沢田哲治 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

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健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん氏 × 東京医科大学病院 リウマチ・膠原病内科教授 沢田哲治先生

朝起きたら手がこわばる熱っぽい、疲れやすい人はリウマチの初期症状かも?
疲れや歳のせいと思ってませんか?

西川:朝起きたら手がこわばる、熱っぽい、疲れやすいという人が、「カゼ?」「パソコンやピアノのやり過ぎで腱鞘炎?」などと甘く考えていたら、実は関節リウマチで骨が変形してしまったという話を聞きます。関節リウマチとはどんな病気ですか?

沢田:免疫機能の異常が原因となる膠原病(こうげんびょう)の一種で、手足のこわばりや痛みの他、微熱や倦怠感などの症状があります。これらが1カ月半以上続いたら要注意です。

西川:リウマチというと高齢の女性に多いイメージですが、どんな人がなりやすいのでしょう?

沢田:約100人に1人がなる病気で、女性は男性の3~4倍なりやすく、年齢は特に関係ありません。20~40歳代で発症する人も少なくありません。先天的な遺伝や体質による要因は3割ほどで、そこに後天的な要因が加わって発症する多因子疾患です。

西川:骨が変形する怖い病気として知られていますが、どういった経過をたどるのですか?

沢田:指の第2関節(PIP関節)、第3関節(MC関節)、手首、足首、ひじなど、比較的小さな関節の周囲にある滑膜に炎症が起き、次第に腫れて肥厚します。腫れた滑膜が骨に浸潤すると骨が溶け、結果的に骨や周囲の腱が構造的に破壊されて変形に至ります。

西川:骨が変形したまま固まると、普通の動作さえ難しくなってしまいますね。

沢田:軽い方、どんどん悪化する方、寛解と再発を繰り返しながら進行する方の3パターンがあります。1〜2年で歩行が困難になるケースも全体の1割はありますので、早期発見・早期治療が非常に重要です。

西川:手足のこわばりや微熱が長く続いたら、疲れや歳のせいなどと軽く考えず、すぐに受診するべきですね。病院ではどの科に行けば良いのでしょう?

沢田:内科もしくは整形外科です。抗CCP抗体という自分に対する抗体や身体の中の炎症反応などを診る血液検査が有効で、MRIや超音波などで関節の状態を診断することもあります。

西川:どのように治療するのでしょうか?

沢田:薬物療法が中心になります。痛みを取るための消炎鎮痛剤と変形を防ぐ抗リウマチ薬を服薬していただきます。生物学的製剤の注射もありますが、月に3~4万円と高額です。

西川:生物学的製剤の注射は、投薬が効かない患者向けですか?

沢田:有効率が5割以上と高いので、最初から生物学的製剤を使用することもあります。飲み薬の抗リウマチ薬は効果が出るまでに3カ月ほどかかり、顕著な効果が出る患者も多いですが約半数の方には効きません。まず、1種類の薬を処方して3カ月後に状態の評価を行い、良くなっていればそれを継続し、そうでない場合は薬を変えてまた3カ月間続けます。

西川:自分に合う薬が見つかるまで患者は不安だと思いますが。

沢田:通常、関節は半年から1、2年かけて変形しますので、最初の3カ月の薬が合わなくても、次の3カ月で合えば十分間に合います。構造的に関節が変形してしまった場合、最終的には手術という手段もありますが、一昔前とは異なり、早期に適切な治療を開始すれば、身体機能が急に失われることはほぼなくなって来ました。

喫煙・肥満は薬も効きにくく要注意!

西川:どういった生活習慣が危険因子となるのですか?

沢田:喫煙による関節リウマチの発症リスクは倍以上です。他の様々な疾病の要因にもなり兼ねないので健康であるためには禁煙が必須です。そして、適度に運動し、バランスの良い食事を摂ることです。肥満の人はリウマチになりやすく薬も効きにくいです。要は日々健康的な生活を送ることが大切です。

西川:今を生きるには誰しも忙しいですが気をつけるべきことは?

沢田:ストレスをためないことが大切です。せっかく良い状態を取り戻しても、大きなストレスをきっかけに再発することもあります。また、歯周病が関節リウマチの一因だという仮説がかなり有力になってきましたので、歯と歯ぐきの健康にも気をつけていただきたいです。

西川:近年、口腔衛生とさまざまな病気の因果関係が指摘されていますね。関節リウマチをはじめ膠原病は昔から難病と言われて来ましたが、そもそも、どんな病気なのですか?

沢田:通常、体内にバイ菌などの異物が入ると、異物を排除するために白血球・リンパ球・抗体などが動員されて炎症を起こします。ところが、そうした要因がなくても、コラーゲンが主成分の膠原線維から成る、皮膚・血管・関節の周りの結合組織を、自分の免疫が誤って攻撃し、炎症を起こす自己免疫疾患の総称を膠原病と呼びます。

西川:膠原病にはさまざまな病気があるのですね?

沢田:関節リウマチ以外にも、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、ベーチェット病など数多くあります。しかし、近年の医療の進歩によって、いずれも早期発見・早期治療さえできれば、良好な状態を保ちながら日常生活を送ることが可能になっています。

西川:少しでもおかしいと思ったらシロウト判断せず、即、受診が鉄則ですね。ありがとうございました。

沢田哲治先生 プロフィール

東京大学医学部卒業後、同大学病院物理療法内科(現アレルギーリウマチ内科)に入局。コーネル大学留学を経て医局長を務めた後に退局。
東京医科大学病院に奉職し、膠原病・リウマチ性疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、ベーチェット病など)に関する専門的診療に従事。
リウマチ・膠原病内科日本リウマチ学会専門医・評議員、日本リウマチ学会指導医、日本内科学会認定医。