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対馬 ルリ子 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

対馬 ルリ子 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

女性トータル医療のパイオニア 対馬ルリ子 × 健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん

女性の幸せは自分の体を知ることから!
~体の内側にもっと目を向けてみよう~
ライフスタイルの変化が年代別の健康リスクをもたらす

西川:対馬先生は、女性の体をトータルにサポートする医療を提供しておられますが、近年、女性のライフスタイルが大きく変化する中で、どんな現象が起きていますか?

対馬:初潮年齢が早まり、出産年齢は遅くなっています。また、寿命が延びたことにより、更年期が人生のほぼ真ん中になりました。

西川:女性の社会進出にともなって、高齢出産のリスクや、産みたいときに産めないといった問題が出てきていますね。

対馬:日本は世界一の高齢出産国です。平均初産年齢が30歳を超えているのは日本だけです。最近の女性は見た目が若いので50歳くらいでも子どもが産めると思いがちです。しかし実際は卵巣の中の卵子が1万個を切る42歳頃には妊娠が難しくなります。

西川:いざ子どもが欲しいと思ったときにはもうどうにもならない。そういった情報は若い頃から周知すべきですね。

対馬:10~20代から自分の体について知るべきです。最近の若い女性は痩せている人が多いですが、体脂肪が減ると無月経になりがちです。月経が無くてラクなどと思ってはいけません。2年以上、無月経だと排卵が戻る確率は極めて低く、妊娠できない体になる可能性もあります。

西川:フランスでは痩せすぎモデルを規制し始めましたが、日本でも若い人の極端なダイエットは問題ですね。もやしとゼリー飲料しか食べないというタレントさえいます。一方、40代以降の更年期を迎える女性は、どういった点に気を付けるべきですか?

対馬:女性の体は女性ホルモンによって病気から守られています。ところが、閉経後は女性ホルモンがほぼゼロになりますので急激に疾患が増えます。閉経は50歳前後にやってきますから、余命までの約40年、女性ホルモンなしで、どう過ごすかが課題です。

自分の体をもっと知り生き方を考えよう!

西川:女性ホルモンがゼロになると、どんな疾患にかかりやすくなるのでしょう?

対馬:脳や骨・関節の機能低下が顕著になります。それにより、アルツハイマーや骨粗しょう症、関節の病気にかかりやすくなります。

西川:女性と男性はホルモンの性質が異なるので疾患にも性差があるのですね。

対馬:日本の女性は、40歳を過ぎて「産めるだろうか」、50歳になって「更年期がツライ」、70歳で骨折して「どう治せば」と焦る人が多い。でも本当はトラブルが起きる前が大切なんです。

西川:対処療法ではなく未病の段階から予防すべきなんですね。そのためにはどういった心がまえが必要なのでしょうか?

対馬:自分の体をもっと知り、生き方について考えるべきです。欧米の女性は若い頃からライフプランを主体的に決めます。私は20歳になる前に、将来は医師になり仕事を続け、子どもを産み育てると決めました。もちろん途中で変更しても良いのです。常に生き方を考え、決めるべきです。

西川:なるほど。生き方を決める意志こそが大切なんですね。

対馬:誰しも自分の外側にベクトルを向けがちですが、実は体の内側に目を向けるとわかってくることが多いのです。そのために、体のことを何でも相談できる、かかりつけ医を持ち定期的に検診を受けてみてください。すると、年代ごとのトラブルも未然に防ぎ、自分が生きたいように生きられますよ!

西川:対馬先生は医師としてご活躍で、さまざまな社会的活動にも参画され、お子様も産み育てておられます。先生のように公私に充実した人生を送る女性が増えれば、日本はもっと元気になるに違いありません。

対馬:そうですね、主体的に生きることは、男性よりも長生きする女性にとっては大事なことです。男性は、がんなど大病をしてポックリ逝ってしまう分、寿命が短くなっています。それに対して女性は、大病は少ないものの、グズグズとした疾患が長引き、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)が下がることが懸念されます。

西川:そうですね。骨粗鬆症が原因で骨折し、寝たきりになってしまうと、本人も家族もQOLが大きく低下してしまいます。

対馬:男性ホルモンは、運動機能を発達させ、骨や筋肉をかたちづくる働きがありますが、女性ホルモンは、やわらかさをつくるので、骨や関節が早く弱くなりやすいのです。そこが、男性と女性の性差になっています。そうした男女の疾患の性差も考えないと、自分が何を予防したらいいのかわからなくなってしまいます。

西川:疾患に大きな性差があるとは、一般的になかなか考え及びませんね。 でも、それによって予防法が異なるとすれば知っておくべきですね。

対馬:例えば、主要な死因別の年齢死亡率を見ると、悪性新生物(がん)は男性が女性の2倍。心疾患と脳疾患、脳神経疾患が女性の1.8倍など、男性の生活習慣の悪さが不利に働いています。ですから、男性は「運動して節食してタバコをやめなさい」と言われるわけです。それに対して女性は、女性ホルモンが優位に働いて生命を守っているので、若い年代にはこうした疾患が少ないのです。

西川:若い女性が、中高年の男性と同じように「運動して節食」と考え過ぎると、若年層の痩せすぎのような問題も起こってくるのですね。

対馬:若い女性の場合は、最近のライフスタイルの変化によって、乳房や子宮、卵巣の疾患がものすごい勢いで増えています。この10~20年で、乳がんは驚くほど増えていますし、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮体がん、卵巣がんも増えています。

西川:それは気を付けなくてはいけませんね。早く気付くためには定期的に検診に行く必要がありますね。

対馬:その通りです。日本の女性は35歳でも検診に行ったことすらない人も非常に多いです。日本も欧米も、女性が教育を受け、キャリアを持つようになったという点では同じですが、欧米の女性は早くから、かかりつけ医を持って検診に行っています。それに対して、日本の女性は自分の体のことを知らな過ぎます。

西川:日本の女性はキャリアを築いても、中身はお嬢さんのままの人が多いのかも知れません。40歳を過ぎて子どもが産めないと気づいても医学的に致し方ないでしょう。

対馬:はい、どんなにがんばっても閉経年齢は変わりませんから、子どもを産みたい人は、妊娠する能力のあるうちに産まなければなりません。日本は、戦後、経済的に豊かになって教育を受けたり、仕事をしたりできるようになって、結婚年齢も初産年齢も高くなりました。可能性が広がるという点では良いことなのですが、出産は後にずらせるといっても限界があります。

西川:日本の女性は自分の体のことをもっと知らなくてはなりませんね。

対馬:はい。女性は元々ホルモンの変動によって自律神経や感情、免疫が変動しやすい分、病気になりやすい面もあります。また、2種類のホルモンが変動するというのも非常に大きな性差です。男性ホルモンは、1種類がコンスタントに出ているだけなので、ストレスや働きすぎ、生活習慣による疲労があるだけですが、女性の場合は、月経周期によってホルモンが変動するのです。

西川:月経前にはイライラしたりするのはそのためですね。男性は身体的にはわからないので頭で理解する必要があります。

対馬:私は、2001年から、産婦人科だけでなく、女性をトータルにみた女性医療をやりたいと、アメリカ・コロンビア大学の性差医療に携わるマリアンヌ・レガト先生を訪ねました。そのとき、トータルな視点から見た女性医療にとって大事なことは何かと聞くと、返ってきた答えは、「年齢」でした。

西川:それは、なぜですか?

対馬:女性は50歳前後まで月経があり、それによって守られているのですが、それ以降は女性ホルモンがなくなるので守られなくなるのです。なぜ、50歳前後かというと、卵巣寿命が50歳前後なのです。

西川:私の専門はマーケティングですが、今年から日本の女性の2人に1人は50歳以上になると言われています。50歳になって、女性ホルモンが急激になくなった後、女性がどう生きるかは医療のみならず、日本社会全体の課題です。

対馬:もともとみんな、親から引き継いだ遺伝子的に弱いところがあります。女性ホルモンに守られているうちは、あまり表に出てこないんですが、閉経後にそれが顕在化します。例えば、高血圧や糖尿病などです。それらがなくても、寝たきりやアルツハイマーで介護や医療の面倒をみてもらわずに済む方法も考えなくてはなりません。女性は実際の寿命と健康寿命のギャップが13年もありますが、少しでもその差を短くするために、戦略的に健康を維持する必要があります。

西川:そのためには、かかりつけ医を探すべきなんですね。日本は、医師にかかるというと、病気になってから行くというイメージがありますが、どうしたらよいのでしょうか?

対馬:病気になってから行くのは、健康保険を使った医療です。そうではなく、美容室に行く感覚で、検診や健康相談にのってくれるクリニックや医師を見つけなくてはなりません。そこできちんと予防的な体の相談をしましょうというわけです。

西川:なるほど。かかりつけ医というのは、病気になってからではなく、予防的な相談ができる先生のことなのですね。

対馬:諸外国で実践されているヘルスケアですね。病気になってからかかる専門医ではなく、普段から相談に行けるヘルスケアアドバイザーです。現在、私どもで、ヘルスケアアドバイザーの養成を始めたところです。産婦人科も、通常の産婦人科医だと、不妊治療だけ、お産だけ、手術だけとそれぞれの専門に分かれてしまいますが、そうではなく、トータルで診られる人材を育てようとしています。

西川:対馬先生が中心に進めておられる女性医療ネットワークで行っておられるのですか?

対馬:はい。15年程前から、政府にも働きかけています。WHO(世界保健機関)に、「ライフ・スキル・サポート」というプロジェクトがあり、幼い頃から老年期まで女性の健康特性はつながっているという視点から、啓発教育や検診をやっていこうという考えがあります。それにしたがって、トータルな女性医療を診られる医師を都道府県に1~2人は配置できるように取り組んでいます。東京のほか、横浜、札幌、富山でも、私たちの仲間が活躍しています。

西川:それは、ぜひ国でもやってもらいたいものですね。

対馬:私が医師になって 30年経ちますが、本当に日本はその点が変わっていません。女性の社会進出などライフスタイルの変化に合わせて、自分の健康のことを知らなくてはなりません。特に更年期は、体の変化以外に、親の介護を抱える大変な時期なのです。

西川:若いうちから自分の体のことを知って、先生のように先にライフプランを決めるのが良いのですね。

対馬:もちろん、一度決めたプランを変更していけないわけではありません。変更しても構いませんから、まずは自分で決めることです。日本の女性は、言われたことは一生懸命にやりますが、自己決定力がありません。私のクリニックに来られるかなり大人の女性でも、「主人に相談して決めます」という人もいます。そうではなく、自ら決めて実践する習慣をつけてください。

西川:たしかに、何事も習慣ですからね。

対馬:はい。すべて健康に関わることは習慣です。食事や運動の習慣もそうですが、検診を受けて自分の将来を決めることも習慣です。そのために私たちがいます。いわば、私たち医師は、使いこなしてもらいたい道具なのです。

西川:女性の体を美しく花を咲かせ実を結ぶ木にたとえるならば、先生方は庭師のような存在かも知れませんね。

対馬:その通りです。女性の体は、植物のようなものだとつくづく思います。きちんと日に当ててあげたり、お水をあげたりすると、だんだん肌ツヤもよくなって、いきいきとしてきます。そうして、自分らしい太い幹になってゆくのです。

西川:先生がおっしゃられるように、自分の体を知り、自分で決められる女性を日本にどんどん増やして行かねばなりませんね。対馬先生、本日は貴重なお話をありがとうございました!

対馬ルリ子さん トピックス

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白澤 卓二 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

白澤 卓二 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

日本における加齢制御医学の第一人者 白澤卓二 × 健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん

日本の伝統食でアンチエイジング
~世界が認める日本食に立ち返ろう!~

日本における加齢制御医学の第一人者 白澤卓二先生と、「あざみ野STYLE」 応援団長で厚生労働省の健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじんさんによる健康に関するスペシャルトーク!

アメリカ政府が
元禄以前の日本食を推奨!?

西川:白澤先生はアンチエイジングに関して加齢に抗するのではなく加齢を制御するという視点を提唱された先駆者ですね。

白澤:アメリカから入ってきた当初は若返りという考え方だけでしたが、今後、高齢化が進む日本では、加齢のプロセスを制御して若々しさを保つという理論の方が重要だと2000年頃に考え至りました。

西川:アンチエイジングという言葉がまだ一般化していない頃ですね。

白澤:当時、私は65歳以上の患者向けの病院に隣接した研究所で働いていました。そこで実感したのは、病気の数が少ないほど元気でいられるし、生活の質も高いということです。若くいられるかどうかは、高齢期の病気を予防できるかどうかにかかっています。つまり、アンチエイジングとは予防医学だという位置づけです。

西川:先生はココナッツオイルによる認知症の改善効果をいち早く発信されるなど病気を予防するための食の重要性を訴えておられますが、最も大切なことは何でしょう?

白澤:日本古来の食事に戻すことが大切です。戦後、日本人の食事の質はガラッと変わってしまいました。

西川:急速に食生活の欧米化が進み、肉やパンを多く食べるようになりましたね。

白澤:逆にアメリカでは1970年代に上院特別委員会のマクガバンレポートが、ガン、心臓病、脳卒中など生活習慣病の原因は食にあり、肉を減らし野菜を増やし、塩分や精製した砂糖、穀物を減らすべきだと警鐘を鳴らしました。理想は日本の江戸時代の元禄以前の食事だと提唱しています。

経済再生のみならず
食文化を再生すべき

西川:和食が世界無形文化遺産に登録されましたが、私たち自身が野菜や豆、キノコや海藻なども摂取できる日本の食の素晴らしさを忘れてしまっていますね。

白澤:現在の日本の農業は農薬と化学肥料を使い、1つの畑で1種類の野菜だけを作るようになって栄養価が下がっています。そうした農業をやめて、土も種も元に戻すべきなのです。

西川:同じ野菜を大量に作れても栄養価が低くては意味がありませんね。でも、実際のところ無農薬栽培は難しくないですか?

白澤:いえ、江戸時代は流通がなく、5キロ圏内で採れた作物を食べていましたが、風土病もありませんでした。日本の土には無農薬でも病気を防ぐ力があったんです。

西川:もし土を元に戻すことができれば有機栽培も可能だということですね。野菜はどのように食べればよいでしょうか?

白澤:野菜の生活習慣病を予防する効果は絶大です。仮に微量の農薬に汚染されてもメリットの方が大きいです。多品種の野菜をたくさん食べることが重要です。

西川:主食は何を食べるべきですか?昔はパンなどなく玄米だったわけですが。

白澤:日本人が現在食べているパンはアメリカやカナダ産の小麦から作られています。日本では学校給食でパンが出されていますが、アメリカが和食を推奨しているのと真逆です。

西川:日本経済の再生も大切ですが、日本の食文化を再生すべきですね。

白澤:私たちは自国の食文化を失ってしまったんです。今、食べているものは加工品など1960年以降に出てきたものばかりです。昔の食を取り戻さねばなりません。

西川:世界中が評価する日本の伝統食に立ち返り、食文化のDNAを絶やさず受け継ぐことがアンチエイジングにとって最も重要なことなのですね。

白澤:歴史を持っている国というのは文化の真ん中に食があって、それが柱になっています。フランスにはフレンチ料理の文化があって、イタリアだったらイタリア料理、スペインだったらスペイン料理の文化があります。それらの国では今でも50年前とほとんど同じものを食べています。それが今の日本ではファーストフードや加工品ばかりになっている。何が日本食かを、今一度、定義すべきです。

西川:現在、日本人の多くが食べているからといって、本来、ファーストフードが日本食ではあるはずもありませんし、今食べられているパンは明らかに戦後に生まれた食ですね。

白澤:特に日本のパンに使われている北米産の小麦は、1960年から80年の間に品種改良や精製が進んで別物になりました。フランスなどでは今も昔のやり方でパンを焼き、1日3回、パンはパン屋さんで買うものと決まっています。当然、時間が経てばカチカチになります。パンがふわふわしてビニール袋に入って流通するものと考えられている製パンなどというものがあるのは日本だけです。

西川:明治時代、大都市部で脚気が大流行し、多くの人が命を落とした原因は、玄米ではなく精製した白米ばかりを食べたからです。小麦粉も精製して真っ白な粉だけで作ったふわふわのパンだけを食べれば良いはずはないでしょうね。

白澤:精製が進んだ白米や小麦を食べると血糖値が急上昇し、それを抑えようとインスリンが急激に分泌されるので、私たちの体は悲鳴を上げています。

西川:戦後、小麦粉をはじめ外国産の食材がどんどん入って来て、日本の食を根本的に変容させてしまいました。食は文化であり、私たちの体をつくるわけですから、すべてをビジネスの尺度だけで考えるととんでもないことになりかねませんね。

白澤:世界には、外来種と化学肥料と農薬をセットにして売っている会社があります。その会社は、世界戦略で農薬まみれの農業を支配し、日本はその犠牲になっているといえます。この会社はBCGやダイオキシン、アスパルテームを創り出した会社ですが、それらはすべて発売禁止になっています。完全にケミカルプラントなのですが、ホームページを見ると非常にエコな農業をやっていると自社を定義しています。

西川:おそろしいですね。TPPによって、そういったマイナスが助長されることのないように、抗加齢ではありませんが、それこそ抗って行かなくてはなりませんね。逆にこれは信用できるという食品はありますか?

白澤:納豆や味噌など日本古来の発酵食品については、プロモーションをお手伝いしたいと思っています。

西川:たしかに発酵食品は体に良いでしょうし、日本古来の製法で作っていれば安心ですね。ところで、先生が、近年、勧めておられるココナッツオイルはどのような仕組みで認知症患者の認知機能を改善させるんですか?

白澤:認知機能を改善させるのはケトン体という物質ですが、ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸が体内でケトン体となって脳を働かせる効果があるのです。

西川:通常、脳は炭水化物を原料とするブドウ糖をエネルギーとして作動しますが、脳の糖尿病とも呼ばれるアルツハイマー型認知症を患ってしまうと、脳はブドウ糖を受け入れられなくなり動かなくなってしまう。しかし、脳は、ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸を原料とするケトン体を燃料にしても動く別の作動メカニズムを持っているので、認知機能が改善する場合があると考えられる訳ですね。最近は認知機能の改善のみならず、ハリウッドセレブが美容に効果があると常用する人が多く、日本でも女性に人気を呼んでいますね。

白澤:ハリウッドセレブには、ココナッツオイルを口に含んでうがいする「オイルプリング」が注目を集めています。オイルプリングをすると、歯のホワイトニングや歯周病に効果があると言われています。

西川:人気を呼んで、近頃、高級スーパーの入口にココナッツオイルが山積みにされていますね。でも、歯にはさまったものを除去するためには歯磨きやデンタルフロスが必要なように思いますが?

白澤:歯ブラシとは研磨剤でエナメル質を物理的に磨いて歯を白くしているだけです。これはどこかの会社がつくったビジネスモデルに過ぎません。昔の人はそんなことをしなくても虫歯になりませんでした。人類の長い歴史上においても、歯ブラシや歯磨き粉やデンタルフロスなどありませんでした。親に言われて子どもの頃から習慣になっているだけです。その点、オイルプリングは、ココナッツオイルに含まれるラウリン酸の免疫力を高める機能を利用したもので歯を研磨しません。

西川:白澤先生は、運動については、どのようにお考えでしょうか?

白澤:私は膝を壊してしまうような過激なスポーツは勧めません。介護予防で筋トレを推奨するのもどうかと思います。それよりも、日常生活の中で体を上手く使うのが一番です。その時に体の軸を安定させるのを意識することが重要です。体の軸の安定が歩行や転倒防止に役立つのです。

西川:昨今は、移動がクルマ中心の地方都市に住む人より、電車や地下鉄やバスを利用する際に何度も階段を昇り降りする大都市に住む人の方が、足腰も強く健康だという指摘があります。まちづくりも、高齢化社会だからと何でもバリアフリーにするではなく、階段などバリアがある方が健康寿命の延伸には良いのだと考え方が変わって来ました。

白澤:駅で階段を昇り降りして乗り換えするのは高齢者にとって、かなり難易度が高い作業です。それを毎日のようにできる人は身体能力が高いと言えます。より多くの高齢者が日常生活で階段をバリアにしないようにするのが今後の課題です。

西川:先生おススメの運動はありますか?

白澤:私は「ジャイロトニック」を推奨しています。これは、もともとバレエダンサーのための運動法で、背骨がねじれる軸回転をうながす運動です。人間は歩行する時、実は体がねじれているのです。地球ゴマと一緒で回転するから軸が安定しているのです。高齢者の歩行訓練にはとてもいいですし、トム・クルーズも使っていると注目されています。

西川:おもしろいですね!ぜひ、やってみたいです。それから、食事、運動とともに、アンチエイジングの3要素と言われる生きがいについてはどのようにお考えでしょうか?

白澤:人生のチャレンジ目標を持っている人は圧倒的に強いですね。これは、「何のために生きているのか?」という質問に答えられるかどうかです。目標は大それたものではなくても、「孫が結婚する姿を見たい」、「お金儲けをしたい」など何でも構いません。それがきちんと答えられるかどうかが重要です。

西川:特に男性は会社をリタイアすると燃え尽きてしまい、一気に老け込む人も多いですからね。

白澤:前向きに生きているだけで人生に目的ができます。日本人の多くがこれに答えられないとしたら、国が生きがいを創出できていないということです。

西川:今後、日本は世界の中で高齢化社会のトップランナーを走って行くことになります。その際に必要なことは何でしょうか?

白澤:とにかく、日本は伝統的な文化を失い過ぎています。本来、伝承すべき文化は親から子に引き継がれるものなのですが、戦後の横断的な価値観によって、それが真っ二つになってしまいました。横断的な価値観とは、親が何をやってきたかよりも、同級生が何をやっているかを気にするものです。本来は、プロスキーヤーで登山家の三浦敬三さんがやってきたことを息子の三浦雄一郎さんや孫の豪太さんがやっているように、親がやっていたことを継承することが必要なのです。

西川:体のDNAはつながっているけど、文化のDNAは途切れてしまっている訳ですね。

白澤:そのとおりです。文化のDNAが体を守るものであったのに、それを継承しなかったから結果として、体も悪くなったのです。

西川:これからは、食文化をはじめ日本各地に伝わる伝統的な文化をもう一度取り戻すことが、すなわち、私たちの心身を健康にし、人生を豊かにすることにつながるのだとよくわかりました。もしかすると、今が、戦後、途切れた文化を取り戻す最後のチャンスかも知れませんね。貴重なお話をありがとうございました。

白澤卓二さん トピックス

新刊『ココナッツオイルでボケずに健康』(主婦の友社)は、ココナッツオイルがなぜアルツハイマー型認知症を改善するのかを解説するとともに、その特徴、入手方法、おいしい食べ方も掲載。健康と美容に関心のある人は必読の良書です!

久保 明 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

久保 明 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

久保 明 × 西川 りゅうじん

自分の体と向き合うことこそ健康の原点
~自分自身に合った健康法を知ろう!~

抗加齢を科学する名医 久保明先生と、「あざみ野STYLE」応援団長で厚生労働省の健康寿命をのばそう運動主宰西川りゅうじんさんによる健康に関するスペシャルトーク

西川:久保先生は予防医療とアンチエイジング医学をリードして来られ、現在も最前線で診療しておられますね。健康に関する情報があふれる中で、自分に合った健康法を知るにはどうすれば良いのでしょうか。

久保:昨今の情報過多の中でまず大事なことは、自分自身の状態を知ることです。現在は、検診や人間ドック以外にも、活性酸素や血中のビタミン量など加齢にともなう状態を調べて、一人一人に合った健康法を医師から提案することができます。

西川:先生は銀座医院でプレミアムドックをスタートされ、患者ごとに最適な医療の提供を目指しておられます。そのためには、まず自分の体を知ることなんですね。

久保:それが一番大切です。個々のデータベースをもとに、どのようにアレンジしていくかがプロである医師の役目です。一人一人老化の状態が違うのと同じように、健康のあり方もまったく異なるものですから。

西川:人間ドックの進化系であるプレミアムドックを受けると、どんなことがわかるのですか?

久保:たとえば、血管の老化を示す動脈硬化や糖尿病の一歩手前である糖化の状態を知ることなどが可能です。

西川:糖化という言葉を最近よく耳にしますが、どういう意味ですか?

久保:体の細胞はたんぱく質でできていますが、過剰な糖分がくっついて、たんぱく質の機能が低下してしまうことです。

西川:その糖化で肌が老化するわけですね。

久保:皮膚下にはコラーゲンやエラスチンなどのたんぱく質がありますが、糖がくっつくと伸縮性がなくなってしまうんです。

西川:それがシワの原因ですね。糖化は体の中でも影響がありますか?

久保:たとえば、肺にもエラスチンがありますので、伸展性が損なわれます。実際に糖化と比例して、慢性閉塞性肺疾患(COPD)という肺の老化が進むというデータもあります。

西川:では、その糖化を防ぐにはどうすれば良いのでしょうか?

久保:いくつかの方法がありますが、基本的には摂取カロリーを抑えることです。次に炭水化物の比率を抑えること。そして、食べる順番や朝昼夕の量を調整するなど食べ方の工夫ですね。

西川:一方で糖質を一切摂らないダイエット法がもてはやされていますが?

久保:炭水化物を摂らないとたんぱく質と脂肪だけになってしまいます。そうなれば動脈硬化などの血管障害が進行する可能性が高いです。極端な方法はインパクトがあるためメディアで取り上げられやすいので信じる人も増えるのです。しかし、本来、医学や科学で大切なのはインパクトではなくファクト(事実)です。多くの人を対象に比較検証を行った上で確かめられたことを信じるべきです。

西川:テレビや雑誌にあおられて、一面的な情報に惑わされてはいけませんね。

久保:その通り!一人一人の体が異なるのですから、その人ごとの健康法が必要です。今後は数多くの臨床で得られたデータをどう個人に結び付けるか、最先端の医学を医療の現場でどう活かせるかが課題です。

西川:先生のお話をうかがって、同じ型の機械を修理するように、「これで健康になれる!」といった健康法の危うさを再認識しました。自分の体と向き合うことこそが健康の原点なのですね。

久保:現在のアンチエイジング医療や予防医療は、まだまだ医学とは言えないかも知れません。医学と呼ぶためには、「調べること」「対処すること」「確認すること」の3つの作業が必要です。ところが、今のところ、確認する作業が成されていないのが現状です。その結果、「ゴマだけを食べればいい」「納豆だけを食べればいい」・・・、などと、いろいろな健康法が出て来ています。重要なのは、それが合う人も合わない人もいるということです。その効果を一定数の人数のサンプルで確認・検証する必要があるのです

西川:久保先生のご著書『人気の「これだけ健康法」が寿命を縮める』(講談社)のタイトルの通り、「これだけの健康法」は危ういですね。最近、1日1食にすれば長寿遺伝子がONになると言われ、やってみたら、逆に無理が出てリバウンドで太ってしまったという笑えない話も耳にしますが、実際、効果はどうなんでしょう?

久保:長寿遺伝子をONにするしくみというのはいろんな方法があるんですよ。私たちも週末だけ断食する方法を大学と共同で調べましたが、週末だけ3分の1のカロリーに減らすだけでも長寿遺伝子に変化がありました。これを医学として確立するためには、1日1食の人と、2食の人、3食の人を、100人なら100人、何年間か経過を診ていくというスタンスの研究が望まれます。

西川:今後、「健康寿命」が、ますます重要なキーワードになって来ますね。男性も女性も、健康に自立して生きられる「健康寿命」は寿命よりも約10年も短い。長生きしても、健康でなければ、本人も家族もつらいし、家族も自治体も国も負担も大きくなる一方です。

久保:昨今は、厚生労働省の取り組みの効果もあり、「健康長寿」をのばそうという意識が芽生えています。しかし、それ以上に大切なのは、生きがいを持って生きることです。私たちはそれを「能力長寿」と呼んでいます。つまり、自然から与えられた能力をどうやって活かすかという視点です。その能力とは、職業に関わらず、魚釣りがうまいとか野球を教えるのがうまいといった広い意味です。それぞれの能力を活かしながら生きる寿命という考え方です。

西川:なるほど。おっしゃる通り、生きがいがあるからこそ健康でいようと思いますし、いられますからね。

久保:そのためには、頭と身体の2つの健康が必要になってきます。まずは、認知症への対策。もう1つは、ロコモ(ロコモティブシンドローム=歩行や日常生活に何らかの障害をきたしている状態)やサルコぺニア(骨格筋量や筋力の低下を特徴とする症候群)など身体が不自由にならないことです。

西川:生きがいがあるから心身が健康なのか、健康だから生きがいが持てるのか、鶏が先か卵が先かはわかりませんが、いずれにしても、仕事や趣味があって生涯現役で「能力長寿」を目指そうということですね。まず、認知症にならないためにはどうすればよいのでしょうか?

久保:私たちができることは、まず遺伝子をみることです。現在、ある遺伝子の変化を認めると3割くらいアルツハイマー型認知症になる確率が高くなることがわかっています。遺伝子というのは、親から由来する遺伝とは別で、自分自身が持っている遺伝子のことです。私たちのデータによると、日本人の4分の1から5分の1くらいの人がその変化を持っているんですよ。

西川:そんなに高い割合なんですね。驚きました!

久保:あとは生活習慣病がある人、外傷がある人、身体活動が低い人はアルツハイマー型認知症になりやすいとされています。最近は、ある程度、予防もできるのではないかという実験もされていて、ビタミンEを用いた研究もあります。

西川:身体を動かす効果についてはどうですか?

久保:運動は生活習慣病予防の点でも望ましいですね。

西川:自分で判断するためのエイジングドック以外の基準は何かありますか?

久保:試しに良いと思う健康法を3ヶ月ほど続けてみて、判断してみてはいかがでしょうか。

西川:やはり、自分の健康は自分の身体に聞いてみるのが一番なのかも知れませんね。

久保:でも、過信は禁物です。科学的なデータをもとにした医師によるアドバイスが確かな予防医療につながります。申し上げて来ましたように、人間の体は多様で、アドバイスも十人十色です。だからこそ、私は、可能な限り、医療の現場に身を置こうと考えているのです。

西川:本日は貴重なお話をありがとうございました。久保先生には、これからも日本の医療をリードして行っていただければと存じます。

久保明さん トピックス

最新刊『人気の「これだけ健康法」が寿命を縮める 老化指標を改善する28のステップ』(講談社)は、流行りの健康法の誤りを指摘し、老化指標のレベルを改善して若返るためにはどうすればいいのかのヒントが分かりやすく解説されています。

塩谷 信幸 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

塩谷 信幸 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

塩谷 信幸 × 西川 りゅうじん

生きがいを持つことこそ”アンチエイジング”健康寿命の延伸は目的ではなく手段だ
アンチエイジング医療の先駆者塩谷信幸と健康寿命をのばそう運動主宰西川りゅうじんのスペシャルトーク!

西川:塩谷先生は名実ともに日本のアンチエイジング医療をリードして来られましたが、「見た目」が大事だとおっしゃっておられますね。

塩谷:日本には「かたちより心」という観念があって、見た目にこだわるのはどうかという思いがあります。しかし、『人は見た目が9割』という本がヒットしたように、見た目も大事だと思っているのが本音。ですから、見た目に市民権を与えようと活動しています。オープンにしないとアングラなものがはびこってしまいますから。

西川:建前ではなく、素直に見た目を意識することこそが、心身の若さ、美しさを保つことにつながるわけですね。

塩谷:見た目も全身の一部。人間の見た目は中から整えれば若くなるのです。若さとは体の内側の表れであり、皮膚は健康の鏡です。

西川:アンチエイジングと言えば、注射でシワが消えるといったテクニックだけがクローズアップされがちですが、先生がおっしゃりたいのは、心身の健康から生まれる「美」ですね。

塩谷:はい。皮膚は臓器の中でも特殊で外に露出していて外部から見える。それだけで医療の一つの専門分野です。でも、見た目だけを板金塗装で直すのではなく、中から整えることが大切なのです。

西川:クラシックカーも外装だけキレイにすればいいのではなく、エンジンや足回りまで修理しないと動きませんからね。

塩谷:そう。ただ、人間はクルマと違って見た目を整えることによって元気になることもあります。外からの見え方に気をつけること自体が健康につながる。つまり、外見と中身は別物ではなく一体なのです。

西川:アンチエイジングとは日本語で抗加齢ですが、先生のお話は、老いに抗(あらが)う西洋医学的な技術だけではなく、自然の営みを尊重する東洋医学的な考え方も合わせ持っているように感じます。

塩谷:アンチエイジングとは加齢に抗うだけとは考えていません。老化は自然現象。それをなるべくゆるやかにして“美しく老いる”ことを目指す。決して不老不死ではなく、一言でいえば健康寿命をのばすことなのです。

西川:アンドロイドのような修理でなく、人間らしく健康に生きる時間をのばすことですね。

塩谷:現代のアンチエイジングの問題点は、ノウハウばかりが先行していることです。本来、“How”ではなく“Why”であるべきなのです。

西川:どうやって若く見せるかではなく、なぜ若くありたいのかということですね。

塩谷:生きる目的がなければ意味がありませんし、そこまで踏み込まないと本当の意味のアンチエイジングには成り得ません。健康寿命の延伸は目的ではなく手段です。でないと、「健康のためなら死んでもいい」という世界になってしまう。アンチエイジングが見据える先は生きがいやQOL(クオリティ・オブ・ライフ)なのです。

西川:アンチエイジングは“生”とは何かという人生の本質につながるのですね。日々生きる目的を持って健やかに齢を重ねたいものです。

塩谷:アンチエイジング医療が誤解されているのには、医学界の中での二極化という要因もあります。肌や見た目を若返らせる外科的医療の分野と、点滴やキレーション療法(キレート剤を点滴して行うデトックス治療)、遺伝子診断といった内科的医療の分野の2つがつながらず別々になっています。肌や見た目の若返りは、狭くは美容外科、広くは形成外科の分野です。各々、ある専門分野だけがアンチエイジング医療と言う言葉に置き換わっているのです。

西川:アンチエイジングを、各論ではなく、トータルな視点から総論でとらえるべきだということでしょうか。塩谷先生は、アンチエイジングを、医学のみならず、さらに、心理学、社会学、老人学に至るまで学際的な枠組みから再構築すべきだと提唱しておられるようにも感じます。

塩谷:現在の医学は専門化が進み、ますます細分化されています。そのうち、「右の腎臓はわかるけど左の腎臓は専門外」というようなことが起こりかねません。アンチエイジングは全身の老化をゆるやかにするために、抗酸化や抗糖化、抗炎症といったことを考えますが、こうした治療は臓器ごとに分けられるものではありません。縦割りのままではうまく行かないので、横串を入れて統合する仕組みにしなければと思います。

西川:細胞ごとにバラバラになってしまった医療を、ふたたび、血管やシナプスでつないで仕組みづくりが必要なのですね。

塩谷:それらに加えて、アンチエイジングと老年病学をどう共存させるかという課題もあります。老年病学は内科的な思考で生活習慣病などになった時に対応するのですが、その一部としてアンチエイジング医療があっても良いと思います。そのためにも、医学の全科に横串を入れる考え方が必要なのではないかと思います。

西川:先生は、アンチエイジングの目的は高齢者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の確保だとおっしゃっていました。今後は独居老人がますます増加し、高齢で経済的に破綻する老齢破綻が懸念されています。その解決のためには、地域社会で支え合える仕組みが必要ですね。

塩谷:いろいろなアプローチがありますが、私は定年制度の見直しを支持しています。現在の定年制度は、平均寿命が50代の頃に作られた制度です。医者や芸術家は定年があってないようなものですが、ほとんどの人は企業で働いています。そういう人たちは定年を意識して逆算して生きなければならない。60歳くらいで一度ワーキングスタイルを変えて仕事を続けられる方法が検討されています。

西川:私の専門のマーケティングの分野でも、テレビの視聴率をはじめ、平均寿命が50代の頃に作られた仕組みがほとんどで、見直しが急務となっています。CMなどの広告や商品開発のターゲットを考える際に、消費者を年齢別に分類していますが、50歳以下は細かく区分けがあるのですが、なんと、50歳以上は100歳を超える人に至るまで同じ層だととらえているのです。来年から日本の女性の2人に1人が50歳以上になるというのに、まったくナンセンスです。

塩谷:高齢者自身も意識を切り替える必要があります。心理学者のユングは、人生を午前と午後に分けました。フルに働ける時代を午前、それ以降を午後と呼んだ訳です。60歳以降の人生をそれまでの仕事の延長線上で続けるのか、午後の仕事に切り替えるのか。午後の仕事に切り替える例には、地域のボランティア活動などが考えられますね。午後の時間は人生を見直す貴重な時です。自分の過去と折り合いを着けるために、自分史を書くのも良いかも知れません。

西川:塩谷先生はブログに、人生を振り返ることは、他人を許し、自分を許すことだと書かれていました。なるほどと心に浸みました。あの時、こうしておけば良かったと悔やんでも過去は変えられないですからね。

塩谷:どうしようもない過去は認めて、新しくやれることを考えることが大切ですね。それを午後の仕事として行えば、新たな生きがいにつながると思います。

西川:朝日も美しいですが、夕日も美しいですからね。日本は日ノ本の国ですが、初日の出、サンライズも素敵ですが、これからはサンセットを尊ぶことが大切になるでしょう。

塩谷:サンセットの方が余韻があります。この年になってやっとわかってきたこともあるのですよ。

西川:先生は女性の生き方について、どんな考えをお持ちでしょうか。

塩谷:私は今の女性は男性より主体性があるので、まったく心配していません。しかし、問題はまだまだ日本が男性社会であることです。

西川:女性大臣が辞任に追い込まれたりしていますが、立場が人を作る部分もありますので、ある時期は意図的にでも女性の管理職を作って行くことも必要だと思います。

塩谷:良い意味で男女が共存する社会が作れないかと考えています。先日、女性ばかりのメンバーの研究会で、高校生の頃の夢がどれくらい実現されているかを調べてみたのです。いろいろな体験があっておもしろかったのですが、男性は良くも悪くも自己責任で未来を拓いて行けます。でも、女性の場合には配偶者になびかないといけない。それが前提になってしまっているのです。実際に独立しようと思っても、例えば夫婦で医者の場合、どうしても奥さんの方が犠牲になりがちです。急にすべてが平等にというのは難しくとも、女性の夢が活かされるような社会にしたいですね。

西川:最近、男女ともに未婚ならぬ非婚の結婚しない人がますます増えています。数年前、コラムニストの酒井順子さんの著書の『負け犬の遠吠え』から「負け犬」という言葉が流行語になりました。「30歳を過ぎて結婚せず子供がいない女性は、どんなに美人でどんなに仕事ができても、女の中では「負け犬」だ。だけど、それが楽しい」というのです。今や東京をはじめ大都市では30歳以上の女性の2人に1人が独身になっており、都心部は“負け犬保護区域”と呼ばれています。

塩谷:結婚の形態も見直すべき時が来ているのかも知れませんね。しかし、人間は大脳を背負ってしまったために、神と獣の間の存在になってしまった。われわれの矛盾した社会構造の原因はそこにある訳で、それにどう対処して行くかが課題です。男女同権と言えども、男性に子供は産めません。より具体的なことを言えば、女性は妊娠した瞬間から体内のホルモン分泌までが変わります。それを途中で中断すれば必ずひずみが来るのです。これは権利の問題ではなく、ヒトという種の宿命です。でも、大脳では、妊娠の実際と、仕事や自己実現との折り合いが着かない…むずかしい問題です。

西川:そういった意味でも、医学と社会学がリンクして行かざるを得ない時代になっていますね。先生がアンチエイジングで目指されていることとも大いに関係して来ますね。最後に、塩谷先生の今後の展望をお聞かせいただければと思います。

塩谷:現役の頃は雑用が多過ぎました(笑)。今はゆとりができたので、改めて西洋医学だけでは解決できないことにも注目したいですね。現在、われわれが偉そうに言っていることも、実は4000年前のインドでアーユルヴェーダが訴えていたことと原理的に同じこともあります。場合によっては、その頃の方が革新的な場合すらあるかも知れません。ですから、そういったことも含めて統合して行く必要があると思っています。そして、アンチエイジングの手法も、日常のライフスタイルにどう落とし込めるかの整理も必要だと考えています。

西川:今はアンチエイジングのみならず、医療や健康づくりについても情報があふれかえっているため、逆に何が正しいのかわからなくなっている部分もありますね。

塩谷:How toばかりが先行して、「クルミが健康にいい」とメディアで報じられると、スーパーからクルミがすべて消えちゃったりする。そうではなく、根幹があって、それに対して、いくつかのアプローチがあるのだと整理しなければいけないと思っています。そうすることで、一人一人のライフスタイルに落とし込みやすくなります。

西川:1種類の食材や1種類の運動が、あらゆる年代や体型の、さまざまな遺伝子を持つ、すべての人に良いはずがありませんからね。全体のバランスと一人一人の状態にあったアプローチが大切ですね。

塩谷:一番良くないのは「あれはダメ、これはダメ」という教条的な教え方です。逆に「あれは楽しいから取り入れよう!」と楽しみながら美しく健康になっていただきたいです。

西川:なるほど、“ダメダメ”アンチエイジングはダメってことですね!塩谷先生のお話をうかがうことで、生きることの楽しさ、大切さがわかったような気になれました。お忙しい中、貴重なお時間とお話を、ありがとうございました。

塩谷信幸さん トピックス

塩谷先生が理事長を務めるNPO法人アンチエイジングネットワークでは、様々なアンチエイジング分野で活躍している専門家の英知を結集し、関連分野の協力もあおぎながらHP上での情報配信、セミナーの開催をおこなっています。月1(第1水曜日)にメルマガ配信もおこなっておりますので、ぜひご登録ください。

辨野 義己 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

辨野 義己 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

辨野 義己 × 西川 りゅうじん 花郷 六本木店(03-5775-3888

うんちは健康状態のバロメーター!腸内環境を改善する方法とは?
うんちと陽のスペシャリストの辨野義己先生と、「あざみ野STYLE」応援団長で厚生労働省の健康寿命をのばす運動を進める西川りゅうじんさんによる健康に関するスペシャルトーク!

西川:辨野先生は、腸内環境、腸内細菌、便の研究の権威として学会のみならずテレビでも引っ張りだこですね。お名前も便の研究をされている辨野(べんの)先生でわかりやすいです。

辨野:「ペンネームですか?」とよく聞かれますが本名です。フルネームも、辨野義己(便のよしみ)ということでウン命だと思っています(笑)

西川:日本人は便秘で悩んでいる人が多いと言いますが実態はどうなんですか?

辨野:便秘というのは3日以上出ない状況を言うんですが、日本人女性の48%が便秘で、そのうちの65%は5日に1回しか出ていないんです。このように女性の便秘というのは常態化していますね。

西川:若い女性の最大の悩みが便秘だという統計もありますね。

辨野:20代の女性の半数は便秘です。ひどいパターンでは月曜から金曜まで出ずに、土日に下剤で出す人もいます。30代以上の女性も4割近くが便秘なので、もう改善できないと諦めておられるようですね。

西川:便秘は治らないんでしょうか?

辨野:いえ、食習慣が腸の滞留時間を大きく左右しているので食べ物で改善できます。例えば、イモをよく食べるアフリカの黒人女性の食べかすの滞留時間は17時間程度ですが、精製されたパンや肉類を多く食べるイギリスの女性は便を出すのに3~5日かかったとの調査があります。

西川:冷蔵庫の中でも、それだけ長時間、食べ物を置いておけば腐りますね。

辨野:便秘の人というのは、腸内環境が悪化している人たちが多いんです。同時にお腹が痛い、太りやすい、臭いガスが出る。そうした人たちというのは、肌の状態も悪いんですね。

西川:腸年齢が肌年齢。そして、腸美人が肌美人だと先生はおっしゃっていますよね。

辨野:腸の粘膜と皮膚は起源が同じですから、腸粘膜の状態が悪いと肌の状態も悪くなります。高い化粧品を塗ったところで、腸内環境が悪いとどうにもなりません。それから、女性の死因の1位は大腸ガンであることも忘れてはなりません。

西川:大腸がんの要因は何ですか?

辨野:世界がん基金と米国がん研究所が10年毎に出す「ザ・レポート」による大腸がんリスクをあげる要因は肉類・加工肉の食べ過ぎ、野菜不足、運動不足、そしてアルコールの多飲です。

西川:報道でも肉の食べ過ぎは良くないとか、60歳を過ぎたら肉を食べた方が良いとか何が正しいのかよくわかりません。

辨野:肉のタンパク質が大事なのはもちろんですが、肉のおいしさは脂肪にあるので、肉を食べすぎると結局、動物性脂肪の取り過ぎになりますね。

西川:からだにいい肉の食べ方はありますか?

辨野:野菜と一緒にバランス良く食べることが重要です。肉と野菜の比率は、1:3~1:5。また、発酵食品や海藻も良いでしょう。そうすれば、腸内環境が良くなりますよ。

西川:どんなうんちが理想的なんでしょうか?

辨野:良いうんちは80%が水分ですから、ストーンと気持ちよく出ます。すっぱい酸性臭がして黄褐色、男性で300g 、女性で250g程度です。重さはトイレに行く前と出た後で体重計に乗るとわかりますよ。

西川:お通じをチェックしてみることが大事というわけですね。

辨野:大便は体からのお便り。便所とは体からのお便りを読み取る場所ですね。健康管理する場所ともいえます。食べることは生きること、と言いますが、もっと言うと、出すことこそが生きること。うんちを、豊かに生きるうえでの目安にしてください!

西川:女性の死因1位が大腸がんということは、腸内環境が寿命を決めると言っても過言ではないですね。大腸は大腸がんのみならず、からだの中で一番病気になりやすい臓器だと聞きます。

辨野:たとえば、大腸がんは、遺伝的な疾患だと思われがちですが、実は腸内細菌によって引き起こされている病気です。

西川:胃がんがヘリコバクターピロリ菌によって引き起こされることは広く知られるようになりましたが、大腸がんも細菌が原因とは知りませんでした。

辨野:つまり、消化器官のがんとは、慢性的に常在している菌の感染症なんです。

西川:大腸がんが細菌による感染症だという認識などまったくありませんでした。

辨野:腸には大腸と小腸がありますが、小腸が消化吸収の場なのに対し、大腸は食べかすを貯めて排泄する器官です。小腸は消化酵素や栄養素が働く場なので腸内細菌が少ないのです。ところが、大腸は腸内細菌の巣窟です。しかも、人によってその構成パターンは十人十色なんです。

西川:大腸には大腸がんだけでなく、潰瘍性大腸炎、大腸カタルといった色々な恐ろしい病気がたくさんあるのも、人によって異なるさまざまな腸内細菌が引き金になっているわけですね。

辨野:大腸がんは転移しやすい病気なので、死因としては肺がんや肝臓がんでも、そのもとは大腸がんという人も多くいます。

西川:大腸にはどれくらいの数の細菌がいるんですか?

辨野:大便1g当たりに約6000億から1兆個近い細菌がいます。大腸内には1キロ近くの残差物(うんち)があるんですが、600兆個から1000兆個近い腸内細菌が管腔(かんくう)にいるのです。私たちの身体を構成している細胞数は60兆個ですからその10倍強。しかも大腸粘膜に定着している腸内細菌をかきあつめると、なんと1.5キロの重さになります。

西川:大腸内の細菌の重さだけで1.5キロですか!腸の中にそんなにたくさんの細菌を飼っているとは信じられません。私たちは腸内細菌と共生して生きているわけですね。善玉菌、悪玉菌の細菌も私たちのからだの一部だと考えた方が自然ですね。

辨野:ある意味、われわれの身体は腸内細菌によってコントロールされていると言ってもいいですよね。そして、21世紀になって腸内細菌の遺伝子解析によって、ようやくその全容が把握できたのですよ。

西川:遺伝子解析できるといろいろなことがわかりそうですね。最新の遺伝子解析によって、どんなことがわかってきたのですか?

辨野:2004年に科学雑誌「ネイチャー」でアメリカの研究グループが肥満に付随する腸内細菌の役割について発表しました。肥満は今まで食物の過剰摂取が原因と考えられてきましたが、新たな因子として腸内細菌が浮上したのです。

西川:肥満も腸内細菌の影響があるんですね!たしかに、太りやすい体質の人は、遺伝や食生活の影響も大きいでしょうが、何を食べても太りやすいと言いますね。親から引き継いだ腸内細菌の影響があるのかも知れませんね。

辨野:それだけじゃありません。脳の機能さえも腸内細菌が関与することがわかってきました。つまり、腸内細菌を抜きにして現代の医療は語れなくなっているんですね。

西川:「21世紀は腸の時代」と言われていますね。

辨野:まさにその通りです。よく考えると、動物のなかに脳のない動物はいても腸のない動物はいませんよね。ナマコなどの腔腸動物に脳はなく、腸そのものが脳の機能をしているのです。

西川:なるほど、生命には腸が一番大事なんですね。

辨野:さらに、身体に微生物がいない無菌動物と腸内細菌などをもった通常動物をくらべると、ドーパミンという脳内のやる気物質は通常の菌をもった動物のほうが少ないのです。つまり、ドーパミン産生を腸内細菌は抑制しているのです。ドーパミンが枯渇するとアルツハイマー病やパーキンソン病などの認知症の症状が出てきます。また、セロトニンという幸せホルモンの95%は腸でつくられて、血流を介してダイレクトに脳に行くようにもなっています。

西川:善玉菌を中心に腸内細菌は生きるために必要なんですね。腸の環境がいいとウツにもなりにくいし、幸せな気持ちになれるわけですか。たしかに、お腹の調子が悪いと気分まで悪くなって、やる気も出ません。

辨野:脳の機能は腸内細菌によって左右されているともいえますね。現在、「腸脳相関」という言葉が提示されています。昔は脳から腸に命令が伝わっていると考えられてきましたが、逆で腸こそがファースト・ブレイン(第一の脳)なのかもしれません。

西川:脳の健康も腸がつかさどっているんですね。

辨野:腸内環境は個人個人が違います。バランスの良い食生活で腸内環境を整えることが前提になってきますが、現在、私の研究課題は、これまで3200名の腸内細菌解析で得られた“腸内細菌データベース”を駆使して、「特定の腸内細菌を有している人には、どのような食生活をすれば良いか」という新しい健腸生活を提案することです。

西川:その人ごとの腸の特性に合わせた医療を提供することによって、病気になってから病院にいくのではなく、「未病」の段階で防ごうということですね。

辨野:健康を予防する立場から腸内細菌のデータベースを利用するという時代にきていますし、新しい展開が求められています。健康の在り方を変える、一番の大きな課題ですね。

西川:私がスーパーバイザーを務めさせていただいている厚生労働省の「健康寿命をのばそう!スマートライフ・プロジェクト」の運動にも大きくかかわってくるトピックスですね。

辨野:自分が生きていく上でこれを食べれば安心してうんちが出る。そういう習慣を身につけて、何を足せばいいんだろう、というような感覚を持っていただく。研究というところから一歩進んだ、健康へのアドバイスができるようになると、わくわくしています。

西川:うんちを毎日、チェックすることで、食生活を整え、腸が変わればからだも変わって心身の健康が維持できるんですね。私たちのからだの一部である腸内細菌と良いお付き合いをして、心もからだも健康でいたいものです。ありがとうございました!

辨野義己さん トピックス

最新刊『腸内細菌革命 若返る!やせる!病気にならない!』(さくら舎)は、健康と寿命を根本から変える腸内環境とその働きを解説。腸内環境を自分で良くし、いつまでも若々しく、長生きするための方法がわかります。

松尾 通 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

松尾 通 × 西川 りゅうじん 【巻頭特別対談】

松尾 通 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

生きてる限り『歯』が命!健康長寿の秘訣は口にアリ!

日本アンチエイジング歯科学会会長の松尾通先生と、「あざみ野STYLE」応援団長で厚生労働省の健康寿命をのばす運動を進める西川りゅうじんさんによる健康に関するスペシャルトーク!

西川:松尾先生は歯のアンチエンジングに関する第一人者としてご活躍ですが、歯は美容や健康だけでなく寿命に直結しますね。ボス猿も歯が悪くなるとすぐに地位を奪われますから。

松尾:動物は歯をなくすと食べられませんから、すなわち死なんですね。人間は、義歯など人為的なカバーがあるから生きていられますが、食べる楽しみがへると、老後が不幸なものになりかねません。

西川:大学時代に財界の重鎮として活躍する先輩に「社会に出る前にやっておくべきことは?」と聞いたら「卒業までに歯を治しておけ」と言われました。その時は拍子抜けしましたが、今となればなるほどと納得させられます。

松尾:雑誌「プレジデント」で70歳以上を対象に、「リタイア前にやるべきだった後悔トップ20(健康編)」という調査がありましたが、1位は「歯の定期健診を受ければよかった」なんです。70歳以上の人には歯は痛切な問題なんですね。

西川:長生きしても寝たきりでは本人も周囲もツライ。寿命よりも「健康寿命」こそが重要ですが、普段、歯の大切さを忘れがちです。

松尾:多くの人は60歳くらいで歯にガタがきます。ですから、死ぬまでの2~30年をどう埋めるかが課題です。悪くなってから治療するのではなく、ケアすることで歯の寿命を伸ばさなければなりません。「CureからCareへ」というわけです。

西川:歯医者さんといえば子どもの頃に虫歯になったら連れて行かれる怖いところというイメージが植え付けられがちですね。

松尾:そう、今までは歯の治療に対するモチベーションがネガティブだったんです。痛い、時間が掛かる、お金が掛かる。でも、Careは痛くありませんし、悪化する前にメンテナンスするので、お金もそれほどかかりません。

西川:歯垢や歯石を取ってもらうクリーニングは気持ちいいですが、そもそも歯石ってなぜよくないんですか?

松尾:歯石はバイ菌のたまり場なんです。歯周病菌も虫歯菌もそうですが、感染症なんですね。

西川:歯のバイ菌が原因となってあちこちに様々な病気を引き起こすことがあるんですね。

松尾:採血してみたら、血管のなかに歯周病菌が入り込み、粥状の血餅をつくっていたという例もあります。歯周病は全身に影響するんですね。また現在、日本人の死因は脳卒中を抜いて、肺炎が3位になりました。そのひとつである誤嚥性肺炎の原因は口腔ケア不足なんです。

西川:当たり前のことで普段忘れがちですが、私たちは口から食物だけでなく細菌も取り入れています。からだの入口にある歯は全身に影響を及ぼすんですね。 「噛む」ことは脳にも影響すると言われますが。

松尾:咀嚼で刺激を受けると脳に酸素を送り込むポンプの役割をするんです。統計的に見ても、歯を1本失うと0.6%の割合で認知症が進むと言われています。歯のケアは認知症の予防にもなるんです。高齢社会になって、幸せな人生の最後を送るためには健康じゃなくちゃならない。その一番の秘訣は「歯」なのかもしれません。

西川:まさに歯の健康が健康寿命をのばす。「芸能人は歯が命」というCMがありましたが、ヒトを含め、あらゆる生き物は歯が命ですね!松尾先生のお話から歯の健康が健康寿命をのばすために重要であることはよくわかりましたが、心身の健康をトータルにとらえるためには、当然、さまざまな医学との学際的な研究が欠かせませんね。

松尾:日本は、医学と歯学が教育制度も免許制度も別なのですが、最近やっと医歯連係という認識ができてきています。認知症や心臓疾患にも関わってくるわけですから。

西川:優れた歯科医師は、患者の歯を診れば、全身の健康状態がわかると言われますね。

松尾:私の医院では日常茶飯なんですが、お口をみれば糖尿病かどうかもわかります。医師に紹介状を書いて調べてもらいますと9割を超える確率で当たっています。

西川:なるほど、実際にわかるわけですか!歯学は医療の一分野であって、医療全体と関わって来る訳ですね。

松尾:これまでは歯科というと、削る・抜く・かぶせるという外科的な治療がほとんどでしたが、これからは内科的なところにも着目して健康管理をサポートしようとしています。

西川:松尾先生が先導されてさまざまな取り組みが始まっているとうかがいました。具体的には、どのようなことがスタートしているのでしょうか?

松尾:一つはプロバイオティクスです。ヨーグルトなどに入っている乳酸菌が歯周病を含めて身体の状態を良くすることはわかっていますので、口腔内科のなかでもこれを推奨しています。

西川:健康寿命をのばすヨーグルト「1Day+ワンデイプラス」ですね。私もいただいていますが、美味しいし、毎日調子がいいです。スウェーデンの医療バイオテクノロジー企業のバイオガイア社製の特別な菌で作られていると聞きました。食は栄養の補給のみならず、人生の楽しみや生きがいでもあります。ステーキが好物だった人が自分の歯で食べられなくなったら、つらいですね。

松尾:日本人の感性のなかに「歯ざわり」「歯ごたえ」「のど越し」というのがあります。なぜ、アワビが珍重されるかというと、歯ごたえなんです。その正体は歯のまわりの歯根膜というハンモックの役割をしたものがあって、これがセンサーとなって“おいしい”と感じるんですね。

西川:たしかに歯ごたえや歯ざわりで食感を楽しんだり、咀嚼するによって満足感を得ている部分は大きいですね。和食が世界遺産に認定されましたが、ヒトに歯があったからこそ、日本の素晴らしい食文化が華開いたとも言えますね。

松尾:噛むことは人間にいい影響を及ぼしてるんですよ。最近、食品メーカーはそこに注目していて、どうしたら噛みごたえのあるものを提供できるかを研究しています。そこで、私たちも食の分野にも関わってきて、お弁当の監修までやってるんです。個食がトレンドになっていますし、一大センセーションを巻き起こすんじゃないかと思っています。

西川:歯があってこその食ですからね。健康との関わりで言えば、食ともう一つ重要なのがスポーツですね。野球やサッカー、ゴルフをはじめスポーツ選手は、力を込める際に歯で噛み締めるので、歯のケアが欠かせないと聞きます。

松尾:大リーグの選手がガムを噛んでいるのは、集中力を高めるためですね。ラグビーなどのコンタクトスポーツではマウスピースを付けていますね。あれには外傷から身体を守るほかに、運動能力を高める効果もあって、瞬発力が上がると言われています。ほかのスポーツにも有効だということで、スポーツメーカーからノンコンタクトスポーツ用のマウスピースも発売されています。

西川:いい歯でいい噛み合わせをしていると馬力が出るんですよね。いみじくも歯を食いしばるという表現があるように、健康な歯があってこそ頑張れる訳ですからね。

松尾:それと顎位、アゴの位置関係にも関わるんです。正常な噛み合わせを持っていると体幹が安定する、これが良くないとなると胸椎も腰椎も傾いてくる。だから歯の噛み合わせを良くすることは体全体のバランスをとることにつながるんです。

西川:歯の噛み合わせが体の骨格の状態にまで影響を及ぼすのですね。歯の健康は消化器官や内臓、骨に至るまで人体のあらゆる器官の健康に直結していたとは驚きです!

松尾:そうなんです。健康全体のことを最近はとてもよく考えていて、「道の駅」ならぬ「健康の駅」構想というのもあります。全国には7万もの歯科診療所がありますから、ここを拠点にして、健康の情報を手に入れたり、ちょっとした体のメンテナンスもできる場をつくれたらと思っています。全部は無理でも5%でも参加すれば、立派な社会資本になります。

西川:歯科医院が、“健康づくりのインフラ”になれば素晴らしいです。歯の健康がからだ全体の健康につながる訳ですから、松尾先生のおっしゃるように、これからは、Cureではなく、毎日のCareのために歯科医院に気軽にうかがうことが大切ですね。ありがとうございました!

松尾通さん トピックス

「I❤aging」をテーマに開催される記念大会。当日は松尾先生の講演をはじめ、歯学界や医学界の著名な先生が講演。対談でおなじみの西川りゅうじんさんやナグモクリニックの南雲吉則院長による市民公開講座もあります。

渥美和彦 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

渥美和彦 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

渥美和彦 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

不老長寿はすぐそこにある未来 新たな時代の医療とは?
日本統合医療学会の渥美和彦先生と、「あざみ野STYLE」応援団長で厚生労働省の健康寿命をのばす運動を進める西川りゅうじんさんによる健康に関するスペシャルトーク。WEB版も必見!

西川:渥美先生はステキなおヒゲをお持ちですね。「鉄腕アトム」のお茶の水博士のモデルのお一人でもあるそうですね。

渥美:私は大阪の出身で手塚治虫さんとは、北野中学(現・北野高校)で同じクラスでした。彼は昆虫が大好きで絵も非常に上手でしたね。ちょうど漫画を描き始めていたようですが、そのときは天才なんてわかりませんでした(笑)。その後、彼は大阪大学、僕は東京大学の医学部に進み、いろんな会で一緒になりましたね。

西川:お二人は御縁が深かったんですね。手塚さんは私の小学校の先輩でもあり、伯父も手塚さんの同級生で虫取りをご一緒したようです。先生は常に医療の最先端で研究して来られましたが、統合医療とはどのようなものですか?

渥美:統合医療とは、漢方や針灸などの伝統医学と対症療法である西洋医学をあわせて、一人ひとりの患者にあった医療を提供するものです。

西川:心身を癒し未病を防ぐ各地に伝わる医療と手術などで治す近代医学の双方の良いところを合わせる訳ですね。

渥美:約20年前、伝統医学はそれまでの医学に変わる「代替医療」と共にアメリカで注目を集めていました。当時、私は日本学術会議の部長としてアメリカの医学界と交流があったことから、その情報を知り、早速日本の代替医療について調べ、学会をつくりました。

西川:林野庁の森林セラピー戦略会議の座長を務めましたが、ドイツなどでは森林療法や温浴療法に保険が適用されますからね。

渥美:今後、日本では統合医療をどのように取り入れていくかが課題です。われわれは東日本大震災を経験し、今後も南海トラフ地震に備えなくてはなりません。震災でライフラインが途絶えると電気を使う西洋医療は機能しなくなりますので、災害医療としての統合医療が必要になってきます。そこで、今、神奈川や静岡、愛知、三重、和歌山の知事と、各地域で統合医療センターを設けようという話をしています。神奈川の黒岩知事は理解がありますので、モデル県となる可能性がありますよ。

西川:地域から医療が変わりそうですね!それに統合医療は予防医学にも力を発揮するでしょうね。もともと東洋医学は日常から未病を防ぐことに重点を置いています。

渥美:そうですね。今までの医療産業は、病気になった人を助けるものでしたが、これからは未病の状態で患者さんを発見して病気を予防する方向に進んでいくと思います。それにはセルフケアがカギになってきます。

西川:日本人の死因の大半は生活習慣病が元ですが、生活習慣は自分で変えるしかありません。

渥美:はい。食事や運動は以前から注目されていますが、住まいを快適に整える森林浴マシンなんていうのも登場していますし、“着る医療”にも注目が集まっています。「バイオラバー」もその一つですよね。

西川:意識して、日々、身の周りの衣食住に気をつけて、健康を維持することが大切ですね。

渥美:まさにこれからは予防医学、健康の時代。そうすると、それを生み出す新しい医療産業が必要になってきます。病気になって痛い思いをするんじゃなくて、そうなる前に予防する。そんな夢を実現する社会を「未来健康共生社会」と名付け、研究会もスタートさせています。

西川:不老長寿は人類の夢。みんなの健康が経済の元気化につながるとは超高齢化社会に突入した日本にとって明るいニュースですね!

西川:小保方晴子さんが万能細胞の一種であるSTAP細胞を発見して話題を呼んでいます。そういった再生医療もこれからの最先端の医学ですよね?

渥美:今のところ再生医学で、心臓の断片をつくって動かせるところまでできています。ほかに、遺伝子科学の分野ではゲノム診断というのも登場しています。血液を採取し、遺伝子を分析すると、その人が将来どんな病気になる可能性があるかを予め診断できます。

西川:アンジェリーナ・ジョリーが、遺伝子検査の結果、乳がんになる可能性が非常に高いからと、まだがんになっていないのに切除したことで注目を集めましたね。

渥美:ゲノム診断はコンピュータ解析が中心の医学ですが、そのほかにもITは予防医療にも活用されようとしています。たとえば、ウェアラブル(身につけることが可能な)センサーを利用して、具合が悪くなったになったとき、すぐに病院に連絡できるシステムという実験をしたことがあります。

西川:ITやバイオをはじめとする最先端技術とその対極にある伝統医学。そういったあらゆる人類の叡智が融合して、未来の医療が切り拓いて行かれるわけですね。

渥美:新しい言葉でいうと、ユビキタス社会ですね。今は、そのモデルを世界のどこでやるか、というところまで時代がきています。

西川:また一方で、日本は高齢化社会への課題が山積しています。日本人は寿命は長いですが、その分、認知症や寝たきりの人も少なくありません。一昔前までは長寿県だったのにいつのまにか平均寿命が短くなっている地域もあります。

渥美:地方は車社会で歩く機会が少ないことが一つの原因でしょうね。便利になっている裏側には、必ず副作用や弊害がともないます。ですから、どのように利便性を管理するかが問題です。

西川:便利過ぎることが全て善ではありません。20年くらい前は街づくりと言えば、すべてバリアフリーにすれば良いと思われていました。しかし、最近になって、ロコモ(自ら動けること)の重要性が見直されて来ていますが、人間も生き物です。自分の足で動けるということが何よりも大切です。血液も手足を動かすことによって、骨の中の骨髄で作られます。健康を維持するためには、日頃から一定の付加をかけて足腰を動かす習慣が必要になります。ですので、昔の人が歳を取ってからもお寺の参道の階段を登り降りしたように、街にも坂や階段は必要なんです。それこそが自然の状態だからです。

渥美:高齢者を含めた町づくりというのも課題です。高齢者が病気を経て退院した後、ただ単に病院と家を往復する生活ではなく、その人たちが何か仕事や生きがいをもって働ける町づくりを考えなきゃいませんね。

西川:昨今、「コンパクトシティ」という考え方で、街の機能を中心部に集約して、もう一度、みんなで一緒に住もうという流れが出て来ています。そうすると、高齢者がお互いがどうしているかわかるし、若い人たちと交流する機会や場も増えます。コミュニティを再生することにもつながるのです。

渥美:そうですね。高齢者も社会のしくみに参加することを考えた方がいいでしょうね。高齢者には知恵や経験をもった人がたくさんいます。子どもや孫を育てた女性が、若いママさんを集めて子育てについて教えるというように、高齢者のなかには先生と呼べる人がたくさんいるはずです。社会参加をすると本人も元気になります。

西川:古今東西、世代を超えた人的交流によって人類は進歩して来ました。渥美先生の提唱されている統合医療によって、一人一人にとって有意義な高齢化社会にして行きたいものです。ありがとうございました。

渥美和彦さん トピックス

最新刊『医者の世話にならない生きかた』(ダイヤモンド社)は、人が本当に健やかに、幸せに、人生を送るための「医」を提唱。病院や医者の見きわめ方、病気との付き合い方、自分の面倒の見方をとおし、これからの時代の新しい生き方がわかります。

田口淳一 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

田口淳一 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

田口淳一 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

ウォーキングと筋トレでアンチエイジング!
東京ミッドタウンクリニック院長で、最先端のガン治療を行う田口淳一さんと、「あざみ野STYLE」応援団長で厚生労働省の健康寿命をのばす運動を進める西川りゅうじんさんによるカラダの健康に関するスペシャルトーク。

西川:田口先生は医療現場の最先端でご活躍ですが、日頃から私たちが気を付けなければならない健康に関する注目のキーワードはありますか?

田口:「ロコモ」または「ロコモティブ・シンドローム」という言葉をご存じでしょうか?

西川:ロコモティブは機関車の意味もありますから、体の動きに関する問題ですね。

田口:ロコモとは、膝が痛い・腰が痛いなど、歩行や日常生活になにかしらの支障があり、将来寝たきりのリスクが考えられる状態のことをいいます。

西川:ロコモは年齢に関係なく老若男女の誰にでもありがちなカラダの不調ですね。

田口:そうなんです。実は、現在、日本の医療費にかかっている金額は、心筋梗塞や脳梗塞といった心臓・脳疾患系よりも、整形外科系のほうが多いんです。

西川:たしかにビジネスマンやOL、主婦にも膝や腰の痛みに悩んでいる人も多いし、毎日の湿布や痛み止めにかかるお金もバカになりません。

田口:老化というのは筋力の低下から始まります。逆に筋トレをして大腿四頭筋という大きな太ももの筋肉をはじめ体幹の筋肉などをきたえると、アンチエイジングホルモンが放出され、若さが保てます。私の病院に来られる方で、88歳の方がおられます。70歳でゴルフを始められ、80歳になってリタイタしたので一念発起して筋トレを週2回始められてから、4キロくらい体重がへって、ドライバーが150ヤードから200ヤードをラクラク越えられるようになったそうなんです。

西川:実は私の父は82歳なのですが、先日、ゴルフで人生2度目のホールインワンを決めました。今度は3回目を目指すと張り切っています。周囲はちょっと困惑していますが(笑)

田口:筋トレをしてきたえれば、70歳や80歳をスタートにしても人間は成長できるんですね。ドライバーで200ヤードを超えられるなんて、40代の人が聞いてもうらやましい話ですよね。

西川:文部科学省による最新の調査では、なんと、70代の4割が地域のスポーツ同好会やフィットネスジムなどに所属しているとのことです。

田口:それはとても正しい健康法です。一時期、ジョギングが注目されていましたが、筋トレのほうが、整形外科的には、のぞましいでしょうね。将来、医療費にお金をかけないようにするためには、3、40代から積極的にやるといいですね。あとは、普段から歩く習慣をつけることが大事ですね。近くなら車で移動するより歩く、エスカレーターを使わずに階段を自分の足で上る、というように。

西川:クルマばかりで移動する地方の人より、毎日、電車の駅で階段を上り下りする大都市の人の方が健康だと言われますからね。

田口:足腰の筋力トレーニングは、寝たきりやボケ防止にもつながります。筋肉や骨が弱くなり、骨折して寝込んでしまうと、一気に老け込みます。人とコミュニケーションをとらなくなることも一因なのかもしれません。

西川:人間は人と人の間と書くように人同士でつながっていないと生きて行けません。地域の歩く会やジムで体をきたえつつ、そこで友だちを見つけて、心身ともに健康な生活を送るのが一番ですね

田口淳一 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

西川:健康と美容のためには、運動のみならず食事が大切ですが、ダイエットに関して医学的見地からアドバイスがあれば、ぜひご教授ください。

田口:最近、ダイエットに成功するためには、どの方法が効果的なのかという研究がありました。その研究では、3つのダイエット法を比較したんです。1つは、野菜と穀類を中心とした食事をし、脂肪をカットし、良質なたんぱく質を少し取る。2つめは、炭水化物をゼロにしてお肉や野菜はいくらでも食べてもよいローカーボンダイエット。3つめがオリーブオイルとサラダを多めに取る地中海式ダイエットです。

西川:興味深いです。どれも効果があると言われているダイエット法ですからね。一体、どれが最も効果的だったのですか?

田口:実は短期間での成功率はどれも高かったんです。さらにその中で、食事制限中の満足感はどれが高かったかというと、2つめのローカーボンだったんです。欧米人を対象にした結果だったからかもしれませんが、肉や野菜に制限がなかったことがよかったのではないでしょうか。加えて、体内の善玉コレステロールも増えたんです。

西川:なるほど。お肉や野菜が食べ放題でやせられたら最高ですね。でも、ご飯もパンもうどんもソバもお好み焼きもデザートもまったくダメなのはツライ。

田口:誰も予想していなかった結果でした。でも、やはり疑問が残るということで、長期間に渡ってどんな食生活をしてきた人が健康なのか、という研究をした人がいたんです。

西川:短期的にやせてもカラダを壊したら意味がないですからね。それで、結果は、どうだったんですか?

田口:やはり、肉や野菜しか食べない人というのは、それなりに動脈硬化など心臓系の疾患があるとわかりました。ダイエットのために短期間のうちは、ローカーボンでもいけど、その後はバランスのよい食事を心がけるのがよいようです。

西川:極端なダイエットがいいはずがありませんね。医食同源と言うように、健康寿命をのばすためには食事バランスに尽きます。人間は雑食の生き物ですからね。一時期、りんごダイエットなど単品ダイエット法が流行りましたが、続くわけがないですね。リバウンドするのが目に見えています。

田口:そうですね。たまたま成功する人はいそうですが。でも、あるダイエット法は失敗しても、違う方法がぴったりくるということもありますので、再び挑戦してみるということも大切かもしれません。

西川:たしかに健康に良いことを始めるのに遅すぎることはありません。それに何度へこたれても、やらないよりはやった方がいいですからね。

田口:禁煙も同じで、一度失敗をしても、またやり直せばいい。失敗したという罪悪感をもちつづけるんじゃなくて、何度でも再チャレンジ。そういう気持ちでいれば、ダイエットも禁煙も成功できるんじゃないでしょうか?

西川:ありがとうございました。読者の皆さんにとっても大いに参考になったに違いありません。人生二度なし。バランスの取れた食事・運動・禁煙・睡眠に気をつけて、心と体の健康寿命をのばしましょう!

田口淳さん トピックス

現在は先端医療として進行がんに対する樹状細胞免疫療法も行っています。医師会での講演会や学会活動も行い、流血中がん細胞やがん組織遺伝子検査などの研究及び臨牀も実行しています。

尾身奈美枝 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

尾身奈美枝 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

尾身奈美枝 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

季節の食材で心も体もハッピーに!
テレビ番組で料理のスタイリングを手がける元祖フードコーディネーターであり、料理研究家としても大活躍の尾身奈美枝さんと、「あざみ野STYLE」応援団長で厚生労働省の健康寿命をのばす運動を進める西川りゅうじんさんによるグルメと健康に関するスペシャルトーク。WEB版も必見!

西川:尾身さんはフードコーディネーターの草分けとして、また料理研究家として活躍されて来られましたが、そのきっかけは?

尾身:私の実家は工務店で住み込みの人もたくさんいました。母がそこでみんなのごはんやお弁当を作っていて、私も早くから包丁をもって手伝うのが好きだったので、将来は漠然と料理に携わる仕事がしたいと思っていました。それで、高校を卒業後、調理師の専門学校へ進みました。

西川:当時は調理師学校といえば男の世界ではありませんでしたか?

尾身:そうなんです。女性は2割しかいませんでした(笑)。私はそのまま短大に進学できる高校に通っていたので、先生もびっくりして「短大を卒業してからでもいいんじゃない?」と。でも私は早く料理の道で身を立てたかったんです。

西川:学校を卒業してすぐにどこかのお店で料理人になったのですか?

尾身:私は料理人というより、料理学校の先生みたいなことをしたいと思っていたんですが、そうした求人というのはなかなかなかありません。でも、働きたい気持ちが強かったので、学校の行きかえりに見かけていた料理学校に履歴書を持っていきました。当然、初めは受け入れてもらえなかったんですが、とにかく押しの一手。その後も熱心に電話をかけていたら、手伝う機会を与えてもらって、正式に採用をもらいました。

西川:まさに初志貫徹!その経験が料理研究家のベースになったわけですね。そして、フードコーディネーターへは?

尾身:その後、当時としては珍しくシェフがデモンストレーションをして料理を教えるカルチャースクールができるというので、そこでアシスタントをしたり、NYに渡って領事の家庭で料理を作ったりしました。NYでは70歳なのに大学生になった男性と出会いました。私はそれまで、年齢を気にしていたように思うのですが、「やりたいことがあれば、そのときがやりどきなんだ」と気づきました。先輩から『料理の鉄人』の話をいただいたのもその頃です。

西川:尾身さんがそのとき奮闘されたお陰でフードコーディネーターという職業が確立され、現在のグルメブームにつながったわけですね。今、変化を振り返ってみてどう思いますか?

尾身:コックさんがシェフになりオリーブオイルやバルサミコ酢を誰でも知っている世の中になりました。料理がこんなに力をもつ時代になるなんて想像もしていませんでした。

西川:一方、家庭で料理を作る機会が減り、今や手作りで料理を作るのは特別なイベントになってしまっている家も少なくありません。

尾身:現在のお母さん達は忙しいのでお惣菜を買ってくるのは仕方のないことかもしれません。でも、1品だけ手作りのものをプラスしたり、お惣菜にスライスした玉ねぎやキュウリを足すだけで、子どもに本当の野菜のおいしさが伝えられます。私が簡単なレシピを提案しているのもそのため。気負って難しいものをつくるより、季節の食材をゆでるだけでいい。夏に一緒にキュウリをかじったな、とか食を通じて季節の思い出もつくってほしいですね。

西川:『料理の鉄人』で数々のスターシェフとお仕事をご一緒されたと思いますが、特に革新的だと感じたのはどなたでしたか?

尾身:皆さん本当に素晴らしい方ばかりですよね。特に道場六三郎さんは即興性のあるアイデアを料理に取り入れた方。和食にバルサミコ酢を取り入れたり、和食のイメージをくつがえしました。また、料理の鉄人でずいぶん料理界もオープンになりました。

西川:たしかに道場さんが登場するまで和食は徒弟制度に守られた、変化のない閉ざされた世界という印象が強かったですね。男社会だった日本食の料理界も変わりつつありますね。

尾身:ほんとに、昔は和食の道に女性が進むなんて考えられませんでした。でも、今は女性のほうが長続きするし、手先が器用と重宝されているそうです。今はまだ表舞台には出てきていませんが、5~10年後にはミシュランで星をとれるくらいの人は出てくると思います。

西川:尾身さんに続く人も出て来るといいですね。日本の食の世界はますますおもしろくなるに違いありません。何より日本はあらゆる食材に恵まれていますから。

尾身:日本は縦に長い国なので、北から南までいろいろな食材が豊富です。春夏秋冬それぞれの旬もあるし、海にも囲まれている。番組でいろいろな場所に行かせてもらって、改めて日本はすごいな、と思います。

西川:食材も食のレベルも世界のトップ。バランスの取れた和食のお陰で平均寿命も世界一でした。しかし、近年、食生活の欧米化などによって、健康に過ごせる時間を意味する「健康寿命」が男女ともに寿命より10年も短くなってしまっています。このまま行くと、さまざまな生活習慣病によって、日本人の寿命自体も短くなる懸念が出て来ています。

尾身:人間の内臓が食事に追いつくのって三代かかるそうなんです。日本の食事が欧米化したのは戦後ですよね。特に大腸がんが増えているというのは、腸の長さと食生活がマッチしてない。寿命が短くなるのもそのせいかもしれません。

西川:医食同源と言うように、体は食べたものでできています。健康のためにも食は重要ですね。それに、あざみ野周辺には小さなお子さんを持つお母さんもたくさんいるので、子どもの時から食事には気を使ってあげていただきたいですね。尾身さんご自身もあざみ野と関わりがあるのですね。

尾身:はい。あざみ野にDaiというハワイアンレストランがあるのですが、そこのデザートのレシピを提供しています。いつも来ると、若いマダムのパワーが動き出す可能性があると感じます。

西川:食は美と健康の素。美しく元気なあざみ野マダムに、新たな“あざみ野STYLE”の食を生み出して行っていただきたいですね!

尾身奈美枝さん トピックス

尾身奈美枝さん トピックス

生放送でニンニクを使った料理を披露。こどもからお年寄りまで、おいしく食べられて元気になれるカンタンなレシピが紹介されます。たくさん買ってしまったときの使い切りアイデアも満載。夏の疲れが出るシーズンを手作りの食事で乗り切りましょう。

吉元由美 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

吉元由美 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

吉元由美 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

人を喜ばせて「素敵スイッチ」をオン!
杏里や平原綾香をはじめ日本を代表するアーティストの楽曲に歌詞を提供してきた作詞家の吉元由美さん。憧れの職業に就き、人々の記憶に残る作品を紡ぎだす原点はどこにあったのか?そして、歌詞を創り上げるまでには、どのようなドラマがあったのか?貴重なエピソードには、さまざまな気付きがあふれています。お相手は「あざみ野STYLE」応援団代表でマーケティング界のカリスマ、西川りゅうじんさん。誌面のみならずWeb版もぜひご覧ください!

西川:吉元さんは、平原綾香さんの「Jupi ter 」をはじめ、数多くのアーティストの作詞を手がけられていますが、大学卒業後は広告代理店に勤務されていたそうですね。どういうきっかけで作詞家になられたのですか?

吉元:私はもともと、人生は持ってうまれた才能をいかして生きていくものだと思っていました。でも、自分には特別な才能なんて何もないと思っていました。そんな、あるとき「作詞家になってみたら?」と言われたんです。確かにクリエイティブなことに興味はあるし、音楽も好き。「どうしたらなれますか?」と聞いたら「勉強すればなれるよ」と返ってきました。勉強してなれるなら、挑戦してみようと思いました。

西川:自分探しですね。勉強というと学校に通われたんですか?

吉元:いえ、独学です。本や映画をたくさんみて、名作といわれる詞を写経するんですね。言葉が腕から伝わって、刻み込まれるイメージ。詞の構成がわかり、楽曲を俯瞰して見られるようになりました。

西川:そこからどういういきさつで、作詞家デビューされたんですか?

吉元:知人の紹介で芸能プロダクションを訪ね、書き溜めた作品をプレゼンしたんです。すると、その場で新人アイドルの楽曲を2曲分書いてくださいと発注を受けました。そのとき、「あ、私の人生が変わった」と思いました。

西川:それはすごいですね!でも、すぐに稼げるわけじゃない。会社に勤めながら作詞家デビューされたんですか?

吉元:そのオファーを受けたのが4月でリリースは6月でした。私は、7月には会社に辞表を出しました。確かに1、2曲書いたからといって売れる保証はありません。でも、私は大きな運をつかみたかった。会社のお給料を保険のようにして、人生を歩みたくはなかったんです。

西川:背水の陣でのぞまれたわけですね。そんな姿勢が運を引き寄せるカギになったのでしょう。吉元さんの生き方は多くの女性達の憧れです。一方で、心の中に夢を抱きながら、一歩を踏み出せない人も数多くいます。

吉元:人は必ず、果たすべき目的を持って生まれてきています。そもそも私たちは、親から命を与えられているということを忘れてはいけません。取り柄のない人なんていないはず。自分を信じてそれを見つけにいってほしいですね。

西川:人それぞれ存在意義があるということですね。自分にはやりたい仕事も、いい出会いもないと思っている人にメッセージはありますか?

吉元:自分のためと思うと限界がきますが、人に喜んでもらいたいという発想に変えると何かが見えてきます。神様になったつもりで考えてみるとわかりやすいでしょう。神様なら、自分から働きかけて、人に喜びを与えている人にチャンスを与えてあげたいと思うはずです。takeからgiveへ発想を転換してみることですよ!

西川:吉元さんといえば、杏里さんの楽曲を数多く手掛けておられますね。彼女の曲に携わるようになったのは、いつ頃のことですか?

吉元:作詞家としてデビューして3年目でした。当時、杏里が「キャッツアイ」や「悲しみが止まらない」でヒットを飛ばしたころです。レコーディングのアルバムで数曲手掛けた後、アルバム「サマーフェアウェルズ」の1、2曲ほど参加したあとに、ロンドンでレコーディング予定のアルバムをコンセプトづくりからお手伝いしました。

西川:杏里さんの登場は時代の音として世の中に衝撃を与えました。一気にスターダムへと駆け上がって行った杏里さんのアルバムをコンセプトづくりからゆだねられるとは、すごいことですね!

吉元:自分としてもチャレンジでした。同時に杏里には、当時すでにスターだった松任谷由美さんや竹内まりやさんとは別のもうひとつのストリームを創り出せるだけの可能性を感じました。私はそれを「適齢期サウンド」というコンセプトで同世代の女性たちの気持ちをくすぐる世界観を創り、発信して行こうと考えました。

西川:杏里さんは作曲をされていたけれど、作詞は吉元さん。まさにお二人によるコラボレーション、協働。楽曲制作のパートナーですね。一方、平原綾香さんの「Jupiter」を手がけられたのは今から10年程前になりますでしょうか?

吉元:はい。レコード会社から新人がデビューするということで話があり、ホルストの原曲に日本語で歌詞を付けるということはすでに決まっていました。そこで平原さんが歌っているのを初めて聴いてみて、低音からぐっーと上がってくるような歌声に、アメリカ・セドナで見た、遠くの地平線に雷が落ちるイメージが浮かびました。「平原さんの声は天と地をつなぐエネルギーなんだ」と思いました。

西川:特別な歌声を持っているというのを確信された。従来の歌謡曲とは何か違うメッセージを込めようと思われたんですね。

吉元:今までも、私自身のメッセージや哲学を詞に盛り込んだことはありましたが、平原さんはそれを自分自身の声としてストレートに表現できるアーティストでした。私が感じた中で一番大事なことを表現すればいいと思いました。「私のこの両手で何ができるの?」という詞がありますが、自分から働きかけていくと良い作用が波紋のように広がります。「利他」の精神はこれからの時代のキーワードになるはずです。

西川:見返りを求めず、自ら種をまくと、花が咲き、実を結びますね。喜んでもらうことを自らの糧とすることこそが人生の幸せにつながるのでしょう。

吉元:「よろこんでもらえましたでしょうか?」という、ある種の、芸人スピリットですよね(笑)。心境が変わると変化も起きます。人を喜ばせることは、自分の「素敵スイッチ」を点火することなんです!

西川:一人でも多くの人に心のスイッチをオンにしていただきたいですね。ありがとうございました!

吉元由美さん トピックス

吉元由美さん トピックス

吉元さんの歌詞にも込められている美意識やメッセージを学び、自分らしくいきていくためのサロンセミナー「吉元由美のLIFE ARTIST」が開講中です。感性を磨き、運をつかんでみませんか。詳しくは、事務局03-5326-3601まで。

青木晃 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

青木晃 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

青木晃 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

アンチエイジングで、心と体を健康に!
今回の対談には、日本のアンチエイジング(抗加齢)医学の第一人者としても知られる青木晃院長をお招きし、現代社会において、より健康に生き抜く秘訣を中心に様々なお話を伺いました。お相手は「あざみ野STYLE」応援団代表、マーケティング界のカリスマ、西川りゅうじんさん。約2時間の対談では、青木先生が自衛隊医官時代に体験された「地下鉄サリン事件」の裏話も飛び出しました。今回は誌面だけでなく、WEBも必見です!

西川:青木先生は早くから「アンチエイジング」に着目して来られましたね。そのきっかけは何だったのでしょうか?

青木:私が防衛医大で研修医をしていた時に、担当していた患者さんが重度の糖尿病でお亡くなりになったのがきっかけです。60歳ぐらいの男性でしたが、非常に過酷な闘病生活でした。失明、透析、脳梗塞などでほとんど動けない状態。奥様が付きっきりで看病していたのですが、家族の心労も大変なものでした。これを見て「糖尿病って、こんなに酷い末期を迎えるのか…」と衝撃を受けました。糖尿病という病気は、日頃の生活に気をつけていれば防げるもの。しかし、多くの患者が予備軍の状態を放置し、病気になって、はじめて事の重大さに気付くのです。これは、今の保険制度ではある意味仕方ないことなのですが、この状況をどうにか変えることはできないかと思い、アンチエイジングに注目しました。

西川:なるほど。ヒトは習慣の動物ですからね。糖尿病をはじめ生活習慣病は、まさに日常の生活の習慣が原因。病気が発病してから治療することより病気にならない生活習慣こそが大切ですね。

青木:アンチエイジングとは「元気で長寿を享受するための理論的、実践的科学」です。私は実践を通じて、アンチエイジングの概念を世に浸透させたいと思っています。病気にかかりにくい身体を作ることは、男性はよりかっこよく、女性はよりきれいで美しくいることに繋がるのです。

西川:戦後、「GNP」(国民総生産)ばかりを、数字をばかりを追いかけて来た日本人が、「新GNP」=元気・長生き・ポックリを求めるようになって来ました。寿命より、自分で自立して生きられる健康寿命は10年も短いですからね。日常的にアンチエイジングを意識することは大切ですが、具体的には何に気を配るべきですか?

青木:基本は3つです。食、運動、生き甲斐です。まずは食ですが、老化というのは体の中に活性酸素が発生すること。それを予防するためには、新鮮で作り手のはっきりした野菜を食べること。緑黄色野菜がいいですね。また、体に悪いものを入れないことも重要です。食品の成分を見て、○○安息香酸とか見慣れない文字があるものは極力避けていきたいですね。

西川:現代は利便性を追求するあまり、合成や人工のものが溢れています。こういう世の中だからこそ、より一層食べ物への注意が必要になってきますし、子供への食育も大切になってきますね。

青木:その通りです。また、運動では歩くことが大切です。私は4年間、休まずに一日一万歩を歩いています。毎回、ニンテンドーDSを使ってゲーム感覚でやっているのが、続けるための秘訣ですね。「やらなきゃ」という気持ちよりも、楽しむ姿勢が大切だと思います。

西川:そうですね。私も毎日のようにジムに行き、筋トレと水泳をしています。最初は億劫でしたが、ジムに通ううちに友達ができたりして、今ではすごく楽しんでいます。そして、3番目の生き甲斐はすごく共感できます。一番大切と言っても過言ではないと思いますが、いかがでしょう。

青木:そうですね。生き甲斐や夢、希望、目標があるのとないのでは全然違います。冒険家の三浦雄一郎さんが良い例ですね。私は順天堂大学時代に三浦さんのバックアップをしていたこともあるんですが、彼の場合、食は結構いい加減なんですよ。いっぱい食べるし、飲むし。でも、運動と生き甲斐はすごいですよね。62歳でエベレスト登頂を決めて、70歳で達成。今年で80歳になるのに、3度目のチャレンジを表明していますからね。

西川:三浦さんは本当にスゴい方ですよね。エベレストのような低気圧、極寒の地はいるだけでも大変です。私も以前、高地であるメキシコシティに行ったことがありますが、まったく体が動かなかったですしね。

青木:エベレストのような高地においては、年齢+70歳まで身体能力が落ちると言われています。その状態に身をさらすのは、ある意味究極のアンチエイジングですよ。

西川:なるほど。男性の場合、仕事が生き甲斐という人も多いですよね。私の周りでも、仕事に没頭していた人が定年を迎えると、一気に老け込んで元気を失くす方が多いですね。とにかく、食、運動、生き甲斐。この3つを意識することが体を健康に保つための秘訣ですね。先生のFacebookを見ると、毎朝のランニングやワインを楽しんでいる姿がアップされています。まさに、この3つを実践しているなという印象です。

青木:私も西川さんのフィードを見て、「すごく運動をしているな」と関心していますよ。確かにFacobookは、その人のライフスタイルを垣間みることができるので、アンチエイジングに最適のツールです。私の周りには、アンチエイジングを意識している方が多いですが、皆運動と食に気を遣っているし、遊び方も上手ですよね。共通性が見出せます。

西川:そういう方は、多くの人にとってのロールモデルになりますね。「走らなきゃダメ!」とか「食に気をつけて!」と説教するのではなく、その人のライフスタイルを見て「こうなりたい」と思うことは、非常に前向きですよね。

青木:私が毎日走っているのを見て、友達がランニングに興味を持ってくれることもあります。あれだけ「走れ!」、「食べるな!」、「飲むな!」と患者さんに説教してもダメだったのに、向こうから興味を持ってアプローチしてきてくれることを考えると、これはまったく新しい医療だとも言えますね。

西川:先生は今でこそ、アンチエイジングの権威として知られていますが、地下鉄サリン事件にも大きく関わっていたそうですね。

青木:ええ。私は当時、医官でしたので。確か第一報は、地下鉄で毒ガスがまかれたらしいというものでした。4人が亡くなっていて、他の人も生死に関わる状態であるとのこと。自衛隊にも招集がかかり、私は聖路加国際病院に派遣されました。

西川:もっとも患者が多かった病院ですね。院長の日野原重明さんが、大量受け入れができるように設計していたという。

青木:そうですね。聖路加には陸軍の医官である私と、海軍、空軍の医官、看護官が向かいました。その時、毒ガスが原因だということは、わかっていたのですが、それが何かがわからい状態でした。「アセトリトリル中毒じゃない?」と言われていましたが、それで死者が出るとは考えにくい。患者を見てみると、鼻水や喘息のような咳、目の頭の痛みを訴えていました。決定的だったのが、見たことのないようなピンポイントの縮瞳。これを見てサリンだわかったんです。

西川:先生がその判断を下したんですか?

青木:私は士官学校で、嫌というほど化学兵器の勉強をしていたんですね。その時は「こんなの、いつ役に立つんだよ」と思いながら勉強していましたが、まさかこんなに早く役立つとは思ってもいませんでした。サリン、ソマン、VXガスなどの毒ガスについても、かなり勉強していたので、症状や対処法も熟知していました。なおかつ、私は事件の2ヵ月前にアメリカとNATOが協同で編集した特殊武器防護の本の翻訳を手伝っていました。私が化学兵器の章を担当していたこともあり、最新事情にも精通していたんですね。

西川:先生がいたからサリンだとわかったとは…。聖路加国際病院に運ばれた600数名の患者さんのパニックを救ったということですね。

青木:治療が一段落した時、休憩室でテレビを観ていたら速報が入ってきましてね。「自衛隊の毒ガス専門医がサリンと断定」とううニュースが流れたんですよ。「誰のことだろう?」なんて、みんなで話していたら、それが僕だったみたいで。夕方に自衛隊病院に帰ったら、糖尿病の専門医から毒ガスの専門医になっていましたよ。

西川:今でこそ、こうやって語ることができますが、あの事件の裏側にはこんなことがあったんですね。

青木:その後、アメリカやイスラエルの軍医が来て「これだけの濃度のサリンが撒かれて、死者が4名に抑えられたのは奇跡だ。初期治療の賜物だ」と言っていただきました。また、佐々淳行さんの本に取り上げていただき「聖路加国際病院の日野原院長と青木という医官が職務を超えて連携したからこそ、被害を最小に留めることができた」とも書いていただきました。それまで、普通の自衛隊員だったんですが、この件で立派な勲章をいただくことができました。

青木晃さん トピックス

青木晃さん トピックス

青木先生の生き甲斐の1つでもあるワイン。好きが高じて2011年に日本ソムリエ協会認定「ワインエキスパート」の資格も取得。この春から恵比寿にあるワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」で、講師を務める。詳しくは、レコール・デュ・ヴァン 0120-844-055まで。

北原照久 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

北原照久 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

北原照久 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

たった一度の人生。夢を持って思いっきり楽しもう!
今回の巻頭特別対談では、10月2日に行われた、公開対談「楽しみながら夢を実現する生き方とは?」の模様を紹介します。ゲストには「開運!なんでも鑑定団」でおなじみの、おもちゃコレクター北原照久さんをお招きしました。お相手は「あざみ野STYLE」応援団代表、マーケティング界のカリスマ、西川りゅうじんさん。まさに夢を形にし続けてきたお二人に、夢を実現する秘訣を語り合っていただきました。

西川:北原さんは、ホントに「楽しみながら夢を実現する生き方」を実践しておられますが、夢を実現するために心がけていることはありますか?

北原:そうですね。僕は夢を叶えるために「自分の夢を、熱く情熱的に楽しく語る」ことを心がけてきました。とにかく、一見無理だと思われるような夢でも口に出すんです。たいてい100人に話すと99人は「無理」と言う。でも、必ず一人はおもしろがってくれる人が出てきます。これが1,000人であれば10人、一万人であれば100人が味方に付いてくれることになるんです。100人が協力してくれれば、大抵の夢は実現できます。

西川:「有言実行」ですね。北原さんのように明確な夢を持って、その夢を腹の底から熱く情熱的に語れる人はそうそういません。人間は人の間と書く通り、同じ夢を持つ仲間を増やすことが夢の実現の必須条件に違いありません。

北原:「夢が叶う」と言いますが、「叶」という文字は、口偏に十と書きますよね。口から10回、言葉が放たれると叶うということです。ただ、私はこれでは足りないと考えています。だから、線を一本足して千回、それでもダメなら1万回、とにかく夢を熱く語ることが大切なんです。

西川:そして、「誠実」に語ったことを実行することですね。「誠」とは「言」ったことを「成す」と書く。そうすれば「実」りますね。

北原:私はこれまで「おもちゃ博物館を作りたい」、「加山雄三さんに会いたい」、「吉永小百合さんに会いたい」、「サンダーバードに乗りたい」という夢を、学生時代から想い続けてきました。今年で64歳になりますが、これらの夢を実現できたのも、口に出して言い続けたからだと考えています。

西川:学生時代から43年想い続けて、60歳で吉永さんに会えた時は感無量だったでしょう。

北原:メディアでもずっと「好き、会いたい」と言い続けてきました。お会いした時は、うれしすぎて、記念のTシャツを作ったほどでした(笑)。

西川:そこまで思ってもらえれば、吉永さんも女優冥利に尽きますね。夢を叶える秘訣は何でしょう?

北原:夢が実現した後のことを具体的にイメージすることです。例えば「吉永さんに会ったら、どんな話をしよう?」と、具体的に考えるんです。

西川:夢を天然色で見えるほど具体的に想い続けると、気が付けば実現しているものですね。ニュートンは万有引力の法則を発見した時に「なぜ発見できたのか?」と聞かれると、「いつも、それを考えていたから」と答えました。まさに思考が現実化するのですね。

北原:具体的に楽しいイメージが描ければ、その夢は実現することができます。とにかく楽しい目標があれば、そっちに向かって動きだすようになります。あとは継続すること。「継続は力なり」です。思い続ければ、いつか夢は叶います。実現できていない夢は、まだ夢の途中なんですよ。

西川:あきらめない限りは失敗した訳ではないですからね。どんな状態でもプロセスをおもしろがることができれば道が開けますね。

北原:その通りです。むしろ、実現よりもその夢に近づいていく自分を実感するのがうれしいのではないでしょうか。自分でも「そろそろ実現するんじゃないか?」って予感がするんですよ。アーティストがこんなことを言っていました。その人は、路上ライブからキャリアをスタートさせて、メジャーデビューを果たした方なんですが、「神様、成功の近道があったら教えてください。私はその道を通らないようにしますから」と。誰もいないライブに一人、ファンが増え、一人が10人になり、10人が20人になっていく。どんどん自分の歌を聞きにくる人が増えていったことに心底ワクワクしたそうです。もし、すぐにデビューすることができたら、その感動を味わうことは出来なかったというんです。私だったら、すぐにでも、その近道を通りたいと思ってしまいます(笑)

西川:昔から成功には「運・鈍・根」が必要と言いますが、小さなことにクヨクヨしない鈍とコツコツやる根気も大事ですが、やはり、運が最初に来ますね。

北原:運は大事ですね。絶対に運がよくないと、夢は実現できません。

西川:私達は、今、こんな平和で豊かな日本に生きているだけでも運がいい。そして、生きているだけでも運がいいし、さらに元気ならば、それ以上、運のいいことはないですね。

北原:聞くだけで、3割、4割運がよくなる話をお教えしますよ。

西川:北原流開運術。それは必聴ですね!

北原:野球で3割バッターと言えば一流選手ですからね(笑)運をよくするための10か条というのを僕は唱えているので、それを時間の許す限りお伝えします。
 まずは、プラスの発想をすること。生きていれば、悲しいことや辛いこと、たくさんあると思います。もし、そういうことが重なったら、自分をバネだと考えてください。バネって、押さないと飛ばないですよね。つまり、今起きている辛いことは、飛び上がるための前兆。そのイメージを持っていれば、辛いときにも耐えることができます。

西川:なるほど、気持ちの持ち方一つで人生は変わりますからね。りゅうじん流開運術は簡単です。マイナスのことを言いそうになったら、語尾をプラスの言葉に置き換えるんです。「ダメだ」と言いそうになったら、「ダメじゃない。これからだ」と言ってしまうんです。

北原:りゅうじんさん、それ僕が最後に言おうと思ったのに(笑)まあ、それは置いておいて、次は勉強することと素直さ。勉強はすればするほど、人生は豊かにすることができます。

西川:インドのガンジーが言った、「明日死ぬと思って生きなさい。永遠に生きると思って学びなさい」と言葉が大好きです。人間は一生勉強ですね。

北原:いい言葉ですね。勉強が好きになると、テレビでもラジオでも、いい話をキャッチできるようになるんですよ。そしたら、それを他の人に話す習慣を付けるといいですよ。話すことで、その人にも感謝されるし、話が自分のものにもなります。

西川:リアルライフにおける、Facebookのシェアのようなものですね。

北原:そうですね。あと大切なのは、3カン。つまり、関心、感動、感謝。これがないと、やはり運は下がっていきますよね。これらをしっかりと意識することが大切です。

西川:勉強になります。感動とは、感じて動くと書きますね。感じたら具体的に動かないと、感動したことにはなりません。言葉や文字や行動に表わしてこそ本当に感動したのだと言えます。

北原:そうですね。例えば、夕焼けを見て僕が「キレイだね」と言う。それに対して、女性が「別に」と言う。それじゃ終わってしまうんですよ! ちゃんと感動を表現してくれれば、その後に話したい気持ちにもなります。僕は、普段からしっかり「ありがとう」や「おいしい」をしっかり言葉にして伝えようと心がけています。

西川:「ありがとう」とは「有り難い」。つまり、「なかなかない」ということですね。「生きてるだけでありがたい」「あなたがいてくれてありがたい」と何事にも感謝していれば、どんどん運は良くなりますね。

北原:他にも、「ツイている人と付き合うこと」、「親孝行をすること」、「人を褒めること」、「自分はツイていると思うこと」等々。これらを心がけていただければ、運が上がっていくはずです。詳しいことは、僕の本「夢の実現-ツキの10カ条」に書いてありますので(笑)

西川:私達は夢を実現するために生きているんです。人生二度なし。今日は残りの人生の最初の一日です。さあ、今日から夢の実現に向けて歩み出しましょう!ありがとうございました。

中博さん トピックス

中博さん トピックス

著書「facebook『100の言葉!』-こころにひだまり」を発売。今年のはじめからfacebookをはじめた北原さん。毎朝投稿する「希望の言葉」は、人々のこころに暖かい灯りをともす。毎日1000人近くの「いいね!」に支えられた珠玉の「100の言葉!」が詰まった一冊。

中博 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

中博 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

中博 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

日本の発展を支えた人が住む街 あざみ野の過去と未来を語る。
松下電器産業(現パナソニック)で手腕を発揮し、創業者・松下幸之助氏の願いを実現するため奔走、現在は経営コンサルタントとして活躍している中博さんが登場。あの『課長島耕作』のモデルともなった中さんのお相手は、『あざみ野STYLE』応援団代表で、地域と産業の元気化の達人、西川りゅうじんさん。今回はお二人にあざみ野の過去・現在・未来について語り合っていただきました。

西川:中さんは、あざみ野在住の方々とも御縁があるのですね?

:「あざみ野会」という会合があって、その仲間とよくゴルフをしますね。実は、あざみ野やたまプラーザには、僕らの同期やちょっと下の世代の人が結構いるんです。20年ほど前のバブル前後の頃、青山や西麻布は手が届かなかったけど、あざみ野なら100坪くらいの家が買えたんですよね。

西川:日本が“ジャパン・アズ・ナンバーワン”と呼ばれ輝いていた頃、その輝かせた人達が住む街でしたね。

:そう。当時、高級な日本を作るために、多くのビジネスマンが海外に勉強しに行ったんです。そして、日本に帰ってきたとき、欧米スタイルの家具や車が置ける広い家を求めたんですよ。そういう意味でも、あざみ野は広い土地があったから人気が出たんです。日本を世界一にするために働いた人たちが、住み始めた場所なんですね。

西川:今も、あざみ野には日本の黄金時代のそんな残り香があります。

:あざみ野は、先進国の仲間入りを果たすために奮闘した根っこの人たちが住む街だから、バブルが弾けても良質なライフスタイルは残ったわけ。次の世代にも、そのDNAを受け継いでほしいな。

西川:豊かな時に、あざみ野で蒔かれた種から芽が出て、花が咲き、実を結んだ。でも、これからが大切です。熟した実を発酵させるか腐敗させてしまうか。

:その通り。そのためには、街の人の努力が必要。ただ住めるだけじゃなくて、エンターテインメントがあって、住む人もいきいきしている人間的な街にできるかどうかがかかってる。

西川:結局、街づくりとは人づくり。街は住んでいる人が創るものですからね。住む人の意識とライフスタイルが街並みや家並みを時間をかけて醸成して行くんです。

:そのためには地域の歴史を作って、伝えていかなきゃいけない。あざみ野考古学も必要だし、日本が成長し始めた頃のあざみ野を、誰かが記述したらおもしろいんじゃないかなって思いますね。当時の人たちの言葉を集めるだけでも、何か発見があるはず。

中博 × 西川りゅうじん 巻頭特別対談

西川:その通り!ふるさとの自然・風土・歴史・文化に関する教育、“郷育”を世代を超えて伝えて行かないと人は根なし草になって“愛郷心”を持てないんです。

:そうなんですよ。そして、歴史を伝えたら、新たな要素も取り入れて変化を起こすべき。そのためには「よそ者」「バカ者」「若者」の3つの者が必要。ときには、よそ者覚で街を外から見ることも大事だし、常識だけじゃ変化はできないからバカ者になることも重要。もちろん、街づくりには若さも大切です。この要素を入れて、さらに充実したあざみ野スタイルを作ってほしいですね。

西川:日本人はスケールが小さいとか、国際性に欠けるとか、クリエイティビィティに乏しいなどと思っている人も多いですが、日本の歴史をひもとけば、その真逆であることがわかります。「よそ者」を受け入れるキャパシティがあったわけです。

:そうですね。特に京都は、長い歴史を紐解いていくと、中国や韓国、ペルシャなどから取り入れたものを上手に同化させながら文化を作っていますね。

西川:奈良の大仏を忘れてはなりません。奈良時代の752年、聖武天皇が建立しましたが、今も昔も世界最大の金属で鋳造した仏像です。しかも表面を金メッキして、さらにその仏像を容れる世界最大の木造の大仏殿を造った。お披露目の開眼会には、地球が丸いことさえ知られてない、辞書もない時代に、ペルシャやインドやベトナムからも使節を呼んでいます。

:昔の人のほうが、パイオニア精神は強いと思いますね。外国に向かう船も半分は沈没したと思うけど、それでも多くのお坊さんは勇気を持って海外に向かい、よそ者になった。今の日本には、よそ者になる勇気も、よそ者を受け入れる勇気も足りないと思います。

西川:たしかにそうですね。今や商社や外務省に入った人でさえ、海外勤務を嫌がるようです。超円高なのに海外への留学生も減る一方です。あまりに内向き志向になり過ぎですね。自ら「鎖国」しているようなものです。

:ほんの少し前は、今よりもずっと柔軟だった。松下幸之助をはじめ、高度経済成長期を支えた世代の人たちは「異端」を歓迎したんですよ。「異端」というのは、社会的にありえないことやもののことです。松下幸之助の代名詞ともいえる「二股ソケット」なんて、まさに異端。当時ではありえませんでしたが、全国に広まって認知されれば正統なものになるんです。『課長島耕作』は、まさに異端の行動者ですね。現代のビジネスマンは異端を怖がるし、上司も道を外れないように誘導する。その結果、縮小傾向にあるんだと思うんです。全国的に、島耕作みたいなビジネスマンが少ないんですよね。

西川:人と異なることこそが価値を生み出すのに、「KY」とか言って、みんなお互いの空気ばかり読んで保身に走っている。人と異なる勇気を持つためには何が必要でしょうか?

:自分で発想して行動し、最後まで責任を持って行うことじゃないかな。海外出張ひとつとっても、今は上司の命令を受けてから動くけど、僕らの時代は自分で申請して、海外に行ってた。上司の命令通りにパフォーマンスするだけじゃなくて、ときには勝手に動くことで、新たな発想やビジネスが生まれると思うんです。

西川:「草食系」の男子ばかりが増えていますからね。今や草を食べる「草食系」を超えて、まったく動かない「植物系」の男子まで出て来ています。一方、「肉食系」女子が増えていますね。

:そうなんですよ。新商品の開発でも、最近は女性が開発したものがヒットしてる。女性は「いつクビになってもいい」って、腹を括ってる感じがするんですよ。その点、男性は上司に言われた通りに動いてばかりで、本当に草食化が進んでるって感じるな。

西川:日本の祖は女神である天照大御神(アマテラスオオミカミ)ですからね。日本が元気を取り戻すためには、お隠れになっていた平成の女神に天の岩戸から出て来ていただいかないとなりません。

:女性版島耕作が出てくる時代なのかもしれませんね。

中博さん トピックス

中博さん トピックス

ミャンマーに非常なる関心を持っているという中さん。日本の終戦後の活気ある風景が、見られるからだそうだ。アウンサン・スーチーさんの存在も関心事の一つ。今年11月、30数名の企業経営者の方々を連れて、視察団長としてミャンマーを訪れる。

山崎大地 × 西川りゅうじん 宇宙対談(後編)

山崎大地 × 西川りゅうじん 宇宙対談(後編)

山崎大地 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

“宇宙産業革命”が起こる!あらゆる分野にチャンス到来!
山崎大地さんと西川りゅうじんさんによる巻頭特別“宇宙”対談。前半は本格化する宇宙旅行の現状と、お二人が宇宙で実現させたい“夢”について語ってもらいました。山崎さんが宇宙でハネムーンがしたい!といえば、“宇宙婚”をプロデュースする!と応えるりゅうじんさん。後半も引き続き、白熱する宇宙トークをどうぞ。

西川:そういえば、私たちがお話しているこの場所(バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°)で扱っているバイオラバー製品も、実は宇宙事業と大きな関わりがあるんです。バイオラバーの前身ともいうべき特殊ゴム素材が、早くから宇宙ロケットの機体断熱材として使用されているんですよ。

山崎:それは誇り高いですね。スペースシャトルには地上で開発された技術や素材の総結集が搭載されているので、断熱材や耐熱タイルなどに日本製の素材が多く使われています。日本の技術はとても高く、そのまま宇宙で使用できる商品や、宇宙向けに開発されたものが地上の生活に役立っていることも少なくありません。NASAで公式に使用されているカメラはニコン、腕時計はカシオ、シューズはミズノ、CDプレーヤーはパナソニックなどがあり、厳しい基準や検査を通って採用されているんです。

山崎大地 × 西川りゅうじん 宇宙対談(後編)

西川:実は私の父が創業して弟が経営する会社で開発した製品もNASAで使用されているんです。ガラスとアルミ箔を張り合わせる特殊技術なんですが、NASAの検査に合格するのはとてもハードルが高いです。大変名誉なことですが、開発コストがかかるので儲けなどありませんが(笑)。

山崎:それでも、そういう特殊な技術や素材は、今後の宇宙ビジネスに大きな関わりを持ってくるはずです。私は近い将来、“宇宙産業革命”が起こると考えています。これは、20年くらい前のIT革命と同じような現象です。もとは研究施設や軍事での利用が中心だったインターネットが、今や研究分野だけでなく教育や医療、あらゆる分野にまで普及し、子供からお年寄りまで当たり前に使うようになりました。それと同じように、あらゆる分野の人たちが宇宙向けの技術や商品を開発し、それを利用する時代がやってくると思います。

西川:今やITに関連しない業種は存在しないといってもいいですよね。同じように宇宙ビジネスにもいろんな業種の人が関われば、もっとおもしろくなるに違いありません。

山崎:昨年、妻は宇宙飛行士を辞めて、さまざまな分野に経験を還元する仕事をスタートさせました。私も同じく教育・医療・飲食・衣服など、さまざまな分野の人たちと協力することで、宇宙産業のさらなる広がりをサポートしていきたいと考えています。

西川:山崎さんは、実際に宇宙旅行に行く人とその家族のサポートもしているそうですね。

山崎:はい。現在私が支援しているのは約2時間の宇宙旅行に申し込んでいる男性で、その方は結婚されていて3歳の娘さんもいらっしゃいます。私は宇宙旅行で残された家族の気持ちが分かるので男性はもちろん、そのご家族のサポートもしていきたい。宇宙に行く本人は夢を叶えることで頭がいっぱいで怖くもなんともありませんが、残された人は不安でいっぱい。家族みんなで宇宙旅行を楽しめる仕組み作りこそ重要だと思います。

西川:山崎さんご家族の場合は、奥様が宇宙に行く際に、お嬢さんの不安を取り除くべく、お嬢さんが大切にしていたぬいぐるみを宇宙に持っていったというエピソードは有名ですね。

山崎:そうですね。ぬいぐるみを連れて行ってもらうことで少しでも娘の不安を解消し、分身が宇宙に行っているという当事者意識も持ってほしかったんです。宇宙飛行士の家族を支援することの大切さは何も宇宙飛行だけに限ったことではなく、育児や介護などにも共通すると思います。子供やお年寄りをサポートする体制は数多くありますが、育児をしている親や介護をしている方を支援することも忘れてはいけません。人のために何かをしている人は実は精神的にとても負担が大きく、それをケアすることも重要なのです。

西川:宇宙旅行がSFではない時代を迎えて、一言、メッセージをお願いします。

山崎:今後は限られた人だけが宇宙に行くのでなく、誰もが宇宙に行ける時代が確実にやってきます。そうした時に、ひとごとではなく自分が宇宙に行ったらどうしようという発想を普段の生活でも持ってほしいですね。海外同様、日本でも宇宙に関する話題がもっと増えて当たり前になると、さらに楽しい世界が待っていると思いますよ。

山崎大地 トピックス

山崎大地 トピックス

山崎さんの最新著書「宇宙家族ヤマザキ」(祥伝社)を題材とした舞台が公演決定!
【公演名】「宇宙家族ヤマザキ~2022年、娘から届いた宇宙からのラブレター」
【日時】2012年6月29日(金)19:00~ / 6月30日(土)14:00~19:00~ / 7月1日(日)13:00~17:00~
【場所】 吉祥寺シアター

1972年、神奈川県鎌倉市生まれ。東海大学工学部航空宇宙学科卒業後、三菱スペースウェアに入社し運用管制官として、日本初の有人宇宙実験棟「きぼう」の運用準備に従事。2000年に山崎直子さんと結婚。現、(有)国際宇宙サービス代表取締役社長。詳しくは、http://uchu-shokudo.com/next まで

山崎大地 × 西川りゅうじん 宇宙対談(前編)

山崎大地 × 西川りゅうじん 宇宙対談(前編)

山崎大地 × 西川 りゅうじん in バイオラバーあざみ野ショールーム36.5°

宇宙旅行はゴールでなくスタート。自分のやりたい夢を実現しよう!
2010年4月に日本人初のママさん宇宙飛行士として、スペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗した山崎直子さんを妻に持ち、当時、直子さんをサポートする傍ら、家事や愛娘の育児、両親の介護、そして自身の仕事に奮闘した山崎大地さん。ここでは、ご自身の体験談と今後の宇宙事業に関する可能性を語ってもらいました。インタビュアーは『あざみ野スタイル』応援団代表のマーケッター西川りゅうじんさん。二人の宇宙ロマンあふれる対談をご紹介!

西川:山崎さんと言えば“宇宙主夫”ですね。奥様の直子さんとともに“宇宙の伝道師一家”として幅広く活躍されていますが、今、世界中で宇宙への関心が高まっていますね。

山崎:そうなんです。日本ではあまり知られていませんが、実は今年は宇宙旅行時代の幕開けとなる記念すべき年になりそうです。というのも早ければ年末、遅くとも来年には、以前に比べて格安の宇宙旅行が実現します。

西川:これまでに民間人で実際に宇宙旅行をした人はどれくらいいるんですか?

山崎:2001年に最初の宇宙旅行者が誕生してから、これまでに世界で7人の方が宇宙旅行に行っています。その中には、エンターテインメント集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」の創設者やマイクロソフトのプログラマーなどがいて、費用は10日間で一人およそ25億円。一方で、今年をメドに開始される宇宙旅行では、約2時間の宇宙体験ツアーのようなものが約2000万円で楽しめるようになります。すでに約500人が費用を支払い、仮予約の人も世界中に5万人いると言われています。

山崎大地 × 西川りゅうじん 宇宙対談(前編)

西川:本格的な宇宙旅行時代の到来ですね!

山崎:はい。さらに現在、アメリカでは10ヵ所以上、そしてハワイやシンガポール、ドバイなど地球上のあちこちに「スペースポート」と呼ばれる宇宙船発着所を準備中で、数年以内には開設予定です。この発着所が開設されると、一度、宇宙船で高度100km以上の宇宙空間に飛び出して別の場所に戻るだけで世界中のどこへでも約2時間で行くことが可能になります。

西川:奥様の直子さんは既に宇宙へ行っていますが、次は山崎さんご自身も宇宙旅行へ出かける計画を進めておられるんですね。

山崎:ええ。実は私もその2時間の宇宙旅行に申し込もうと考えています。私には学生時代から、「宇宙で結婚式がしたい」という夢がありまして、それを何としても実現したいんです。宇宙旅行を予約している人の中でも、「宇宙でやってみたいこと」の人気NO.1がウエディングだそうですよ。

西川:“宇宙婚”がブームになるかもしれませんね。“ブーケトス”とか“ケーキ入刀”とか大変そうですけど(笑)。でもそうすると、“宇宙牧師”や“宇宙神主”も必要になりますね! そんな時代になれば、私は“宇宙婚”のプロデュースをやりますよ。有名人の宇宙での結婚式を宇宙中継すれば大ブレイク間違いなし。

山崎:いいですねぇ。そういう地上とはまったく異なる発想が次々と生まれてくるのが、宇宙の魅力です。言い換えると地球の常識が通用しないというのもポイントで、一番分かりやすい例として人間の体の機能の変化があります。地上では当然ながら手でモノを掴んで、足でそれを運ぶ。ところが宇宙では足で歩くことができないので、移動するときは手で壁をつかむ。するとどうやってモノを運ぶかというと、足で挟むんです。つまり、手と足の意味と目的が地上とは逆になるんですね。

西川:なんかチンパンジーみたい。スポーツや文化も大きく変化するに違いありません。ハリーポッターばりの“宇宙スポーツ”や“宇宙バレエ”“宇宙歌舞伎”など可能性は宇宙のように無限大です。

山崎:スポーツ選手や芸術家が宇宙に行くと良い刺激を受けて、それを作品にすることで今までの常識にとらわれないモノができるはずです。今後は限られた人だけでなく、誰もが宇宙に行ける時代が確実にやってきます。そうした時に西川さんのように「自分だったら何をしたいか」という当事者意識を持つことが大切です。そしてそれを普段の生活の中にどう結びつけていくかも重要。宇宙に行くことはゴールではなく、そこからがスタート。あざみ野にお住まいの方もぜひ体験していただきたいですね。

西川:『あざみ野スタイル』に宇宙旅行のクーポンや、NASAオススメの宇宙食レストランのクーポンを載せましょう! 宇宙のことを考えると人間の発想も重力から解き放たれますね!

山崎大地 トピックス

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山崎さんの最新著書「宇宙家族ヤマザキ」(祥伝社)を題材とした舞台が公演決定!
【公演名】「宇宙家族ヤマザキ~2022年、娘から届いた宇宙からのラブレター」
【日時】2012年6月29日(金)19:00~ / 6月30日(土)14:00~19:00~ / 7月1日(日)13:00~17:00~
【場所】 吉祥寺シアター

1972年、神奈川県鎌倉市生まれ。東海大学工学部航空宇宙学科卒業後、三菱スペースウェアに入社し運用管制官として、日本初の有人宇宙実験棟「きぼう」の運用準備に従事。2000年に山崎直子さんと結婚。現、(有)国際宇宙サービス代表取締役社長。詳しくは、http://uchu-shokudo.com/next まで