを持ってくるはずです。私は近い将来、“宇宙産業革命”が起こると考えています。これは、20年くらい前のIT革命と同じような現象です。もとは研究施設や軍事での利用が中心だったインターネットが、今や研究分野だけでなく教育や医療、あらゆる分野にまで普及し、子供からお年寄りまで当たり前に使うようになりました。それと同じように、あらゆる分野の人たちが宇宙向けの技術や商品を開発し、それを利用する時代がやってくると思います。

西川:今やITに関連しない業種は存在しないといってもいいですよね。同じように宇宙ビジネスにもいろんな業種の人が関われば、もっとおもしろくなるに違いありません。

山崎:昨年、妻は宇宙飛行士を辞めて、さまざまな分野に経験を還元する仕事をスタートさせました。私も同じく教育・医療・飲食・衣服など、さまざまな分野の人たちと協力することで、宇宙産業のさらなる広がりをサポートしていきたいと考えています。

西川:山崎さんは、実際に宇宙旅行に行く人とその家族のサポートもしているそうですね。

山崎:はい。現在私が支援しているのは約2時間の宇宙旅行に申し込んでいる男性で、その方は結婚されていて3歳の娘さんもいらっしゃいます。私は宇宙旅行で残された家族の気持ちが分かるので男性はもちろん、そのご家族のサポートもしていきたい。宇宙に行く本人は夢を叶えることで頭がいっぱいで怖くもなんともありませんが、残された人は不安でいっぱい。家族みんなで宇宙旅行を楽しめる仕組み作りこそ重要だと思います。

西川:山崎さんご家族の場合は、奥様が宇宙に行く際に、お嬢さんの不安を取り除くべく、お嬢さんが大切にしていたぬいぐるみを宇宙に持っていったというエピソードは有名ですね。

山崎:そうですね。ぬいぐるみを連れて行ってもらうことで少しでも娘の不安を解消し、分身が宇宙に行っているという当事者意識も持ってほしかったんです。宇宙飛行士の家族を支援することの大切さは何も宇宙飛行だけに限ったことではなく、育児や介護などにも共通すると思います。子供やお年寄りをサポートする体制は数多くありますが、育児をしている親や介護をしている方を支援することも忘れてはいけません。人のために何かをしている人は実は精神的にとても負担が大きく、それをケアすることも重要なのです。

西川:宇宙旅行がSFではない時代を迎えて、一言、メッセージをお願いします。

山崎:今後は限られた人だけが宇宙に行くのでなく、誰もが宇宙に行ける時代が確実にやってきます。そうした時に、ひとごとではなく自分が宇宙に行ったらどうしようという発想を普段の生活でも持ってほしいですね。海外同様、日本でも宇宙に関する話題がもっと増えて当たり前になると、さらに楽しい世界が待っていると思いますよ。

山崎大地 トピックス

山崎大地 トピックス

山崎さんの最新著書「宇宙家族ヤマザキ」(祥伝社)を題材とした舞台が公演決定!
【公演名】「宇宙家族ヤマザキ~2022年、娘から届いた宇宙からのラブレター」
【日時】2012年6月29日(金)19:00~ / 6月30日(土)14:00~19:00~ / 7月1日(日)13:00~17:00~
【場所】 吉祥寺シアター

1972年、神奈川県鎌倉市生まれ。東海大学工学部航空宇宙学科卒業後、三菱スペースウェアに入社し運用管制官として、日本初の有人宇宙実験棟「きぼう」の運用準備に従事。2000年に山崎直子さんと結婚。現、(有)国際宇宙サービス代表取締役社長。詳しくは、http://uchu-shokudo.com/next まで

山崎大地 × 西川りゅうじん 宇宙対談(前編)

山崎大地 × 西川りゅうじん 宇宙対談(前編)

山崎大地 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

宇宙旅行はゴールでなくスタート。自分のやりたい夢を実現しよう!
2010年4月に日本人初のママさん宇宙飛行士として、スペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗した山崎直子さんを妻に持ち、当時、直子さんをサポートする傍ら、家事や愛娘の育児、両親の介護、そして自身の仕事に奮闘した山崎大地さん。ここでは、ご自身の体験談と今後の宇宙事業に関する可能性を語ってもらいました。インタビュアーは『あざみ野スタイル』応援団代表のマーケッター西川りゅうじんさん。二人の宇宙ロマンあふれる対談をご紹介!

西川:山崎さんと言えば“宇宙主夫”ですね。奥様の直子さんとともに“宇宙の伝道師一家”として幅広く活躍されていますが、今、世界中で宇宙への関心が高まっていますね。

山崎:そうなんです。日本ではあまり知られていませんが、実は今年は宇宙旅行時代の幕開けとなる記念すべき年になりそうです。というのも早ければ年末、遅くとも来年には、以前に比べて格安の宇宙旅行が実現します。

西川:これまでに民間人で実際に宇宙旅行をした人はどれくらいいるんですか?

山崎:2001年に最初の宇宙旅行者が誕生してから、これまでに世界で7人の方が宇宙旅行に行っています。その中には、エンターテインメント集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」の創設者やマイクロソフトのプログラマーなどがいて、費用は10日間で一人およそ25億円。一方で、今年をメドに開始される宇宙旅行では、約2時間の宇宙体験ツアーのようなものが約2000万円で楽しめるようになります。すでに約500人が費用を支払い、仮予約の人も世界中に5万人いると言われています。

山崎大地 × 西川りゅうじん 宇宙対談(前編)

西川:本格的な宇宙旅行時代の到来ですね!

山崎:はい。さらに現在、アメリカでは10ヵ所以上、そしてハワイやシンガポール、ドバイなど地球上のあちこちに「スペースポート」と呼ばれる宇宙船発着所を準備中で、数年以内には開設予定です。この発着所が開設されると、一度、宇宙船で高度100km以上の宇宙空間に飛び出して別の場所に戻るだけで世界中のどこへでも約2時間で行くことが可能になります。

西川:奥様の直子さんは既に宇宙へ行っていますが、次は山崎さんご自身も宇宙旅行へ出かける計画を進めておられるんですね。

山崎:ええ。実は私もその2時間の宇宙旅行に申し込もうと考えています。私には学生時代から、「宇宙で結婚式がしたい」という夢がありまして、それを何としても実現したいんです。宇宙旅行を予約している人の中でも、「宇宙でやってみたいこと」の人気NO.1がウエディングだそうですよ。

西川:“宇宙婚”がブームになるかもしれませんね。“ブーケトス”とか“ケーキ入刀”とか大変そうですけど(笑)。でもそうすると、“宇宙牧師”や“宇宙神主”も必要になりますね! そんな時代になれば、私は“宇宙婚”のプロデュースをやりますよ。有名人の宇宙での結婚式を宇宙中継すれば大ブレイク間違いなし。

山崎:いいですねぇ。そういう地上とはまったく異なる発想が次々と生まれてくるのが、宇宙の魅力です。言い換えると地球の常識が通用しないというのもポイントで、一番分かりやすい例として人間の体の機能の変化があります。地上では当然ながら手でモノを掴んで、足でそれを運ぶ。ところが宇宙では足で歩くことができないので、移動するときは手で壁をつかむ。するとどうやってモノを運ぶかというと、足で挟むんです。つまり、手と足の意味と目的が地上とは逆になるんですね。

西川:なんかチンパンジーみたい。スポーツや文化も大きく変化するに違いありません。ハリーポッターばりの“宇宙スポーツ”や“宇宙バレエ”“宇宙歌舞伎”など可能性は宇宙のように無限大です。

山崎:スポーツ選手や芸術家が宇宙に行くと良い刺激を受けて、それを作品にすることで今までの常識にとらわれないモノができるはずです。今後は限られた人だけでなく、誰もが宇宙に行ける時代が確実にやってきます。そうした時に西川さんのように「自分だったら何をしたいか」という当事者意識を持つことが大切です。そしてそれを普段の生活の中にどう結びつけていくかも重要。宇宙に行くことはゴールではなく、そこからがスタート。あざみ野にお住まいの方もぜひ体験していただきたいですね。

西川:『あざみ野スタイル』に宇宙旅行のクーポンや、NASAオススメの宇宙食レストランのクーポンを載せましょう! 宇宙のことを考えると人間の発想も重力から解き放たれますね!

山崎大地 トピックス

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山崎さんの最新著書「宇宙家族ヤマザキ」(祥伝社)を題材とした舞台が公演決定!
【公演名】「宇宙家族ヤマザキ~2022年、娘から届いた宇宙からのラブレター」
【日時】2012年6月29日(金)19:00~ / 6月30日(土)14:00~19:00~ / 7月1日(日)13:00~17:00~
【場所】 吉祥寺シアター

1972年、神奈川県鎌倉市生まれ。東海大学工学部航空宇宙学科卒業後、三菱スペースウェアに入社し運用管制官として、日本初の有人宇宙実験棟「きぼう」の運用準備に従事。2000年に山崎直子さんと結婚。現、(有)国際宇宙サービス代表取締役社長。詳しくは、http://uchu-shokudo.com/next まで